アメブロで「~こんな事を言っちゃあなんですが!~」を運営しているかづと申します。
【前回】「うちの子をお願いします」進路担当の先生へのお酌に行列が...摩訶不思議なPTA歓送迎会
息子の高校のPTA副会長に選出され、はじめての総会に出席した帰り道。
たまたま近所だったというだけで勝手に自宅まで送ることを強制された私は、嫌々ながらも断り切れずに前会長の米沢さんを自分の車に乗せる事になった。
深夜0時を過ぎていたにもかかわらず、もうすぐそこが米沢さんの自宅だというのにファミレスに寄るように車内で大騒ぎされ、渋々寄る羽目になった。
店内に入ると米沢さんはワインを注文していて、「何でも聞きや! 全部教えてあげるから!」と言いながらワインをグラスに注ぎだした。
別に聞きたい事も無いし、第一何時だと思っているのか。
米沢さんは勝手にぺらぺらとしゃべりだした。
「○○先生には気を付けよ。あれは何の役にも立たんからね。校長はあんまり気にせんでええから。教頭はおってもおらんでも変わらんから」
私は熱いコーヒーを口にしながら、「はぁ、ええ」と生返事を繰り返していた。
「それで今度の会長やけど、あんたはどう思った?」
会長といえば50代くらいの男性で、比較的愛想の良いニコニコしたおじさんの印象だった。
私は当時まだ30代後半だった。
「あの人な、週に2~3回は深夜勤務のある人やからあんたが中心になってPTAをまとめなあかんのやで」
「と言いますと?」
「生徒や教職員の葬式の知らせが来たら、代表焼香があるから絶対に行かなあかんのやけど、あの人は車持ってへんし泊まり勤務もあるから通夜告別式はほぼ全部あんたが行くことになるわな」
えぇぇぇ!!
「学校からあんたの所に電話があったら、本部だけの連絡網回す。通夜は来れる人は出来るだけ出席やわ。生徒の親だと学校は担任と学年主任程度で、教職員の家族やと教頭は行くけど校長はどうかな?
告別式は基本本部全員出席。あ、香典は告別式に渡すんやで。それで会計が香典を袋に入れて表書きも書いて持ってくるから、あんたが受け取って受付で『会長代理』って言うて出す。
葬儀場での代表焼香も『○○高校PTA会長代理』って呼ばれるからあんたが焼香して、他の子らは一般焼香でする」
米沢さんは酔っているせいか饒舌にしゃべり続けるが、そもそも副会長だというのも寝耳に水だったのに、そんなに仕事があるのかと驚きの連続だった。
「PTAの定例会も副会長が司会進行やし、今日みたいな歓送迎会や打ち上げなんかの時の幹事も副会長の仕事やから。二次会や三次会も全部やからね」
どうりで、新3年の役員達の目線が厳しかったのに反して、新2年の役員達のウエルカムぶりだったのが腑に落ちた。
新3年からは会長1名で、新2年から副会長1名を出さなければならず、そこに私という学校推薦が副会長のポストについてくれたので新2年の役員達はホッとしたのだろう。
そうこうしているうちに米沢さんはデキャンターのワインを飲み干し、店を出るのかと思ったら座席で横になって寝だした。
「米沢さん! 帰りますよ! 寝ちゃだめですよ! 起きてください! 米沢さん!」
「わかってる...、わかってるよぉ...」
深夜のファミレスなので大声を上げるわけにはいかず、さりとて揺すっても全く起きない。
無理矢理に引きずってでも車に乗せるべきかと思ったが、米沢さんからは住所しか聞いていない。
カーナビが指している目的地はマンションだったので、部屋番号がわからなければマンションの下で米沢さんが起きるのを待たなければならなくなる。
もうこれは何をしても無駄だと思い、とりあえず仮眠でもさせたほうが良いと腹をくくった。
それから小一時間ほど経った。
「米沢さん! そろそろ起きてください! 帰りますよ!」
「あっは~♪寝ちゃってたねぇ♪」
PTA会議室で見た米沢さんと同一人物なのが信じられない。
米沢さんは酔いも少しは冷めたようで、千鳥足でなかったのが幸いだ。
会計を済ませる際、きっちりと自分の分だけを支払い店を出る米沢さん。
別にドリンクバーの数百円を奢ってくれとは言わんが...、まぁ酔っぱらいはこんなもんか。
米沢さんをマンション下で降ろし、マンション内に入っていくのを見届けてから私も自宅に車を走らせた。
自宅の駐車場に車を止めた頃には、時計の針は4時を回っていた。
今まで色んな所の役員をやってきたが、高校のPTAの副会長にそんなに仕事があるとは思っていなかった私は、大変なところに身を置くのだと改めて気を引き締めなければと思った。
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