<この体験記を書いた人>
ペンネーム:藤黄
性別:男
年齢:42
プロフィール:建築業界に勤めるサラリーマン。転職を決意するが、なかなか妻に言い出せないでいます。
私(42歳)は、建築関係の企業で働くサラリーマン。
年齢的にも中堅を越え、自分のライフプランを考えたとき、給料や社内での立ち位置、やりがいなど「このままでいいのだろうか...」と悩む日々が続いていました。
転職という選択肢が頭の中でチラついてから日に日にその考えは大きくなる一方でしたが、どうしても妻(36歳)には言い出せないまま、時間だけが過ぎていきました。
ある日、久しぶりに妻と2人で晩酌をする機会がありました。
「今しかない!」と思い、お酒の力も借りて妻に「転職しようと思うんだ」と切り出しました。
妻は缶ビールを飲みながら「ダメよ」とひと言。
即座にNOを突き付けてきたのです。
いろいろ苦しんで出した結論をこんな簡単に...。
そう思いながらも、これからの生活を考えたら妻の拒否も想定内でした。
しかし、その時点で私の心はもう限界。
妻へ説得を試みる気力もなく、ぬるくなった缶ビールを一気に飲み干しました。
もう寝ようかと立ち上がろうとした瞬間、妻が私の目をまっすぐ見ながら言いました。
「あなたの様子が最近おかしいってことは分かってたわよ」
「そうなの?」
「そりゃ分かるわよ。何年あなたと一緒にいるのよ。仕事のことばかり考えているあなたが悩んでいるんだから、多分転職するのかなあって」
妻は立ち上がり冷蔵庫から缶ビールを2本持ってきて、1本を私の前に置きました。
「じゃあ、どうして...」
分かっていたからこそのNOだったのかと思うと、私はそれ以上言葉が出てきませんでした。
「どうせ自分のことしか考えていないんでしょ」
妻は笑いながらビールを一口。
「辛いとか苦しいとか、最近のあなたを見ていればすぐに分かる。あなたが言うんだからよっぽどのことだとは思うけど、そこにはあなたしかいないの」
妻は缶ビールを飲むピッチが上がりました。
「自分のことを考えることは大切だけど、そこに私が入っていないのが嫌なの! 幸か不幸か私たちには子どもがいないんだから、この先二人で生きていくんだよ? なのに、私のことなんて全然考えていない転職なんてダメなの」
強い口調とは裏腹に、妻の表情はどこか柔らかいものでした。
「私も今の職場、あんまり合わないんだよね」
缶ビールを飲むピッチとともに、妻の職場への愚痴もスピードアップ。
いつしか私の転職話から、妻の愚痴へと移りました。
転職話が宙ぶらりんになったと思ったそのときです。
「二人で生きていかなくちゃいけないんだから、ビールも半分こね」
すでに妻の缶ビールは空いていました。
妻は、私が一口も飲んでいない缶ビールのプルタブを上げながら言いました。
「こうやって笑いながら飲めればいいんじゃない? 一応、転職が決まったら私に言ってね」
そう言うと、冷蔵庫から缶ビールを1本、私の前に置きました。
「これからは、一人で抱え込まずに相談してよ。私はあなたにちゃんと吐き出してるから。じゃあ、これまでお疲れ様でした。これからもよろしくお願いします」
結局、そのあとすぐ私は会社を辞め、転職しました。
妻も転職し、今でもときどき笑いながら晩酌をしています。
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