「誰に聞いたの?お兄ちゃんね」膵臓がんになっても弱みを見せるのが嫌いな88歳の母

<この体験記を書いた人>

ペンネーム:uz
性別:男
年齢:58
プロフィール:大学進学を機に実家を離れ、地方に住み始めて35年。88歳の両親は実家住まいですが最近母の体調がよくありません。

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実家で父(88歳)と暮らす88になった母が、入院しました。

大学入学を機に実家を離れて30年以上になりますが、入院した話を聞かされたのは初めてです。

膵臓がんになったと聞いたのは半年前、両親とは別ですが近くに暮らしている兄(60歳)からの電話でした。

「お前には知らせるなって言われたんだけどさ、やっぱり病気が病気だからな」と 。

母はとにかく人に弱みを見せるのが嫌いです。

5年ほど前に正月に家に戻った時、杖をついているので驚いたら「ちょっとね、転んじゃったら、ポキッてね」と。

実は大腿骨を折って手術、3カ月ほど入院、それから2カ月ほど経ってまだリハビリ中とのことでした。

何で知らせてくれなかったんだと父に言うと「母さんがな、心配かけるからお前には言うなって......」。

父も気丈な方なので、何とかなると思って知らせなかったらしいのです。

さすがに兄は知っていましたが、「絶対言うなってきつく言われてたからさ......」と申し訳なさそうに言います。

そんな横で、母は杖をつきながらも、いつもの正月と同じように、お節料理を食卓に並べていました。

膵臓がんの件も思った通り、家族内でかん口令が敷かれていました。

それでも、高齢ゆえに手術は回避して抗がん剤の治療を選択し、それなりに効果が出ていることは兄から聞かされたのでひとまず安心。

ただ入院と聞いたのでさすがに心配になり、母に直接電話しました。

電話口に出た母は開口一番「誰に聞いたの? ははあ、お兄ちゃんね。あれほど言うなって言っといたのに......」。

電話の声は元気そうだったのでひとまず安堵しましたが、相変わらずの負けず嫌いに少し語気を荒げて「なに言ってんだよ! 遠くにいるこっちの身にもなれよ。伝えてくれて兄貴にはほんとにありがたいと思ってるよ、こっちは」と畳みかけてしまいました。

すると少ししゅんとした声で「ごめん、ごめん。なにね、ちょっと疲れただけなんだよ。大事を取ったの」といいます。

「見舞いに行くよ」というと「やだよ、寝てる所に」と切り返されました。

とことん弱みを見せるのを嫌う母。

その電話の後、兄から電話。

「来れるなら、来た方がいい」と言います。正直な話、かなり思わしくないとのこと。

おそらくもう退院できることはないのではないかとのことでした。次の休みに行くことにして電話を切りました。

見舞いに行く日はあえて母には伏せておき、父にだけは電話をしておきました。

「来るのか? 俺はうれしいけど、あいつはどう思うかなあ? お前が来るぐらいだから、自分には病状が伝えられていないけどよほど悪くなってるんじゃ、とか思わないといいんだが...」と心配そうでした。

病気で入院した母を息子が見舞いに行くことが、それほど大ごとでしょうか?

せめて母の大好きなモンブランのケーキでも持っていくことにしようと思いました。

そうすればそれほど危機感は持たないで済むんじゃないかな、と。

弱みを見せたがらない母を持つと息子も妙な気を遣わないといけません。」難儀なものだと思いつつ新幹線で実家に向かいました。

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