<この体験記を書いた人>
ペンネーム:やまと
性別:女性
年齢:42
プロフィール:夫と二人暮らしの主婦です。
15年くらい前、南米を一人旅していたときの話です。
旅のスタイルは、バックパックを担いでの貧乏旅行。
現地での移動手段は、観光客は乗らないような地元のバスでした。
その日も首都からかなり離れた都市に行くために、おんぼろの長距離バスに乗っていました。
当然冷房はなく、気休め程度に扇風機が回っているだけ。
道も悪くて乗り心地は最悪です。
乗ってしばらくすると、バスが妙にノロノロ走るようになりました。
「あれ...おかしいな」と思ったのも束の間、バスは故障したようでついに止まってしまいました。
「どうしよう、早く行かないと目的の観光名所が閉まっちゃうかも。やっぱり交通費はケチらないで、飛行機で行けばよかったかな? 時間とお金をかけて日本から来たのにこんなところで足止めなんて何しに来たんだろう...」
なんて悪いことばかり考えてしまい、気分は最悪でした。
止まったバスの中では乗客がざわつきはじめます。
ほとんど分からない現地語が飛び交う中、私は不安になってきました。
そんな私の気持ちとは反対に、バス内でかかっていたラジオからは陽気なラテンミュージックが流れていました。
すると、隣に座っていた現地の男性(20代)が、曲に合わせて手や膝を叩いてリズムを取り始めました。
「やっぱり現地の人はリズム感が違うな、上手だな」
なんて思いながらぼーっと眺めていると、他の乗客も男性に合わせて手拍子を始めました。
そして、歌い始める人、合いの手を入れる人、さらには踊り始める人まで出てきたのです。
日本ではあり得ない光景にびっくりしましたが、乗客の楽しそうな顔を見ているとなんとなく明るい気分になってきました。
言葉が分からないので歌うことはできませんでしたが、音楽に合わせて手を叩いたり体をゆらしたりしているうちに、いつの間にか私も楽しい気分に。
みんなと一緒に何曲かの音楽を楽しんでいるうちに代わりのバスがやってきて、私たちは乗り換えることができました。
バスの中で隣の男性に話しかけてみると、なんと男性はプロの打楽器奏者で、演奏旅行の途中とのこと。
間近でプロのパフォーマンスを見ることができ、私はうれしい気持ちでいっぱいになりました。
バスを降りる頃には、あんなに最悪だった気分がうそのように、満たされた気分になっていました。
日常ではあり得ない貧乏旅行ならではの体験でしたが、ハプニングが起きても「今」を楽しむたくましさに、人生を楽しむコツを学んだ気がしました。
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