<この体験記を書いた人>
ペンネーム:わんわん
性別:女
年齢:51
プロフィール:会社勤めの主婦。55歳会社員の夫、21歳大学生の息子と3人で首都圏在住。
今から16年前の2005年頃、私は専業主婦で息子は幼稚園児(5歳)でした。
幼稚園が終わった後、招き招かれしながら親子で仲良くしていたママ友がいました。
当時の我が家は子ども仕様に模様替えし、決しておしゃれな空間ではありませんでした。
一方ママ友宅は季節に合った装飾など施されていて、我が家と違って素敵だなといつも感心して眺めていました。
楽しい平穏な日々が続いていましたが、ある日を境に関係が崩れてしまったのです。
ママ友宅に招かれたある平日午後、ママ友と私はリビングに続くダイニングテーブルに座り、子どもの様子を見つつ楽しくおしゃべりしていました。
子どもたちのいるリビングを眺めていると、今まで見たことがない高さ50センチほどのガラスの置物がテレビの横に置いてありました。
「えっ! 何であんな壊れやすいものが今ここに? 危険すぎる」
心の中でそう思いつつ、その素敵な置物は何か尋ねました。
「今日は結婚記念日なの。あれは新婚旅行先で買った思い出のベネチアングラスだから、今夜、記念日のお祝いをするために出してきたの」
電車のおもちゃで遊んでいる子どもたちからは離れた場所だったし、今のところ問題ないか...喧嘩もしたことないし...、と対処しなかった私も危機管理が甘かったと今は後悔しています。
その後も子どもたちは電車遊びに没頭していました。
しかし私がトイレをお借りしてリビングダイニングに戻ってきたとき、状況は変わっていたのです。
空気で膨らませた風船をトスして、何回続けられるかという遊びが始まっていました。
「何で急に風船? これは危険な状況なのでは⁉」
頭の中でサイレンが鳴り響いたその瞬間、事故は起きてしまいました。
ふわりと横に逸れた風船がゆっくりとその思い出のベネチアングラスの先端をかすり、グラスはスローモーションのようにゆっくりとフローリングの床に倒れて落ちました。
ママ友が駆け寄り、状態を確認したところ、尖った先頭部分が折れていました。
子どもたちも状況を察して呆然としています。
私の頭の中は混乱したままでしたが、まずは謝罪をと思いました。
「ごめんなさい。思い出の品なのにどうしたらいいかしら...本当にごめんなさい」
少し沈黙が続いた後、ママ友が口を開きました。
「ウチの息子が風船を持ってきたのを止めなかった私も悪かったし...」
ママ友がそう言い、また私が謝り...を何度か繰り返し、その日は早々にお暇しました。
帰宅直後、当時はガラケーでしたがメールで再度謝罪を伝えましたが返信はありませんでした。
返信がないことに不安を覚えつつ、うちの子が一方的に悪いわけでもないけれど、壊れてしまったことは事実。
でも新婚旅行の思い出の品と同じものは手に入らないし、何か別の形で謝罪の気持ちを伝えるしか方法はありません。
せめて明日ママ友にもう一度直接謝り、何かできることはないか相談しよう、と考えながら眠りにつきました。
するとその夜の深夜1時過ぎ、ママ友からメールの着信。
「あれから折れた部分を眺めていたら悲しくてまだ涙が止まらないの。弁償してくれない?」
まさかの返事でした。
結局、完全に納得したわけではないけれど、損害保険に入っていたのでママ友の指定した金額で弁償することに。
その後もそのママ友は何事もなかったかのように接してきましたが、どうしても彼女に対する不信感が拭えませんでした。
私の心の狭さも反省すべき点なのですが、私からそのママ友とは距離を置き疎遠になっていきました。
16年以上たった今でも夜中のメール着信があるとドキッとします。
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