<この体験記を書いた人>
ペンネーム:向日葵
性別:女
年齢:51
プロフィール:5歳年上の夫と二人の子供と暮らすワーキングマザーです。
10年前、現在住んでいる住宅地の一軒家に引っ越して来た時から、そのご近所さんとの付き合いが始まりました。
ご近所さんは現在60代半ばの一人暮らしの女性。
引っ越しのあいさつに伺ったときは、ニコニコ笑顔で穏やかな語り口の人で第一印象はとても良かったのですが、話してみてすぐにその評価は「あ、なんか困った人かもしれない」に変わりました。
なぜなら、引っ越しのあいさつが終わるや否や「おたく、庭にカエルの置物あるよね? あれカワイイよね、もらえないかな?」と、満面の笑みで言われたからです。
欲しいと言われた庭のカエルの置物は陶器製で、30センチくらいの大きな親ガエルが2匹と、5センチくらいの小さな子ガエルが3匹で、合計5匹。
ちょうどわが家の家族構成に見立てた数がありました。
実はこれは、引っ越し祝いに実家の父が趣味の盆栽と一緒に飾っていたものを「引っ越し先の庭に飾りなさい」と贈ってくれたもの。
自分で購入したものならあげても良かったのですが、父から贈られたものをあげてしまうのは抵抗があり「これは引っ越し祝いに実家の父から貰ったものなので、すみません」とやんわり断りました。
するとおばさんは諦める様子もなく、今度は、「じゃあ、玄関においてある花の鉢植えでも良いわ!」と言い出しました。
これでご近所付き合いがスムーズになれば良いかと思いあげることにしましたが、この判断は間違いだったとすぐに思い知らされることになりました。
鉢植えなら大丈夫だと思ったのか、おばさんは、その後も私が新しい鉢植えを置くたびに「これくれない?」と言って貰いに来るようになりました。
そこで考えた対抗策が地植えです。
鉢植えではなく花壇を作って地植えにすればまさか欲しいとは言わないだろうと思ったのです。
しかし、おばさんは諦める様子はなく、シャベルと植木鉢持参で、植えてある花も欲しいと言ってくようになりました。
「ああ、最初にきっぱり断ればよかった......」と後悔しましたが、後の祭りです。
いいかげんにどこかで線引きしなくてはと考えていた時のことです。
おばさん最大の「これくれない攻撃」が炸裂しました。
なんと、庭に植えてあった南天の木が欲しいと言い出したのです。
さすがに、庭木を掘ってあげるわけには行きません。
そんなことをしたら、ますますエスカレートするのは目に見えています。
困った事態だけれど、逆にこれはいいタイミングだと思い「ごめんね。草花は良いけど、木はあげられないよ」と笑顔できっぱり断りました。
さすがに気を悪くするかと思いきや、おばさんも、「そうよね。やっぱり木は無理よね」と苦笑していました。
そのとき、なんとなくですが「ああ、これはもしかしたら、単に花や木が欲しいだけではないのでは?」と思いました。
考えてみれば、そのおばさんは旦那さんに先立たれた上に子供も独立済みで、2階建ての広い一軒家に一人暮らしをしています。
案外、こうして花を貰うことで私とコミュニケーションを取ることが目的なのではないかと、そんな気がしたのです。
それならば、別にあげたくないなら断っても大丈夫なのではと思いました。
その日以降、あげたくないものに関しては「ごめんね」と断るようにしましたが、おばさんが出現する頻度は変わらず、特にケンカになるようなこともなく、なんとも不思議なご近所付き合いは継続中です。
もしも全部あげていたら、私にとっておばさんの存在は、ものすごいストレスになっていたでしょうし、全部あげないでいたら、おばさんとは険悪な関係になっていたことでしょう。
ご近所付き合いは、臨機応変に適度な距離感が大切だと痛感したエピソードです。
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