<この体験記を書いた人>
ペンネーム:ウジさん
性別:男性
年齢:61
プロフィール:地方都市で再任用公務員をしている61歳男性です。霊感はないほうですが、不可思議な体験がないわけではありません。
いまは社会人として独立している私の子どもたちが2人とも小学生の頃ですので、16年ほど前の話になります。
私の住む地区の子ども会では、夏休みに泊まりがけでレクリエーションをする習慣がありました。
その年は、幹事の方の知り合いが管理人をしているキャンプ場へ行くことになりました。
「さあ、お楽しみの肝試しの始まりだ!」
バーベキューで夕飯を済ませ、すっかり暗闇に沈む森を前にして係のお父さん(30代後半)が声を上げました。
いまから森の中の遊歩道を2、3人ずつ1組で一周してくるのです。
「さて、出発前に管理人のおじさんからお話があるよ」
管理人さん(50代)に雰囲気を盛り上げるための話をお願いしました。
「じゃあ皆さん、注意してもらうことがあるのでよく聞いてくださいね...」
落ち着いた語り口で管理人さんが話した内容はこうです。
この辺の森は「振り返らずの森」と呼ばれ、捨てられた子どもが夜な夜な霊となってさまよっている。
夜に森を歩いているといつの間にか霊が後ろからついてくることがあり、声をかけられて振り返ってしまうと、そのまま連れ去られてしまう、というもの。
「誰も居ないはずの後ろに気配を感じたら、決して振り返ってはいけませんよ」
雰囲気たっぷりに結ばれた怪談に、子どもたちは押し黙ってしまいました。
「よーし、それじゃあ、くじ引きで順番を決めたらいよいよスタートだぞ」
係のお父さんの声を聞きながら、残りの保護者はこっそりとキャンプ場を後にします。
所定の隠れ場所に潜み、脅かし役として子どもたちを待つのです。
「じゃあ、僕は振り返らずの霊の役をやろうかな」
脅かし役の1人のAさん(30代後半)が言い出しました。
「そりゃあいい! 子どもたち、怖くて飛び上がるよ、きっと」
Aさんは、場所を定めずにコース上を移動しながら、こっそりと子どもたちの後ろにつく、というびっくりを仕掛けることになりました。
こうして肝試しがスタート。
私が暗闇に潜んでいると、子どもたちが歩く音が聞こえてきました。
そちらを見ると、4人の人影が見えます。
「やってるな」
思わず声を殺して笑ってしまいました。
子どものグループは多くても3人まで。
あれは「振り返らずの霊役」のAさんがついているのに違いありません。
余計な手出しはしないでおこうと、目の前を過ぎていく4つの影を見送りました。
「ん? Aさんって、あんなに小さかったっけ?」
見送ってから違和感を感じました。
4つの影の身長はほぼ同じだったのです。
全部子ども? いや暗いからそう見えただけかな? と思っていました。
肝試しを終えて、子どもたちは興奮した様子で武勇伝を語りながらロッジへ戻ってきます。
「俺、後ろから声かけられた!」
「私も! でも、話を聞いてたから振り返んなかったけどね!」
などと数人の子どもたちが盛り上がっていました。
それを聞いたAさんが、申し訳無さそうに他の保護者に謝ってきました。
「すみませんねえ、どなたが代わってくれたんですか?」
「え? Aさんでしょ?」
そう聞き返す私たちに衝撃の返事が...。
「いやあ、肝試しが始まってすぐ、うちの娘が行かないってぐずってるのに出くわしちゃって...なだめてるうちにもう終わっちゃって...」
「え! でも4人で歩いてるグループがいくつかありましたよ」
「私も見ました、4人組。てっきりAさんだと...」
コース上に潜んでいた脅かし役の保護者は、誰もAさんが参加していなかったことは知りませんでした。
「え? え? じゃあ、あのとき目の前を歩いてた4人目って⁉」
え、管理人さん、もしやさっきの話って...背筋が凍りついた出来事でした。
人気記事:一人暮らしを始めた長女へ。食べ物を詰めながら思い出す「30年前の母と自分」《しまえもん》
人気記事:《漫画》22時過ぎに「既読にならない方は賛成でいいですね」!? PTAのグループトークにモヤモヤ<前編>
人気記事:《漫画》「命を削ってでも孫の面倒を見る!」弟の妻が亡くなり80歳両親が「子育て」に奮闘!?<前編>
- ※
- 健康法や医療制度、介護制度、金融制度等を参考にされる場合は、必ず事前に公的機関による最新の情報をご確認ください。
- ※
- 記事に使用している画像はイメージです。