<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ウジさん
性別:男
年齢:59
プロフィール:幸か不幸か、有名人や偉い人とはとんとご縁のない地方公務員の男性です。
2年ほど前に大きな台風があって、路肩が崩れてしまっていた近くの県道がやっと直りました。
散歩の途中で知り合いの方と出会って、道路のことを含め四方山話をしていると「やあ、やっと直したか」と、大声で言いながらご近所に住むAさん(60代後半)が近寄ってきました。
「ああ、そうですね。良かったですよ」
「なかなか直らなかったんで、こないだ言っといたんだよね」
ニヤニヤしながら自慢げなAさんは、続けてこう言い放ちます。
「いや何ね、知り合いの国会議員についでの折に言っといたんだよ。何とか早くかかってもらえんか、ってね」
Aさんは国会議員に知り合いがいるのがご自慢で、事あるごとに我が手柄とばかりに自慢する人なのです。
「いやあ、さすがですね。ありがたいです」
「いやいや、俺が何したってわけじゃないけどさ、やっぱりこういうことは議員を通すほうが早いもんだよね、ハハハ」
社交辞令で返した言葉にも、我が意を得たとばかりに鼻高々な様子で去っていきました。
古くなっていた町の文化ホールが改修されたときも、自慢話をあちこちで吹聴していました。
真偽のほどは不明ですが、Aさんが国会議員に直談判をして、町長に意見してもらったということでした。
「やっぱり国会議員を通すと話が進むよな」
なんて自信たっぷりな話しぶりでした。
地区の寄り合いなどでも大活躍です。
ゴミの集積所が古くなってきたので、地区でお金を出し合って新調しようか、と話し合っていると「どうした? 俺が〇〇(噂の国会議員の名を呼び捨てです)に口利いてやろうか?」と首を突っ込んできました。
「集積所なんて、町が動けばすぐに新しくなるさ。でも...口利くとなるとそれなりに物入りだからなあ...どうしてもって言うならだけどねえ...」
地区で金を集めるぐらいなら俺に預けろよ、とさも謝礼を求めるような物言いをすることさえ珍しくありませんでした。
2021年10月の選挙では、応援団長を自認し、事あるごとに「〇〇に入れときゃ間違いないんだから」とか「どうせ〇〇で決まりなんだから、選挙なんてしなくていいのになあ」と意気盛んな様子でした。
しかし、当の〇〇議員はわが町に足を運ぶことはなく「ほんとのところ、どこまで深い関係なのかねえ...」と噂されていました。
蓋を開けてみると、当の議員さんは新人議員に惜敗して落選。
選挙結果が夜遅くに出るほどの僅差で、陣営としては予測しない結果だったようです。
翌朝の報道で落選を知り、Aさんの落胆する姿が目に浮かんでしまいました。
選挙の後、数日たってAさんの姿を見かけました。
今まではコロナ何するものぞと、屋外ではノーマスクの人でしたが、大きなマスクを掛けていました。
いつもの肩で風を切るような歩き方ではなく、人目をはばかるように小さくなっていて、一瞬誰かわからないほどの憔悴ぶりでした。
しばらくはあの高らかな名(迷?)調子は聞かなくて済みそうです。
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