アメブロで「~こんな事を言っちゃあなんですが!~」を運営しているかづと申します。
息子の通う高校でPTAの会長に選出された時のお話です。
【前回】「鑑別所行きは確実だと言われたんです」不良少年の母親から持ちかけられたあきれた相談事
話しは6月に戻る。
定例会後に、会計の黒木さんから相談された。
私が会長になってからと言うもの、黒木さんは私に色々相談してくれるようになったのだ。
前会長が頼りなかったせいか、黒木さん一人が抱えなければならなかったものは相当きつかったらしく、逐一私の耳に入れてくれるようになった。
そもそも会計一人の胸にしまっておいて、秘密裏に金が出ていた事が間違いなのだ。
内容はと言うと、P担当の坂田先生から「夏休みに全教室のエアコン点検をするのでよろしく」と言われたと言う。
当然この「よろしく」は、総会後の教職員の飲み代同様に「払っといてくれ」と言う「よろしく」だ。
「えっ?なに?まさかエアコンの修理・点検代もPが払ってんの?えっ?えっ?毎年??」
私は呆れ返った声で聞いた。
「そ、そうなの...」
「これって、去年会議で承認取ってる金ですかね?私覚えがありませんけど?」
「去年は会長から『請求書が来たら予備費から払っといて』って言われただけで...」
「それで払ったん!?会費は会長の金やないで!?」
「毎年払ってるんで、それで去年も...」
「で、今年も『払っといて』と言われたと?」
学校はPTA会費を第二の財布とでも思っているのか?
生徒数も多く、歴史のある学校だから繰越金が毎年たっぷりあるのだが、だからと言ってポンポン学校から言われるがままに出してやれる金ではない。
黒木さんに私の考えをざっと説明し、直接私から坂田先生に話をすると言うと安心した様子だった。
職員室に行くと坂田先生は帰宅した後だったので、翌日学校に電話をして坂田先生に代わって貰った。
「先生、エアコンの修理・点検代ですけど」
「あ、聞いてくれたか?今年も頼むわな」
「その件ですけど、この支払いはPTAの審議にかけてませんよね?」
「え...」
坂田先生は一瞬驚いた様子だった。
「PTAのお金はPTAの承認のもとで支出するべきものであって、学校から直接会計に『払っといて』って言うて払ってもらうもんやありませんで?」
「でも、毎年会長に言うて会計から払ってもらってきたもんやからなぁ」
「そもそもそれがおかしいんですやん?PTA会費は会長のポケットマネーとちゃいまっせ?学校から要望があったら、それを会議にかけて皆さんの承認が必要ですやん?私も黒木さんから聞いて、毎年払ってたやなんてビックリですわ」
「いやだからやな、そやからあんたに頼んどんのや」
「だからー、頼まれたからって、自分の金でもないのにホイホイ出せる金やありませんやん?」
「エアコンは子どもらが使うもんなんやから、PTAに出してもらってもおかしないで?」
毎年当たり前のようにPTAから出してもらっていて、尚且つ今までの会長は何一つ言う事無く右から左に出してくれているので、例年通りに請求してきたのだろう。
「先生、保護者が収めている費用の中に『施設設備費』ってありますよね?」
「あ、あぁ...。あるなぁ...」
恐らくこの瞬間、坂田先生は痛い所に気が付いたと思ったのだろう。
「エアコンの修理・点検代なら、その施設設備費から払うもんやないんですか?」
「それでは足らんから、PTAにお願いしとんのや」
「足りないなら施設設備費の増額を、全保護者にお知らせして値上げをするのが筋やないんですか?」
年間に収める費用の値上げをするとなると、HPの費用欄を書き換える事にもなるし、受験生離れの一因にもなる可能性もあるので、手っ取り早くPTA会費から払って貰えば丸く収まるとでも学校側は思ったのだろう。
「去年もその前も、今までずっとPTAに払って貰っとったんやで?承認が要るって言うんやったら、あんたが会議で承認を貰ってくれたら済むやろ」
「だからさっきも言いましたように、私ら保護者は『施設設備費』として支払ってますやん。にもかかわらず、PTA会費から施設設備に対して費用を支払うのは『二重払い』になりますよ?本来は私らの支払ったお金から学校が払うもんなんですから。
講堂の緞帳(どんちょう)を新調するとか、子どもらの為に給水機を数台設置するとか言うなら一時的なもんですから補助金と言う形での支出も理解できますけど、毎年実施してる全教室のエアコンの修理・点検代なんて、それこそ年間の必要経費に計上しておくもんですやん。全教室には職員室も校長室も入ってますでしょ?」
坂田先生は暫し無言だったので、これで納得してくれるかと思ったが次に出た言葉に驚いた。
「お前なぁ!自分の子どもが可愛いと思った事は無いんか!」
「それってどう言う意味ですか?我が子が可愛ければ黙ってPTAの金出せって事ですか?私が出さんて言うたら、うちの子に何かするって意味ですか!?」
「今までの会長はみんな黙って出してくれとったんや!お前も我が子が可愛かったらやな!」
「お前って!あの!!!この電話!誰と喋ってるつもりですか!?元教え子と喋ってるつもりですか!?私はPTA会長として喋ってるんですけど!」
電話口から、坂田先生が息を呑む気配を感じた。
「とりあえず四方先生や後藤先生ともお話ししますね!」
四方先生と後藤先生も、私が在学していた頃に教科を受け持ってもらっていた先生達で、四方先生は今年度から副校長になり、後藤先生は教頭になっていた。
すると坂田先生が笑い口調でこう言った。
「後藤の事をどう思っとんか知らんけど、どんだけの力があると思っとんや」
高校生の頃から、女子に大人気だった後藤先生の事を坂田先生が嫌っているのは薄々感じていたが、ここでこれを言っちゃうのには失笑だった。
「坂田先生が『どんだけの力があると思っとんのや』とおっしゃる後藤先生には、『お前自分の子が可愛ないんか!』って脅された件も含めて全てお伝えしますね」
坂田先生は無言で電話を切った。
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