「病気の名前は、肺がんです」。突然の医師からの宣告。しかもいきなりステージ4......。2016年9月、50歳でがんの告知を受けた刀根 健さん。「絶対に生き残る」「完治する」と決意し、あらゆる治療法を試してもがき続ける姿に......感動と賛否が巻き起こった話題の著書『僕は、死なない。』(SBクリエイティブ)より抜粋。21章(全38章)までを全35回(予定)にわたってお届けします。
体調は少しずつ悪くなっているような感じがした。
呼吸は苦しくなり、歩いていると息が切れた。
立っていると股関節が痛み、座ると坐骨が痛い。
まずい、このままでは......。
よし、サプリだ。
試しにサプリを短期間に大量に飲んでみよう。
僕はノニジュースを1日1本飲むことにした。
とりあえず、2週間続けてみよう。
2週間飲めば、効果が出るはずだ。
お金は相当かかるけど、ケチってはいられない。
なんたって、命がかかっているんだから。
しかし、毎日1本2週間ノニジュースを飲んでも、目に見えた効果は上がらなかった。
毎月の治療費はサプリ代も入れて30万円近くに達していた。
命が尽きるのが先か、貯金がなくなるのが先か、ギリギリのチキンレースを走っている気分だった。
3月になると左の坐骨が痛くて、ついに座席に座れなくなった。
もう立ってるしかない状態だ。
座ったら痛い、立っても痛い、どうすればいいんだ。
道では人にどんどん抜かれていく。
早く歩けない。
はぁはぁとすぐに息が切れる。
呼吸が浅くなり、息苦しいのが普通になった。
スムーズな呼吸がどんなものか思い出せなくなった。
血痰がひどくなった。
咳をして痰を出すと必ず血が混じっている。
息を深く吸い込めなくなった。
あくびもできなくなった。
横に向いて寝られなくなった。
横を向くと、肺が締め付けられて息苦しくなるのだ。
深呼吸をすると肺に何かが絡みつき、咳き込むようになった。
身体が重く、だるくなった。
普通に立って動くことがおっくうになってきた。
気に入って観ていたテレビドラマ「精霊の守り人」が3月に終わった。
続きの最終編は予告編では11月から再開とのこと。
まじか、11月か......それじゃ観られないな。
瞬間、脳裏をよぎった。
いや、大丈夫、大丈夫、観られる、観るんだ、すぐさま自分に言い聞かせた。
ひすいこたろうさん、阿部敏郎さんといった方々の心を励ます本をたくさん読む。
そうだ、全ての出来事はベストなんだ。
ベストのことが起こっているんだ。
だからがんになったことも、ステージ4だってことも、きっと僕にとってベストのことなんだ。
頭の中で自分に言い聞かせるが、それは本当だろうか?
肺がんステージ4が自分にとってベストなんてこと、あるんだろうか?
いいや、ありえないでしょ、そういう声も同じくらいか、いやそれより大きな声で聞こえてくるのだった。
思い切って飲尿療法を試してみた。
自分の尿を飲むのだ。
飲尿療法では、尿は身体の状態を記録している最高の情報源だという。
その情報を再び体内に入れることで、身体が自身の悪い部分を自動的に修復し改善して行くのだという。
調べてみると実際に様々な疾患が改善したという情報もあった。
朝一番の尿がいいらしい。
黄色の生暖かい液体を口に近づける。
尿独特のにおいが鼻をつく。
むむむ......これ、勇気いるな。
いや、四の五の言ってられないだろう。
飲むんだ!
鼻を指でつまみ、強制的に口に流し込む。
生ぬるい液体が口に入ってきた。
変な味だ、うわーお。
飲め!味わうな!ごくりと飲み干す。
うえーっ、あたり前だけど、まずい。
がんが消えるなら、尿だってウンコだって、なんだって飲んでやるよ!