アメブロで「~こんな事を言っちゃあなんですが!~」を運営しているかづと申します。
【前回】PTA副会長に選出され初めての会合。上級生役員達の突き刺すような視線に戸惑って...
総会では前年度で役員じゃなかった私にとっては全くわからない内容だったので、ただ出席して次年度の役員に承認されるだけのものだった。
総会終了後には歓送迎会があるからと、前もって「絶対参加」するように言われていた。
小中のP(PTA)の歓送迎会は、今までP会議室で委員たちだけで軽くお茶会をして終わりだったり、近所のレストランやカフェ(基本徒歩移動圏内のお店)でランチだったりしたが、夕方料理屋さんの広間で、それも校長や副校長・教頭に加え事務長まで参加し、驚いた事に教職員数十人も一緒の歓送迎会だったのだ。
教職員の中には退職される先生もいらっしゃった様だが、正直言って「なぜPと一緒に?」と不思議に思った。
「Pの歓送迎会なのに、先生たちも一緒なんですね」
素朴な疑問として、たまたま隣に座っていた新3年の役員に聞いた。
「先生方には1年間お世話になってますからね!」
何か問題でも? と言いたげな顔つきで言われたが、この歓送迎会の会計的には1人当たり1000円が「親睦会費」から出ている。
私が納得していない顔をしていたのだろう。
「先生たちもPTA会員なんです。P会費を払ってるんだからいいんです!」
なるほど。
そんなこんなをしていると、今回の総会で晴れて退任となった前会長の米沢さんが私の横に来た。
「ほら! 座ってないでお酌して回って!! まずは校長から!!」
えぇ~! と思いながらも無理やり腕を引っ張り上げられ、校長の座るところまで連れて行かれた。
校長の向かって右に米沢さんの席があり、左には新会長の清水さん(男性)が座っていた。
「校長~♪ 新しく副会長になったかづさんです~♪ よろしくお願いしますね~♪」
米沢さんはどこのお店のママかと思うような声で私を紹介した。
「おお! これからもよろしくお願いしますわな!」
「ほら! お注ぎして!」
米沢さんに促されるままに校長にビールをお酌した。
「次は副校長! その次は事務長に行くよ!」
米沢さんに引っ張られながら、次々と各学年主任や生活指導主任などにもお酌に回った。
ハタとここで気が付いた。
周りを見ると、他の委員さん達も本部役員だけでなく次々とビール片手にお酌に回っていて、進学就職主任の先生にはお酌の順番待ちで何人か並んでいたほどだった。
皆口々に「うちの子をお願いします」的な事を言い、自宅から1時間や2時間も掛かる所にもかかわらず夜の宴会に参加しているのはこの目的もあるからかと妙に納得した。
私は先生方に酌をしてまで「うちの子を...」という考えが全く無かったので、子どもの進学や就職のお願いに回っている親たちにびっくりしてしまった。
その後、一次会で校長たちお偉いさんが帰った後もカラオケボックスやスナックに場所を変えては先生方を連れて二次会・三次会と続いた。
委員の方たちはそれぞれ適当な時間に帰って行ったが、私たち新役員は米沢さんから「あんたたちは最後までだからね!」と言われ、帰るに帰れずだった。
やっとお開きになった時は、もう時計の針が0時近くになっていた。
私は車を学校の駐車場に止めていたので酒は全く飲んでおらず、皆と一緒に駅まで歩き電車組を見送ってからタクシーで学校まで戻ろうと思った。
するとその時。
「みんなそれじゃあ気を付けてねー! 私はかづさんに送ってもらうからー!」
は??
私は目を丸くして米沢さんの顔を見た。
「あは~! うちねぇ、あなたの家から車で10分くらいなのよー」
えぇぇぇ...、送って行くなんて言うてませんけどぉ、そもそも送って行ってなんて言われてませんし...。
時間も深夜でもう後は帰るだけなので、これから人と会うとか何処かに寄る用事があるなんて言い訳が使えない。
皆と別れ、渋々米沢さんと一緒にタクシーに乗り学校まで戻って自分の車に乗り換えた。
米沢さんの住所を聞いてカーナビに入力する。
ほんとだ、隣町だ...。
車を走らせると、後部座席に座った米沢さんが延々とPTAの大変さを語りだす。
私は軽く相槌を打ちながら、「この人とは今日が最後だから」と自分を納得させた。
もうそろそろ米沢さんの自宅に着くその時だった。
「そこ! そこー‼ そこに止めてー! 入ろー!」
見ると24時間営業のファミレスだった。
「えっ? 今からですか!?」
「今後の大事なポイントや色んな先生の対応策なんかを教えてあげるから! 止めて!」
米沢さんが後ろから大声で何度も叫ぶ。
「止めて! 止めて! 止めて!」
「はいはいはいはい!!」
車を駐車場に止めると、エンジンを切り終わる前に米沢さんは車から降りてファミレスに入って行ってしまった。
急いで店に入ると、時間が時間だからか広い店内に客は2~3人だった。
席に座っている米沢さんの前に座り、ドリンクバーで温かいコーヒーでもと思ったら、店員さんが「お待たせしました」と言って米沢さんの前にワインのデキャンターを置いた。
「何でも聞きや! 全部教えてあげるから!」
真っ赤なワインをデキャンターからワイングラスに注ぎながら米沢さんは言った。
教えてほしい事なんかねーよ...。
私は大きなため息をついた。
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