とあるディープな街にある「スナック えむ」店主、霊感ゼロのアラフォー作家、えむ。「お礼に一杯奢るから」を謳い文句に、ホラートークをしてくれるお客を待つ。今宵は、数件隣の店の若手ママ、恵子ちゃん(32)の話「祓っちゃだめ!」。
※実際に身の周りで起きた実体験エピソードに基づき構成しています。
【前編】誰もいないはずなのに...! 背後から奇妙な「音」が/今宵もリアルホラーで乾杯「祓っちゃだめ!」(3)
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【近所のバーの若手ママ・恵子ちゃん(32)の話】
その日は、店内で事務作業をしていたんです。
そろそろ開店しようかなと深夜に片づけを始めた時のこと...。
カタ...カタカタ...カタカタ......
なにか硬いものが動いているような...、壊れたおもちゃが笑っているような音が、いつも違和感を感じていた「あの場所」からするんです。
「やっぱりあそこ、何かいるんだ...!」
私は恐怖で動けなくなりました。
カタカタ、カタカタカタッッ...!
その音は、私に存在をアピールをするかのように激しくなっていきました。
勇気を出して、その場所に視線を移そうとしたその時...。
お客さまが一気にご来店されて、急に賑やかになったんです。
その瞬間、その「何か」の気配は消えてしまいました。
その後は、いつものように忙しい時間が続いたので、その勢いでやり過ごしてしまいました。
けど私、気付いてしまったんです。
お客さまがいる時も、その場所から時折「カタカタ...」って、奇妙な音がしていることに。
賑わっている声で今まで気付かなかったけど、ずっと「何か」が笑ってるんです。
怖くなった私はネットでおはらいの方法を調べ、見よう見まねでその場所をはらうことにしました。
おはらいをした後、その場所は嘘のように寒くなくなり、「カタカタ」という音もなくなりました。
私は心底ホッとしたのですが...。
なぜか、その日から店は、閑古鳥が鳴くようになりました。
そんなある夜、久しぶりに来たお客さんに「あれ? 座敷童はどうしたの?」と言われました。
その人が言うには、「あの場所にいたのは幸せを呼ぶ座敷童だったんだよ」ということでした。
座敷童は賑やかなところが大好きだから、お客さまをたくさん呼んでくれたんだそう。
「中途半端におはらいなんてするから、怒って出て行っちゃったんだよ」
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「はらっちゃいけないってこともあるんですね」
恵子ちゃんはそう言ってため息をついたあと、手にしたグラスを空にしました。
「それはもったいないことをしたねぇ」
「はぁ~、私ってかわいそうでしょ。こんなかわいそうな私に、今日は一杯とは言わずたくさん飲ませてくださいよぉ...」
「...ダメ」
「なんでですかぁ~!」
「自分の店を座敷童任せでどうするのよ。飲んだくれてないで、自分の力で稼ぎなさい!」
ま、うちの店もたいがい閑古鳥が鳴いてるんだけど。
今回はホラートークというより、「ちょっと残念な話」...だったかな。
【今宵もリアルホラーで乾杯シリーズ】
・この絵、何かがおかしい...絵の中にいるはずの女の子が/「呪われた絵」
・ガチャ...夜中に訪れた「大柄な男」をよく見ると足が/「毎週来る霊」
・怖い、引きずり込まれる! 夢で見た「黒い影」の正体は/「悪夢の道」
・え「命に危険」がある遊び、続けます?/「こっく●さん」
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