数万匹の真鯛の注文がキャンセルに! コロナ禍の「危機」を救った画期的な「アイデア」

「さばき方教室」で不安をケアして大ヒットへ

そんな中、橋本さんと「ポケットマルシェ」が実施したのが、コロナゼロにかけて真鯛を5670人の消費者に届けようという「5670プロジェクト」です。

ただ、大きな真鯛が丸ごと送られてきても一般家庭でさばくのはハードルが高い。そこでオンラインでの「さばき方教室」を実施するというアイデアが生まれました。

「人が食すために育てあげた 特大真鯛(オンライン教室付き)」という商品名で、内臓とウロコ処理をしたものを4298円(税込)で販売しました。

当初、橋本さん本人も尾頭付きの真鯛が、そのままでどんどん売れるとは思っていませんでした。

しかしプロジェクトが始まった途端すさまじい反響があり、真鯛は飛ぶように売れていきました。わずか2カ月で目標を達成。その後も売れ続け、結果、6300匹の真鯛が4300家族に届いたのです。

緊急事態宣言が発出されステイホームを余儀なくされた中、多くの人が家庭内でできる体験を求めていたタイミングにぴったりだったこともあったでしょう。

また、購入する側も単に応援だけでなく、「結婚祝いに真鯛を贈りたい」「子どもの入学式が中止になったので、せめて豪勢な鯛でお祝いしたい」などというニーズがあったこともわかりました。

真鯛を購入したことで、久々に包丁を持って魚をさばいたという人も多かったようです。家族でさばき方教室に参加したことで、久しぶりに一緒に食事をしたという家庭もあったとのこと。

「5670プロジェクト」が素晴らしいのは、単に真鯛が売れたにとどまらない点。それは、 さばき方教室を実施したことです。

オンラインとはいえ、橋本さんは数多くのお客さんと直接会話をすることができました。それによって、また友栄水産からまた買いたい、というファンが増えたに違いありません。

また数多くの家庭で包丁を持って魚をさばける人が増えたということは、日本における今後の魚文化を考えても意義深いものになりました。

 

川上徹也
湘南ストーリーブランディング研究所代表。大阪大学人間科学部卒業後、大手広告代理店勤務を経て独立。数多くの企業の広告制作に携わる。東京コピーライターズクラブ(TCC)新人賞、フジサンケイグループ広告大賞制作者賞、広告電通賞、ACC 賞など受賞歴多数。現在は、広告制作にとどまらず、さまざまな企業・団体・自治体などのブランディングや研修のサポー ト、広告・広報アドバイザーなどもつとめる。著書は『物を売るバカ』『1行バカ売れ』(いずれも角川新書)、『キャッチコピー力の基本』(日本実業出版社)、『江戸式マーケ』(文藝春秋)、『売れないものを売る方法? そんなものがほんとにあるなら教えてください!』(SB 新書)など多数。

※本記事は川上徹也著の書籍『高くてもバカ売れ! なんで? インフレ時代でも売れる7の鉄則』(SBクリエイティブ)から一部抜粋・編集しました。
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