タピオカ屋はどこに行ったのか。3回目の「タピオカブーム」が前回までと異なっていた点

モノからコトへの変化

直近のブームが前回までと異なるのは、インスタグラムが重要なキーワードとなったことです。新語・流行語大賞を見ると「タピる」がランクインした前々年の2017年に「インスタ映え」が年間大賞に選ばれています。

若いSNSユーザーたちはインスタ映えするネタを探していました。その下地がある状況でタピオカミルクティが「映えフード」としてマッチして、喉を潤すために買われていたタピオカミルクティが、写真に撮って投稿する若者のアイテムとして買われるようになったわけです。

飲料としてではなく撮影の小物としてタピオカミルクティが流行った現象は「コト消費」の表れといえます。コト消費は、体験の価値を重視して商品を購入する消費行動のことで
す。

従来の消費はモノの機能を重視していましたが、多機能で高機能なモノがひと通り世の中に行き渡った結果、モノを通じた形ある価値よりも、モノを持ったり使ったりすることを通じた形のない価値(コト)が重視されるようになりました。これは事業を考えるうえで押さえておきたい社会変化の1つです。

社会変化という点で見ると、ブームは短期的な社会変化といえます。ブームよりも息が長いのがトレンドで、さらに長くなると変化が常識として定着します。環境問題はブームからトレンドになり、常識になった一例といえるでしょう。

今でこそ世界全体が環境に配慮することを常識としていますが、過去にはロハス、エコ、エシカルといった短いブームを繰り返し、SDGs時代になってようやく広く浸透したわけです。

タピオカ屋はどこに行ったのか?

何がブームになるかは分かりません。ブームがどれくらい大きくなり、どれくらい続くかも分かりません。

これを事業機会とする場合は、どんな商品にも寿命(プロダクトライフサイクル)があることを踏まえておくことが大事です。また、一過性のブームで終わるかもしれないリスクを考えて、いつでも撤退できるようにすることがリスク対策になります。

そのためには、少資金、省スペースで開店(開業)するなど、開業にかかるコスト(イニシャルコスト)を安く抑えることがポイントです。ブームが長続きするようなら追加投資をし、冷めつつあると感じたら次の事業機会を探すといった柔軟性と俊敏性を持っておくことで、時代の変化に乗ることができるのです。

さて、一時期は街中に溢れていたタピオカ屋ですが、今も残っているのはGong cha やBull Puluなど一部のチェーンだけです。

消えたタピオカ屋がどこに行ったかというと、ある店は唐揚げ店になり、ある店はマリトッツォの店に変わり、ある店は焼き芋の店になりました。

イニシャルコストを徹底的に抑えることで短期で利益を回収し、ブームが去ったらすぐに見切りを付けて撤退する。

この変わり身の早さを活かして、消えたタピオカ屋は次のブームに乗り換え、新たな収益を生み出しているのです。

タピオカ屋はどこに行ったのか。3回目の「タピオカブーム」が前回までと異なっていた点 tapioka_p22.jpg

 

菅原由一
1975年三重県生まれ。SMG税理士事務所・代表税理士。人よりも3倍の勉強量で税理士試験に打ち込み、20代で税理士資格を取得。現在は、東京・名古屋・大阪・三重に拠点を置き、中小企業の財務コンサルタントとして活躍。銀行が絶賛する独自資料の作成で赤字会社も含め融資実行率は95%以上。顧問先の黒字企業割合は 85%を実現し、全国平均30%を圧倒的に凌ぐ。これまでに全国各地で 1,000 本以上の講演やセミナー講師を務め、1万名超の経営者が受講し、大手企業からの講演依頼が絶えない。YouTubeチャンネル『脱・税理士スガワラくん』は開設わずか1年で登録者数38万人を突破し、TV、専門誌、新聞、各メディアで取り上げられ注目を集めている。「努力と結果は比例する!」を座右の銘として、YouTube、ブログ、SNSで経営のノウハウを毎日配信している。

※本記事は菅原由一 著の書籍『タピオカ屋はどこへいったのか? 商売の始め方と儲け方がわかるビジネスのカラクリ』(KADOKAWA)から一部抜粋・編集しました。

この記事に関連する「暮らし」のキーワード

PAGE TOP