<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ボーダーズ
性別:女
年齢:40代
プロフィール:夫と猫と3人暮らし、のんびり生活主婦です。
約10年ほど前、県外のホテルで働いていたとき、実家の近くに観光関連の会社が開業すると分かり、実家に戻ると同時に転職しました。
観光業を長く続けていたことと、年齢的にいろいろなことを任せられそうだというのが採用の理由だったようです。
仕事が始まってみると、私と店舗責任者を除けば観光業は全く経験のないスタッフばかりで、観光業の一般常識や専門用語も全く通じず大変な開業でした。
私は、アルバイトで採用された一回り年下のスタッフの教育係をすることになり、お客様の前に出られるように事務所での研修に励んでいました。
彼女は、仕事の内容より基本的な姿勢や言葉使いがめちゃくちゃで「普段はいいけど仕事中は直そうね」が私の口癖に。
雑談を交えながらコミュニケーションを取っていたのですが、干支、血液型、小学校など共通点が多いことから話も合うし、できの悪い妹のようななんでも話せる関係になっていきました。
彼女がカウンターに出るときは、私がいつも一緒にフォローするようにしていました。
あるとき、私が少し席を外した間に電話が来たことがありました。
彼女はパッと取って対応していました。
他の若いスタッフはあまり電話に出たがらないので「研修して自信がついたかな」とうれしくなったのですが、カウンターに戻ると驚いてしまいました。
彼女はカウンターに両肘を付き、電話を耳と肩に挟み、靴を脱いでつま先にぶら下げてぶらぶら...。
友だちと話しているような言葉使いで話していて、どうやら道案内をしているようでした。
そのとき、対面のお客様はいなかったので、私はためらいなく肘を指で「ピン」とはじきました。
驚いた彼女は「あっ」と姿勢を正しました。
続けてカウンター下の見えないところで足を軽くキック。
また「あっ」と言って靴を履き直します。
電話中でしたが舌を「てへっ」と出して「反省してる風」な表情を見せるのでした。
指でピン、足でキック。
これはコミュニケーションが取れていたからできたことだと思っています。
普段から信頼関係を築いていたから、彼女もすぐに正してくれたのでしょう。
電話口のお客様にはカーナビ設定のため、住所をお伝えすることになったようです。
そこで彼女は「お客様、住所を申しあげます。メモれますか?」と...。
メッ、メモれますか!? 正しくは「メモを取れますか?」でしょう。
私はとっさに手でグーを作って頭を叩くようなしぐさを彼女にしました。
なんで怒られたかすぐ分かった彼女は、また舌を「てへっ」と出し「メモできますか?」と言い直していました。
終わってから注意すればよかったと自分で反省しながら待っていると、受話器を置いた彼女は「すいません! てへ」と。
そんな彼女でしたが、他の社員に研修されていた別の若いスタッフがどんどん辞めていく中、見事に独り立ちできるまでに成長していました。
しばらくして私は他部署に異動することになり、それを知った彼女が食事に誘ってくれました。
「少し厳しくしすぎちゃったな? ごめんね」
「いいえ、先輩に怒られたことは全部正しくもっともなことでした。てへっ」
そう言ってくれました。
それから数年後、お互い退職して結婚しましたが、今でも付き合いが続いており、姉妹のような先輩後輩の関係です。
「先輩、お礼状ってどういうふうに書くんですか~」
「お返しの品って何買ったらいいんですか~」
なんて質問をしがてら遊びに来ます。
「もう先輩じゃないんだから自分で調べて考えなさい!」とわざと突き放すと、あの「反省してる風」の顔をします。
それを見るたび昔の研修の時間を懐かしく思い出します。
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