14歳の息子を持つ男性と結婚したべにゆうさん(当時40歳)が、悩み、傷つきながらも家族との距離を縮めていく実話コミックエッセイ『14歳男子の継母になった私』がKADOKAWAより出版されました。原作者のべにゆうさんが「お母さん」という言葉の重みについて、当時の思いを語ってくださいました。
「赤ちゃんが授からない」人生を歩むこと。それが私の運命でした
―赤ちゃんを授からない人生を歩むことについて葛藤する場面には、心を揺さぶられました。作品に書かれた当時から数年が経ち、現在の心境はいかがでしょうか?
べにゆう:実は今もそんなに変わっていないかも......。欲しかったなぁという思いが、ふとした瞬間に頭をよぎるんですよね。もう年齢であきらめがついたのもあってもやもや感はなくなりましたが、「欠けている感」はずっと消えないのだと思います。
「あなたはお母さんではない」と言われたような気がして。人知れず流した涙
―「お母さん」という言葉の重みに思い悩み、お風呂で涙するシーンは印象的でした。
べにゆう:私が息子にとっての「お母さん」じゃないのはわかっているし、「お母さん」と呼ばれたいわけでもないのにどうして涙が出てくるのか......。息子の産みのお母さんの存在は大切で、ずっと交流していて欲しいと願う気持ちに嘘はありません。もちろん息子も夫も別に悪くないのもわかっています。十分許容範囲なのに、なぜここまで胸が苦しく泣いてしまうんだろうと自分でも不思議でした。産みのお母さんと息子、夫の間には絶対に切れることのないつながりがあります。そこに私は入り込めないことを突き付けられたように感じ、そのことがとても寂しく、まるで違う輪の中に存在しているような感覚があったのだと思います。
「お母さん」という言葉にどうしても心のモヤモヤが拭えず、誰も見ていないお風呂場で一人涙する日もあったというべにゆうさん。でも、今隣にいてくれる存在を大切にしていこうと、前を向いて歩き始めるのでした。
取材・文/宇都宮薫
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