アメブロで「~こんな事を言っちゃあなんですが!~」を運営しているかづと申します。
息子の通う高校でPTAの会長に選出された時のお話です。
【前回】「高校行かんでも困らんって先輩が言ってる」不良少年に憧れる中学生を必死に説得!
ボランティアで非行少年少女育成活動のお手伝いをしていた私の元に進路相談に来ていたHさんとその息子。
子どもの生活や進路などの話しを赤の他人の私に頼んでおいて、Hさん自身はテニスに行っていると聞き、脱力したこともあった。
そんなこんながあったHさんから、うちの息子と同じ高校にH君が入ったと聞いて複雑な思いがした。
当然H君自身が頑張って高校に入ったんだから喜ぶべきなんだが、正直言って関わりたくない。
ところがそう願うと余計に何かが降り掛かってくるものなのだ。
夏休みに入って数日が経った頃、自宅の電話にHさんから掛かってきた。
もう既に胸騒ぎしかしない。
実を言うと、この数日前に小学校のPTA時代にご一緒していた方に偶然お会いして、「Hさんから聞いたんだけど...」と耳にしたところだった。
「Hさんの息子さんって、かづさんのお子さんが行ってる高校に入ったんだって? 『息子はバカだからかづさんちの子と一緒の高校に入った。どうせ程度もレベルも低いだろうから、楽勝よ~♪』って言ってたよ」
こう言う噂話や陰口を、わざわざ本人に教えてくれるのは親切だと思っているのだろう。
悪口や陰口なんて今までワンサカとされて来た身としては、ショックなんて受けないくらいのメンタルは持っている。
「あの...、かづさんてPTA会長だったよね?相談したい事があるんだけど...」
『PTA会長』と口に出されたら無下に切る訳にもいかない。
「なんでしょうか?」
しばしの沈黙が、私の腹の中をぐるぐるさせる。
「あの.........、息子が悪い子たちと一緒にバイクで走ってて...。捕まっちゃって...」
「はあ!?」
「もう今までの事もあるから鑑別所行きは確実だと言われたんです...」
「はぁ...、それで??」
「高校に連絡が行ったら退学なんですよね...?」
警察に捕まったら【=学校に連絡が行く】と思っている方は多いが、当時はよっぽどの理由が無い限り警察が直接学校に知らせる事はしなかった。
連絡を入れるのはお店であったり、周りの者が学校に通報するのでバレる訳だ。
だからお店などで『万引きは犯罪です。学校にも連絡します。』と張り紙がしてあったりする。
「えっ?じゃあ高校は退学にならないんですか?」
「捕まった事や鑑別所行きになった事が学校にバレなければ、単純に欠席が続くだけです」
「あぁ、良かった...」
「ただし...。1年間で出席しなければならない日数の1/3を欠席すると進級できません。遅刻3回で1日欠席と言う決まりもありますから、簡単に言えばそれも含めて約3か月分休むと留年になります。
鑑別所に入っても約2か月程度で出て来れれば良いですけど、それ以上だと退学にはなりませんが留年にはなります」
「もしも2か月くらいで出て来られたら、そのまま高校には残れるんですよね?」
「欠席日数が規定以内でしたらそのまま残れます。だって、表立ってはただ欠席が続いていただけですから」
「あぁ、良かった...」
安心したのか、声がだんだんと明るくなっていくHさん。
「ただですね、もし2か月ほどで出て来たとしても、残りの日数は無遅刻無欠席じゃないとダメなんですよ?」
「それはなんとかします!!」
「それと一番気を付けなきゃならない肝心な事は何だと思いますか?」
「な、なんですか??」
「自分自ら自慢げに武勇伝のように『おれカンベ(鑑別所)入っとったんや!』って言っちゃう事です」
「えっ.........」
「中には、箔が付いたみたいに周りに言っちゃう子がいるんですよ。学校の耳に入れば、いくら罪を償って来ようとも、それで終わりですからね」
私だけでなく、Hさんも自分の子がやりそうだと想像できたのか絶句していた。
「じゃあ、鑑別所が3か月以上だった場合はどうしたらいいですか?」
「留年は確実ですが、退学したくなければ学校は『休学』ですかね?」
「休学ですか!?」
「『素行が悪いので休学して田舎のおばあちゃんの所に預けてる』って言えばいいんじゃないですかね? それで来年、1年生を最初から仕切り直せばいいんじゃないですか? ただし、何度も念押しして言いますが、自分でぺらぺらと周りに言っちゃったら終わりです。 まぁ、周りも何してたんやって聞きますからねぇ」
「ちょっと考えてみます...。ありがとうございました...」
最後は、蚊の鳴くような声でHさんは電話を切った。
この事は当然学校にもPTAにも誰にも話さなかったし、またHさんからもどうなったか連絡も無かった。(この点がまたムカつく!)
数か月が経ち、季節は秋になっていた。
近所のスーパーで買い物をしていると、偶然Hさんに出会った。
Hさんは私を見るなり一瞬その場から逃げるそぶりをしたが、観念したように私に声を掛けてきた。
「お、お久しぶり...」
一瞬でも逃げようとしたのが気に食わなかったが、これだけは聞いてもいいだろうと私は小声で言った。
「息子さん、どうしてます?」
「海外に...」
「留学されたんですか?」
「はい...」
「それは良かったですねぇ」
そう言ってHさんとは別れた。
H君が鑑別所から出て来ても、周りにぺらぺらと喋ってしまうのが目に見えていたんで、学校は一旦休学扱いにしておいて、彼が出て来るのと同時に海外の学校に入れたんだろうと思った。
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