20代で結婚、2男1女を授かり、主婦として暮らしてきた中道あんさん。でも50代になると、夫との別居、女性としての身体の変化、母の介護...と、立て続けに「人生の転機」が訪れます。そんな激動の中で見つけた「50代からの人生を前向きに過ごすためのヒント」。
一人暮らしをする娘の部屋を訪ねた中道さん。作り置きをするなどやりくりを頑張っている様子を見て「ひとりだと大変じゃない?」と聞いてみると...
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先日、ひとり暮らしの娘の家に用事があっていきました。
ワンルームの小さな部屋は整えられ、ベランダでは洗濯物がひらひらと風に揺れていました。
ひとり暮らしでも狭いであろうキッチンは調理器具などがコンパクトにまとめられていました。
「ちゃんとしてるんだね」というと
「そうやで。今朝は来週分のお弁当作り置きを作っていた」といって冷蔵庫の中を見せてくれました。
びっしりと食材が詰まっており、これで1週間買い物に行かなくても済むんだという。
まるでベテランの主婦のようです。
入社2年目では、まだそんなにお給料もいただいてない様子。
女性とあって駅近、セキュリティ万全のマンションの家賃は決して安くはありません。
毎朝お弁当を作り、水筒にお茶いれて出勤。
帰宅後は一品メインディッシュを作り、あとはお味噌汁やサラダというおひとりさまの食卓。
今だから言えますが、私のOL時代は実家暮らしでしたが、お給料だけでは足らずに、会社帰りにアルバイトをしていました。
いまでいう副業です。
いくらお金があっても足りなかったのに、娘はしっかり貯金もしているといいます。
バブル時代に浮かれていた私とは違う、娘の自活力に感心しています。
「ひとりだと大変じゃない? 転属とかあれば通勤時間も長くなるでしょ?」と聞いてみると、
「そうだね~。でも、これだけは決まっている。たとえ、実家の近くに勤務することになっても、ひとり暮らしはやめないわ」
「え? どうして? 便利だし家の方が広いよ」
「だって自由だから」。
もう少し詳しく聞いてみようと「家もかなり自由だと思うけれど、どうして?」と食い下がってみました。
「ママの料理はとても美味しい。けれど、今それを食べたい気分じゃない時だってある。ひとり暮らしなら、自分で好きなものを食べられる自由があるから」と平然と答えが返ってきました。
狭くても、自分の思い通りに暮らせることは、いくら実家暮らしが便利でも、その比じゃないということです。
これには頭をハンマーでとは言いませんがガーンとなぐられた気分でした。
あの努力はなんだったのか...。
これまで、家族のために喜ぶものを、食事の時間が楽しくなるようにとお料理を並べてきたつもりです。
仕事を終えると大急ぎで帰宅して、そのままキッチンに立ち支度をしていました。
食の好みが偏っていた娘に合わせ、嫌いな食材を避けて工夫して作っていたつもりです。
そうして、育てた娘がInstagramの人気料理インスタグラマーのレシピで様々なおかずに挑戦しているのだとか。
なんという変わりようでしょうか。
しかも、家では食べることがなかったインゲン豆のごま和えも作ったというではありませんか。
今思うと、子供の胃袋を掴むことで、いい母親像を描き、好かれようとしていたのではないかと思います。
本音をいえば料理を作って欲しいのは私のほうでした。
それでも、いくら疲れていても「作って」とは言えませんでした。
それはやはり、いい顔をしたいからだったのかもしれません。
表面上には出ない、根底にはいつまでも手元に置いておきたいという、見えない依存心があったのではないかと思います。
家族のために居心地のいい時間を作ることは悪いことではありません。
でも自分を犠牲にしていませんか。
家族にいい顔をしていませんか。
自分の価値はそこにしかないと思っていませんか。
今は時間もたっぷりとあって、イライラしながら夕飯作りをすることはありません。
毎日余裕をもって作れる環境ですが夕飯は作ったり作らなかったり、それでも同居の息子からクレームをつけられたことは一度もありません。
夕飯づくりは妻や母の仕事と決めつけていたのは自分自身だったのかもしれませんね。
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