「暴言と暴力」が日常化して壊れていく母の理性...実家で見た在宅介護のリアル

<この体験記を書いた人>

ペンネーム:abby
性別:女性
年齢:56
プロフィール:猫ラブ・ベジタリアン・夫は外国人。

「暴言と暴力」が日常化して壊れていく母の理性...実家で見た在宅介護のリアル 72.jpg

20年前、私の母(当時59歳)は父(当時66歳)とそれぞれの母親の4人暮らしでした。

母は、認知症の2人(80代義母と実母)を自宅で介護していました。

特に母方の祖母(母の実母)は徘徊癖があって大変でした。

母は体力的にもつらく、精神的にも精一杯で余裕がありません。

私は折を見て帰省し、介護を手伝っていました。

ある日、父方の祖母がグループホームに空きが出たので入居しました。

祖母は「家に帰る、帰る」と言って慣れるまでは大変でしたが、これで母も少しは楽になると思っていました。

しかし、考えは甘かったのです。

母方の祖母は前述のように徘徊することが多く、自分の部屋の窓から抜け出して散歩します。

実家があるのは小さな村落で、村人はみんな顔見知りのため、誰かしら祖母に声をかけて家まで一緒に連れて帰ってくれます。

それなら安心と思われるかもしれませんが、母は近所迷惑になると嫌がり、またこうした助けを受けることを恥ずかしく感じているようでした。

久しぶりに帰省すると、祖母の部屋の窓は、5センチほどの隙間から外が見えるようにした状態で、外側から薄い板を何枚も釘で打ち付けられていました。

「何これ!」とびっくりする私に、母は「いいから! 何もしないでよ。この窓から外に飛び降りて危ないから」と強い口調です。

ある晩、寝ている祖母の手足を縛ろうとしたこともあったと聞きました。

父がそれはいくらなんでもやり過ぎだと言って止めたそうです。

祖母は私に「〇〇ちゃん、どうしてこんな牢屋みたいなことをするの?」と、とても悲しそうに言いました。

「ここから飛び降りてけがでもしたら大変だからだよ」と慰めるしかありません。

次に帰省したときは、夜中の徘徊防止のため、就寝時に祖母の部屋と母屋につながるドアにカギをかけるようになっていました。

祖母の部屋に簡易トイレを設置していましたが、祖母はなかなかそれを覚えられません。

夜中の2時頃にガタガタと大きな音がします。

私が2階の部屋から下に降りると、祖母はカギがかかっているドアを開けようとしていました。

私はドアを開けると、祖母は「どうしてカギなんか?」と不安そうに聞いてきました。

私が「もう遅いから寝ようね。トイレはお部屋にあるよ」と話している最中に、母が2階から降りてきて「もういい加減にして!」と祖母の頭を強く叩きました。

私が「やめて!」と止めると「どうせ覚えてないんだから!」と人が変わったようでした。

祖母は「ごめんなさい、ごめんなさい」と言って本当にかわいそうでした。

「暴力なんか...後でいつか後悔するよ」と母に言うと「後悔なんかしない!」と言い切りました。

祖母は私に「〇〇ちゃん、一緒に寝て、お願い、怖いからお願い」と言います。

そのとき、母は私を睨みながら言いました。

「そんなことしないでね! ちょっと帰ってきて家をかき乱すのは止めて! あなたが帰った後、私に一緒に寝てって言われたら大変になるから」とまた強い口調です。

そう言われてしまっては、私は何も言えません。

「ごめんね、おばあちゃん一緒に寝られないけど2階にいるからね、明日また会おうね」と祖母に伝えてドアにカギをかけたのです。

その3カ月後、祖母は病院で安らかな最期を迎えました。

87歳でした。

母は義母や実母の介護に一生懸命取り組みました。

自分がやらなければという思いが強くなり過ぎて、ときには周りが見えなくなってしまったこともありました。

母方の祖母は亡くなって14年になりますが、母はいまだに自分の行為を後悔していると一度だけボソッと電話で言ったことがあります。

介護はきれいごとで片付けられません。

私は今でも帰省すると必ず祖母の部屋を使用します。

部屋に入ると、祖母に「帰って来たよ。一緒に寝ようね。そしてごめんね」と言います。

あの時、祖母が怖いと何回も言っていたのはなんだったのかとふと思います。

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