<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ウジさん
性別:男性
年齢:60
プロフィール:地方都市の役場に勤めています。自分の仕事を真面目にこなす方が多い中で、手を抜こうとする人も必ずいるものです。
私は町民課で公務員生活をスタートし、いくつか異動をしながら2022年の春に定年を迎えました。
どの職場でもきちんと真面目に仕事をこなす方が多く、安心して仕事ができましたが、今から10年余り前、教育委員会に勤めていたとき、驚くべき同僚に出会ったことがあります。
当時30代前半だった同僚のAさんは、何事につけ要領よく立ち回ろうとする女性でした。
仕事自体はきちんとこなしていて、そういう意味では迷惑をかけることはないのですが、細々と、実にセコく、人に仕事を押し付けようとするのです。
例えば、資料をホッチキスで綴じる仕事があると、すぐには取り掛かりません。
誰かがホッチキスを使い始めるタイミングを待っているのです。
そのときが来ると、すかさず、その誰かの資料の中に自分の分を紛れ込ませます。
「あれ? 綴じようと思ってたのにやってくれたんだ。助かるー」
後で取ってつけたように言ってから、自分の分を拾い出していくという手口です。
資料処分のときも巧妙です。
教育委員会では、プライバシーに関わる資料も多く扱っており、不要になったらすぐに裁断処理をするのが原則です。
ただし裁断作業は、シュレッダーが旧式なせいもあり、けっこう面倒です。
そこで彼女は処理文書をすぐに裁断せず、こっそりと机脇の箱にためています。
そして、誰かが不要書類を裁断しようとすると、素知らぬ顔でその中にため込んでいた自分の分を紛れ込ませるのです。
外回りの仕事でもAさんには「自分ルール」があります。
公用車を使うと使用簿に記入する必要があります。
これが結構負担なので、彼女は同僚の公用車使用予定を確認し、使う人に近寄っていきます。
「あ、〇〇さん、□□に行くんですか? ちょうどよかった。乗せてください」
さも偶然のように声をかけ、同乗して使用簿の記入を免れようとするのです。
そう都合よく同じ場所に行くわけはないので、遠回りになることも少なくないのですが、その時間も骨休めと考えているようでした。
「誰かお客様にお茶を頼むよ...Aさん、頼めない?」
課長がお茶出し役を探して声をかけたときは、突然手近な電話を取り、何をするかと思えば...。
「はい、はい...ああ、その件ですか。私が担当しております、ええ...」
こんなふうに電話対応中のふりを装ってやり過ごしていました。
「仕事は要領よくやらなくちゃ! できる女ってそういうものよ」
昼食時間などで女性職員が集まると、彼女の自慢たっぷりのレクチャーが始まります。
「同じような仕事をする人に頼んじゃえば、効率いいってもんでしょ」
そう言われている相手は、その仕事を押し付けられている側です。
自分さえ要領よく振舞えればOKで、周囲の気持ちを考えられないAさんはみんなからウザがられていました。
程なくしてAさんは教育委員会から異動になり、水道課に配属になりました。
「Aさん、あの調子でまたやってくつもりかしらね」
同僚の間で噂になりました。
というのも当時の水道課の課長は、筋金入りの堅物で、ルールに外れた行動を極端に嫌うことで有名だったからです。
その後、Aさんの武勇伝を耳にすることはなくなりました。
どうやら水道課のガチガチに固められた仕事の進め方の中では、ご自慢の要領の良さは発揮できなかったようです。
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