<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ウジさん
性別:男性
年齢:60
プロフィール:地方都市の公務員をしている60歳男性です。教育委員会に勤めていた頃は、子どもとのふれあいにホッコリしていました。
地方の町役場に勤めていますが、異動でいろいろな仕事を経験します。
15年ほど前には教育委員会に配属されていました。
教育委員会は役場と別と思っている方もいますが、事務職員は普通に異動があります。
当時は子どもが小学生でしたので、学校の様子も分かって役得な感じでした。
当時、わが町では「総合的な学習」に力を入れていました。
子どもたちが自ら疑問を持ち、それを解決する総合的な力を育てるという、国語とか算数など教科の枠に収まらない学習ということでした。
教育委員会としても、学習のための外部人材の紹介などの形で協力していたのですが、けん玉の達人を探してほしい、とか、枝豆づくりのプロはいませんか、など、ほんとに学習しているの? と思うことも正直ありました。
当時の教育長がこの総合的な学習にいたくご執心で、肝いりの実践研究会などが町内の学校で行われていました。
10月頃、私も教育長に同行して授業を見る機会がありました。
「安全なまちづくり」をテーマにした学習で、確か4年生の授業だったと思います。
私もおまわりさんとの仲立ちをしたり、町の道路課の職員を人材として紹介したり、少なからず学習活動に協力していたところでしたので、興味深く授業を見ていました。
グループに分かれての学習で、私が見ていた6人ほどのグループは、学校前の横断歩道について話し合っていました。
学校の子どもたちや、周辺の住民などにフィールドワークでインタビューしてきた結果を踏まえて、どうすればより安全になるか改善策を考えていたのです。
仕事で行うブレーンストーミングさながらで、今の子どもは難しいことをやるものだ、と感心しながら眺めていました。
「押しボタンは子どもでも押しやすく低くしたほうがいいんじゃない?」
「横断歩道って白じゃないと駄目? 黄色の方が目立つ、って意見もあったよ」
インタビューで得られた意見などを振り返って、理想の横断歩道を考えていました。
「横断歩道じゃなくってさあ、歩道橋のほうが安全だ、って人もいたよね」
そんな意見が出ると、確かに、そうだよね、と同意する意見が続々と出てきました。
「じゃあ、私たちの意見としては歩道橋にするって方向でいい?」
リーダー格の子がまとめにかかりました。
なるほど、確かに歩道橋のほうが安全性は高いよな、と一緒になって私も納得しかけました。
「...やっぱり、横断歩道がよくない?」
1人の子が、ちょっと申し訳なさそうに声を上げました。
まとまりかけたところでの振り出しに戻すような発言に、他の子たちが問いただしました。
「なんでさあ、安全のことを考えたら歩道橋だろ?」
すると、横断歩道を主張した子はこう返したのです。
「...近所のおばあちゃん、杖をついてるから...」
すると、周りの子はハッと気づいたように、次々に言い出しました。
「そっか、階段は大変だよね」
「車椅子の人とかも大変だよ、普通に歩ける僕らはいいけどさ」
「誰でも使いやすくないと、安全とはいえないよね」
「だったらさあ、横断歩道にさあ、車を止める棒とかつけて踏切みたくしたら...」
再び活発な話し合いが始まりました。
どうするのが本当に正しいのか、いろいろな正解があるのだなあ、と思いました。
さまざまな課題を持つ人がいて、そうした人たちにきちんと目が向いている小学生たち。
ついつい健常者中心にものを考えているわが身を振り返るとともに、心が熱くなったことを思い出します。
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