ディープな街にある「スナック えむ」店主、霊感ゼロのアラフォー作家、えむ。「お礼に一杯奢るから」を謳い文句に、ホラートークをしてくれるお客さまを待つ。今宵は、えむの高校の同級生、洋子(40代)の話「悪夢の道」をお届けします。
※実際に身の周りで起きた実体験エピソードに基づき構成しています。
【前編】怖い、引きずり込まれる! 夢で見た「黒い影」の正体は/今宵もリアルホラーで乾杯「悪夢の道」(7)
【高校の同級生、洋子(40代)の話】
人影は、夢と全く同じ距離に立ってジッとこっちを見ていた。
(逃げなきゃ...!)
私は夢で見ていた時のように、踵を返して走り始めたわ。
少しして振り返ると、やっぱり変わらない距離で立っている......はずなのに。
明らかにこちらに近づいてきている。
「うそ...」
焦った私は再び走り出した。
けど夢と同じで、両足が重くなってうまく前に進めないの。
私はいつもみたいに立ち止まらず、走りながら後ろを振り返ったんだけど。
「...!」
影が近づくスピードが少しずつ速くなってきているの。
それと同時にお経のような、聞き取れない話し声も聞こえ始めた...。
私はとにかく走り続けた。
けど、必死で走れば走るほど足はどんどん重くなって、影もどんどん迫ってくる。
「た、助けてっ!」
思わずそう叫んだけど、人の気配もないし、逃げ道もない。
聞き取り不可能な話し声は、どんどん大きくなっていく。
そして真っ黒な影が私の真後ろまで来たことに気づいたわ。
(もう、ダメッ!)
あまりの恐怖に足を止めそうになったその時よ。
「逃げろ!」
耳元で低い男の声がしたの。
私は気を取り直して、悲鳴を上げながら必死で走った。
そして何かにつまづいて思い切り転んだんだけど、顔を上げたら元の繁華街に戻っていたの。
その時は、きっと酔い過ぎたのかなって思うことにしたんだけど。
でもね、それ以来、あの一本道の夢は全く見なくなったのよ。
※ ※ ※
「本当に見なくなっちゃったの?」
「うん。全く」
「『逃げろ!』って言った男の人は誰だったんだろう?」
「それもわからないんだけど、なんとなくご先祖さまとかだったんじゃないかなって思ってるのよね」
「ご先祖さまねえ...」
「どう? なかなかでしょ?」
「そうねえ...でも、怖さより不可解さが気になっちゃって仕方ないわ」
「バカね。こういう話は不可解なものなのよ」
「そうかもしれないけど...。黒い影の目的や、声の正体を考えると妄想が止まらないのよね」
「あんたやっぱり...生粋の物書きなのね...」
今回の話は、物書きの血を騒がせる話だったわ。
同級生に感謝しなくちゃ。
【今宵もリアルホラーで乾杯シリーズ】
・この絵、何かがおかしい...絵の中にいるはずの女の子が/「呪われた絵」
・ガチャ...夜中に訪れた「大柄な男」をよく見ると足が/「毎週来る霊」
・誰もいないはずなのに...! 背後から奇妙な「音」が/「祓っちゃだめ!」
・え「命に危険」がある遊び、続けます?/「こっく●さん」
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