<この体験記を書いた人>
ペンネーム:藤黄
性別:男
年齢:42
プロフィール:結婚7年目の会社員。妻が鋭いのか私が鈍いだけなのか...きっと後者なのだろうと思っています。
私(42歳)と妻(36歳)がまだ恋人同士だった頃、2013年の話です。
私は一人暮らしをしていた妻の部屋に泊まり、そこから出社しようとしていました。
「折りたたみ傘持っていったほうがいいよ」
玄関まで見送りに来ていた妻が言うのです。
玄関を開けて外を覗くと、雲一つない晴天。
「こんなに晴れてるのに?」
「私、そういう勘が鋭いから」
そう言って折り畳み傘を差し出しました。
妻の言うとおり折りたたみ傘をカバンに入れて出社すると、帰宅する頃には雨がザアザア降っていました。
「本当に降ったね。助かったよ、ありがとう」
「でしょ? 私、そういう勘が鋭いの」
電話してお礼を言うと、妻は笑っていました。
それから数日後、妻とドライブデートに出かけることに。
「あそこにあるお店、美味しそうな雰囲気あるから行ってみよう」
車を走らせていると不意に妻が言いました。
二人ともこの辺りに来るのは初めてで、妻もその店に行ったことはないはずですが、お腹も空いていたので立ち寄ることにしました。
「美味しかったな! 食べ過ぎちゃったよ」
私はお腹をさすりながら言いました。
「でしょ? 私、そういう勘が鋭いの」
「この間の傘の件といい、やっぱり女の人は男より勘が鋭いのかな?」
「浮気なんかしたら一発で分かるよ」
そう言って妻は凄みのある笑顔を見せました。
さらに数日後、朝から携帯電話が鳴るので画面を見ると、妻からの着信でした。
「もしもし、どうした?」
「...大丈夫?」
いきなり妻が言うのです。
「何が?」
「あんまり無理しないで、今日は早めに仕事終わらせて私の家に来てね」
普段はそんなことを滅多に言わない妻からの言葉に、なんだか嫌な予感がしました。
「それって...、悪い予感がするってこと?」
私は恐る恐る聞いてみました。
「うーん、どっちかっていうと、良い予感」
妻の声は急に明るくなりましたが、それが逆に恐怖を煽りました。
その日の夜、私は妻の言うとおりできるだけ仕事を早く終わらせ、妻の部屋に向かいました。
「何も変なことがなくて良かった...。まあ、勘なんていつも当たらないよな」
なんて思いながら玄関を開けると、「誕生日おめでとう!」と妻がクラッカーを鳴らしました。
数日前から仕事が忙しく、私は自分の誕生日をすっかり忘れていました。
「ありがとう...良い予感って、もしかしてこのこと?」
「そうだよ」
「朝の電話で、大丈夫、って言ってたのはなんだったの?」
「最近忙しいって言ってたし、声が疲れてたし。それだけ」
「勘じゃなくて?」
「勘でも何でもない」
うん? と思い、私は数日前までの記憶をさかのぼりました。
「もしかして、傘持っていけ、って言ったのは...」
「天気予報」
「じゃあ、ドライブで美味しそう、って言ってたあの店は...」
「ネット」
そう言って妻は笑いました。
私は驚きと喜びと、そしてちょっとした安堵感が入り混じった複雑な感情のまま、「そっか」と言うのが精一杯でした。
妻の手料理を食べながらお酒を飲み、プレゼントももらった楽しい夜です。
「勘ですべてが分かるわけじゃないよね」
お酒もいい感じに回ってきて私が笑いながら言うと、妻の笑顔がスッと消えました。
「浮気したら一発で分かるけどね」
私はただ頷いて、ビールを飲み干したのでした。
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