<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ウジさん
性別:男
年齢:59
プロフィール:つい最近2回目のワクチン接種を終えましたが、腕は痛いは熱っぽいはと結構な副反応に苦しみました。
2021年の8月初めの頃です。
全国で連日新型コロナの再拡大が報じられ、時短要請だの酒類の提供停止だのと田舎の町にもいろいろと不穏な空気が流れていました。
外食もちょっとはばかられそうな時期でしたが、仕事で外出していた際の昼食に、やむなくファミレスに入りました。
「何言っとるんだ、あんたは! ハハハ...」
「いやあ、息子夫婦にはまだまだ任せておれんよ」
久しく黙食が当然の習慣だったので、楽しそうな会話が盛り上がっている店内に違和感を覚えました。
見ると5人の老人(70~80代とお見受けしました)が、隅のボックス席に陣取って声高に談笑中でした。
置かれていたアクリル板も空いた席の上におろしてしまい、中央に料理を並べてぱくつきながらです。
当然のことながら全員がノーマスクでした。
「あの、お食事中はお話をお控えいただいていますので」
ウェイトレスさんが席の脇に立って声をかけますが、聞こえぬふりを決め込んでいます。
「...お話するのであればマスクをお願いいたします」
気丈に言葉をつないだ彼女に、一人の男性が顔を向けました。
「ああ、心配せんでいい。わしらはみんなワクチン済みだからな」
そうニヤニヤしながら言うと、もう一人も続けます。
「もう3週間もたっとるから、コロナなんぞにやられはせんよ」
ワクチン接種済の人たちが、鬱憤晴らしよろしく店で騒いでいるなんてうわさを聞きましたが、それを目の当たりにしてしまいました。
「...いや、でも、皆さんにお願いしていることなので...」
すっかり怯えた声で絞り出す彼女に老人たちは声を荒げました。
「いままでずっと我慢しとったんだぞ! 若い奴らがウィルスを撒き散らかすからこんなことになっとるんだ」
「そうだそうだ! ワクチンを打った以上、わしらは無罪放免ってところだな! ハハハッ!」
「若い奴らはだめだと言っとるのに、やれ路上飲みだ、バーベキューだと遊び呆けてるじゃないか!」
「若い奴は重症にならんと思い込んどるし、怖いもの知らずだからな」
「おかげでわしらはわずかな楽しみの昼食会も開けんかったんじゃ。今度はわしらが楽しむ番じゃ、なあ!」
その様子を見ていた店長(40代後半でしょうか)が、何やらタブレットの画面を確認して、それを手にグループに近寄りました。
「皆さん、ご存知ですか?」
画面を見せながら話しかけました。
「医師会の情報では、ワクチン済みでも感染する方はいらっしゃいますし、その場合は未接種の方と同様にウイルスを広めるようですよ」
落ち着いてはいますが一歩も引かないという口調です。
「だからどうした?」
「ご本人は重症化しないで済むようですがね...」
「その通り! わしらは平気ということじゃ!」
「いや、感染そのものは防ぎきれないんですから、ウイルスはもらってしまうかもしれませんよ」
「だからわしらはかかっても平気なんじゃからいいだろう。人の面倒まで見てられんね」
老人たちはいよいよ意気軒昂です。
「いや面倒まではお願いしてません。その"若い奴ら"と同じように、自分たちが大丈夫だろうからとウイルスを撒き散らかしているかもしれないので、止めていただけませんか?」
店長は真剣な表情です。
そしてはっきりと「マスクをお願いできますか?」と続けました。
「え、あ、いや......」
散々バカにした若者と、本質的に同じことをしていると言われた老人たちは絶句しました。
毅然とした店長の態度にも気圧されたのか、「こんな店では楽しめんわ」と捨てぜりふを残して、そそくさと会計を済ませて店をあとにしました。
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