『老いることの驚きと幸せ これから年を重ねていくあなたへ、88歳の作家からの手紙』 (ソフィ・バーナム (著), 柴田 幸裕 (翻訳) /アスコム)第2回【全5回】


『老いることの驚きと幸せ これから年を重ねていくあなたへ、88歳の作家からの手紙』(アスコム)は、59歳の女性が抱く「老いへの不安」に、88歳の女性である著者が温かく答える手紙集です。目次には「老いるのがいやでたまらない」「母と娘の関係」など、大人の女性なら誰もが共感するリアルなテーマが並びます。年齢を重ねる葛藤や変化にユーモアを交えて率直に触れつつ、その先にある「人生を愉しむ自由」を優しく教えてくれます。今回はこの本の中から、これからの人生にワクワクした希望をくれるメッセージをご紹介します。

※本記事はソフィ・バーナム (著), 柴田 幸裕 (翻訳) による書籍『老いることの驚きと幸せ これから年を重ねていくあなたへ、88歳の作家からの手紙』から一部抜粋・編集しました。

「片方の言い分だけでは、事は半分しかわからない」

――アイスランドの英雄譚『グレティルのサガ』より(訳注:松谷健二訳『中世文学集Ⅲ エッダ グレティルのサガ』、ちくま文庫、1986年より引用)

幼い頃には、25歳なんてもう立派に年寄りだと、本気で信じていました。その先には何ひとつ特別な出来事など起こらず、ただ同じ毎日が繰り返されるだけ。ハッとすることもわくわくすることもなく、退屈で代わり映えしない日々をとぼとぼと歩み続ける。そう思っていたのです。23歳で結婚したとき、5歳の甥がわたしの手を取り、まるで手相を吟味するかのように、思案顔であちこち眺めたかと思うと、しんみりと呟きました。「お嫁にいっちゃったら、もうおばあちゃんなんだね」

わたし自身もそんなふうに感じていました。結婚したら、わたしは"年増"扱いされるものだと。そんな奇妙な感覚はわたしだけではなかったようで、その証拠に、ベス・ヘンリーのとある戯曲で30歳の女性は"年増"と呼ばれています。30歳なのにですよ!

確かにわたしたちの世代は若い頃、他人を年齢で揶揄する言葉をたくさん口にしていました。26歳の独身者は「オールドミス」、45歳で未婚なら「負け犬の大年増」といった具合です。けれどわたしは45歳のとき、世の中が急に深みのあるものに感じられて驚いたのを覚えています。

そして今、わたしは85歳になりました。老いという名のぬかるみに足をとられながらよろよろと歩いています。ねえ、エレノア、年を取るってどんな感じなのか、わたしからあなたに伝えられることって、何があるでしょうね?

あなたの想像とは違うでしょうね。わたしはこれまでにないほど愉しく人生を送っているところです。年を取るってどんな感じなのか、それをあなたに一番手っ取り早く伝えるには、わたし自身の日々の暮らしを書き綴ってみるのがいいのかもしれません。もちろん、これはあくまでわたしひとりの人生にすぎないとわかっています。

人生は人それぞれで、どの人の人生も最期の瞬間まで実に素晴らしいものです。もし、わたしの聞いている話が本当なら、人生の最期は、別の何かが始まる瞬間なのかもしれません。それに、こんな年齢になってもね、わたしったらまだまだ現実逃避もすれば、腹も立てるし、イライラしたり、声を荒らげたりもします。今も人生を勉強している真っ最中です――信じられます? 人生の勉強はとっくに済ませていても良さそうな年齢なのに、と思いません?

この手紙を実際にあなたに送るかどうか、決めていません。たぶんこれは何より、自分のために書いているのだと思います。というのも、作家のE・M・フォースターの紹介しているこんな言葉がわたしの心に添うからです――「自分の考えなんて、言葉にしてみなければわかるはずがない」

どうか希望を持っていてください、エレノア。年を取るのも、案外悪くないものですよ。

愛をこめて
ソフィ