<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ひろえもん
性別:女性
年齢:58
プロフィール:3匹のネコと夫と海辺の街で暮らす普通の関西のおばちゃんです。
14年ほど前、私(当時44歳)はイギリス南部の小さな街に3週間だけ語学留学をしました。
ホストファミリーは片目を怪我した猫を飼う70代のおばあちゃま。
このおばあちゃまをはじめ、イギリスの方から温かい思い出をたくさんもらいました。
エリザベス女王がテレビに出るときは必ず「早く来て〜!」と呼ばれます。
女王がイギリス国民にとって、どれだけ重要な位置を占めているかを肌で感じることができました。
ドラマや社交ダンスの番組を見ながら「どっちの組が勝つと思う?」なんて話したり、アメリカの料理番組を見ながら「これは英語じゃない!」なんて文句を言ったり。
おばあちゃまに「南部の人は特にクイーンズイングリッシュに誇りを持ってる」と気づかされたことも、人生の中で忘れがたい思い出となっています。
おばあちゃまがショッキングピンクの靴下をせっせと編んでいたとき、たまたま遊びに来ていた50代の娘さんが「あれ見て。派手! 私のかしら? ヤダ〜!」と私につぶやいたときは、なんだか微笑ましくて、ちょっと笑ってしまいました。
ある日、帰ったら知らない人たちがいたのですが、おばあちゃまいわく「お客様が来るって言うと遠慮して帰って来ないから黙っておいたの!」とのこと。
緊張しましたが「イングランドの国花はバラだけど日本は菊なの? 桜なの?」なんていう穏やかな会話をして、すごく和んだことも忘れられません。
他にもイングランドの方たちにはさまざまな感銘を受けました。
パブでも話しかけてくれる人も多く、あるおじさまとこんな会話をしました。
「外国人が多いと複雑な気持ちになりませんか?」と尋ねてみると「ありえない! イギリスは昔から数多くの移民を迎え入れて来た国だよ! 否定的であるはずがない!」と熱く語ってくれました。
また、帰り道で迷ったときに道を聞くと「そっち方面に車を停めてるから、一緒に帰ろう!」と近くまで送ってくれた人もいました。
実は、私に気を使わせないために「車を停めてる」と嘘をついてくれたことが分かり、笑顔で手を振って去って行く後ろ姿を眺めながら「爽やか〜!」と思ったことを覚えています。
会話も「年齢より若いけど、よっぽど食べるものに気をつけてるんだね!」など、意識や知性を誉めてくれるような言葉が多かったのも印象に残っています。
イングランド人男性のスマートさや、女性に対する敬愛のようなものをほんの少し垣間見た気がします。
通っていたスクールの先生もウィットに富んでいて「さすが演劇の国」と思わせる楽しい授業でした。
牛や豚の腎臓を使ったイギリス料理キドニーパイ好きの私が、問題に腎臓が出て来たときだけ元気よく手を挙げて答えるので「キミはよっぽど腎臓が好きらしいね!」と笑い、生徒一人ひとりを見てくれている感じでした。
楽しかったホームステイ終了日、翌朝5時30分出発のバスでオックスフォードに向かう予定だった私に「バス停まで車で送る」とおばあちゃま。
「朝早過ぎるので大丈夫ですよ!」と断ったのに「ノーコメント!」と、いたずらっぽい笑顔。
薄暗いバス停でお別れするときは、やっぱり寂しくて涙が溢れたことを思い出します。
一緒に過ごした時間はたったの3週間でしたが、私の心には永遠に残るプレゼントのように大切な時間でした。
「気品があり、かつ優しさと気遣いを忘れない最高のイングランド気質」を、おばあちゃまをはじめ街の人に見せてもらったような気がするのです。
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