<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ころちゃん
性別:男
年齢:54
プロフィール:派遣で何とか食いつなぎながら、親の介護も気になる今日この頃です。
54歳で職探しの中、大学4年時(1989年)の不可思議な事件を思い出しました。
大学進学で関西に出た私は、学生用集合団地の一角に1人で下宿していました。
当時はバブル全盛期で、私達4年生の手元には段ボール数箱にもなる大量の企業案内が届いていました。
多くの学生が内定を決めた秋になるとそれらはごみとなり、就活ごみ専用置場が駐車場の隅に臨時で設置されました。
私は当時若気の至りと好景気への甘えで、自由に生きたいなどと言いながら就職活動を一切しませんでした。
そして、漠然とした不安から一応保管していた企業案内も、あるときついに意を決して捨てることにしたのです。
卒業単位は足りていた私の生活は昼夜逆転状態で、その日就活ごみの廃棄を始めたのは夜中の3時でした。
袋も結わう紐も少なく、作業は重労働となりました。
私は両手に持てる限りの冊子をまとめ、2階の部屋から100メートル程離れた駐車場へ運びました。
階段を静かに降り駐車場への緩やかな坂を上ること複数回、30分もかけて全てを運び終えたときは汗だくでした。
それでも捨て終えた達成感ですがすがしい思いで床に着きました。
翌日正午過ぎに目を覚ました私は、ドアを開け驚愕しました。
ドアの前に就活ごみが積まれてあったのです。
ごみの出し方が不適当だったため返されたのかと、一瞬思いました。
悪戯や嫌がらせという考えも頭をよぎりましたが、昨夜の重労働を思い出すと疑問です。
私は確認しようと駐車場へ向かいました。
すると自分が置いた辺りの場所から冊子が無くなっていて、他は前と同じ様子です。
嫌がらせなら端から順に運べばいいはずです。
私は背筋が凍りました。
犯人はどうやって私の物を判別したのでしょう?
ごみ運びの際、誰とも顔を合わせませんでした。
誰かが闇から私を監視していたのでしょうか。
「就活ごみが部屋の前に戻ってるんですけど、何か悪かったのでしょうか」
私は管理人に尋ねました。しかし彼女はきょとんとするばかりでした。
更に、犯人の目撃者がいないか近隣の顔見知り全員に尋ねましたが、何も分かりません。
犯人は、夜明け前か早朝に大量のごみの中から私の物を分別し、誰にも目撃されず約100メートルの距離を運び、階段を上がり2階の私の部屋の前に置いたことになります。
ごみ捨ての決心はその直前だったので、前もって計画された犯行では有り得ません。怪しいとも言えそうな数人の友人にも尋ねましたが、何も分かりませんでした。
限界を感じた私は、友人たちに全てを話し、また保存してある現場を見せ意見を求めました。
数人の容疑者が再度ピックアップされ取り調べもしましたが、捜査は一切進みませんでした。
実際私の下宿は最寄りの駅から15分坂を上った閑静な住宅地にあり、早朝に来て犯行に及んだとは考えにくいし、車があったとしてもそれは同じです。
また周りの住人も悪戯し合う程親しくはなくも、会えば世間話をするような良好な仲でした。
結局、みんなの意見も、悪戯にしては労力が大き過ぎ、嫌がらせにしては手緩いと帰結しました。
かくして事件が迷宮入りになると、事件は物笑いの種になりました。
「ごみが歩いてきたんちゃうか」
そんな中、1人の友人が言いました。
「それか、将来お前は路頭に迷って、大学の時就活を真面目にしなかったことを悔やむんだ。そして開発されたばかりのタイムマシンを命がけでハイジャックして、過去の自分に警告に来るんだ」
そう言われ2人で笑いました。
あれから32年、もしタイムマシンがあればあのときに戻り、重労働しないまでも、就活しろよ、ぐらい言ってもいいかなと思うのです。
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