とあるディープな街にある「スナック えむ」店主、霊感ゼロのアラフォー作家、えむ。「お礼に一杯おごるから」を謳い文句に、ホラートークをしてくれるお客を待つ。今宵は、街で有名な老舗ゲイバーの美和ママの話。「呪われた絵」をお届けします。
※実際に身の周りで起きた実体験エピソードに基づき構成しています。
【前回】この絵、何かがおかしい...絵の中にいるはずの女の子が/今宵もリアルホラーで乾杯「呪われた絵」(1)
「この女の子、こっちに近づいてきてない?」
いつもは機関銃のように話す美和ママだけど、そう言いかけた瞬間、ママの口調が一瞬にして変わるのが分かった。
あの時は私も生唾を飲み込んでしまったかも...。
ママのホラートークはさらに続きます。
※ ※ ※
【老舗ゲイバーのママ・美和(年齢不詳)の話】
言われてみればかすかにだけれど、絵の中にいるはずの女の子が、こっちに近づいているように見えたわ。
長い髪が顔を覆っていて表情はほとんど見えないけれど、ジッとこちらを見つめているみたいにも感じて。
それでも私は、どうしてもその絵を外すことができなかったの。
そして、ある夜のこと。
バイトの子に任せて近所の店で飲んでいたら、その子がガタガタと震えながら血相を変えてその店に飛び込んできたのよ。
「ママ!! え、絵が...絵が大変っ......!!」
急いで店に戻ってみたけれど、絵はいつもの場所に飾ってあるじゃない。
「どういうこと?」
「よく見てくださいよぉ~っ!」
絵の変化に気づいて、アタシはその絵に初めてゾッとしたわ。
女の子がいないのよ、そこにあるのは草原だけ。
そしてアタシ、店内の異変に気付いたわ。
店の奥の隅っこにね、「何か」がうずくまっているの。
モヤモヤしている黒っぽい塊なんだけど、その時確信したのよ。
「この絵の中にいた女の子だ」って。
パニックになったアタシは、とっさにその絵を壁から外してその少女に被せたわ。
すると、この世のものとは思えない低くてくぐもったうなり声が聞こえたかと思うと、パタンと、床に絵が転がったの...。
※ ※ ※
ママの話が終わると、店の中がシーンと静まり返った。
「で、結局その絵は、どうしたんですか?」
「すぐに、おはらいとお焚き上げをしてもらったわよ。もうコリゴリ! これからは気安く絵は買わないようにするわ」
「へえ~」
骨董品屋にはいろんな人の想いや事情を抱え込んだ商品が並ぶっていうし、もしかしたら、そういうこともあり得るかもしれない。
「はい、ママ。一杯おごりますよ。どうぞ」
「ウフフ、ありがとう。どう? 怖かったでしょ?」
「...まあまあですかね」
「嘘~っ!?」
「その絵を実際に見れたら良かったのにな。そうしたら、もっと面白かったのに」
「この話を聞いて、その絵が見たいと思うの? あんた...本当に"そういう感覚"がゼロなのね...」
「ふふふ」
霊感ゼロの私が震え上がるほどのホラー話に出会えるのは、まだまだ先の話かもしれない。
【今宵もリアルホラーで乾杯シリーズ】
・ガチャ...夜中に訪れた「大柄な男」をよく見ると足が/「毎週来る霊」
・怖い、引きずり込まれる! 夢で見た「黒い影」の正体は/「悪夢の道」
・誰もいないはずなのに...! 背後から奇妙な「音」が/「祓っちゃだめ!」
・え「命に危険」がある遊び、続けます?/「こっく●さん」
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