【ブギウギ】初回放送につながる演出にゾクッ...舞台に戻ったヒロインが歌う「東京ブギウギ」がもたらした感動

【先週】娘の誕生、愛助の死。残酷すぎる運命を演じきった女優・趣里の「無言の演技」

毎日の生活にドキドキやわくわく、そしてホロリなど様々な感情を届けてくれるNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)。毎日が発見ネットではエンタメライターの田幸和歌子さんに、楽しみ方や豆知識を語っていただく連載をお届けしています。今週は「東京ブギウギ」について。あなたはどのように観ましたか?

※本記事にはネタバレが含まれています。

【ブギウギ】初回放送につながる演出にゾクッ...舞台に戻ったヒロインが歌う「東京ブギウギ」がもたらした感動 pixta_95890407_M.jpg

「ドキドキじゃない、ズキズキなんだよ。ズキズキワクワク!」

羽鳥(草彅剛)が満面の笑顔で興奮ぎみにスズ子(趣里)に語りかける。ついにやってきた、「東京ブギウギ」の誕生だ。趣里主演のNHK連続テレビ小説(通称「朝ドラ」)『ブギウギ』、第19週のサブタイトルはズバリ、「東京ブギウギ」。

最愛の愛助の死を乗り越え、もう一度歌うことを決意するスズ子は、はじめてスズ子のほうから羽鳥善一(草彅剛)に新曲を作ってほしいと依頼する。

「いまどんなものを歌えば彼女が最高に輝いてくれるのか」

大喜びで引き受けたからには最高のものを届けたい羽鳥は、これまでのスズ子とのやりとりを思い出しながら生みの苦しみに悩む。移動中の電車車内の乗客の生気のない顔を眺めながら、再起しなければならないのはスズ子だけじゃないんだと実感した羽鳥の頭の中で何かがひらめく。電車を降りあわてて飛び込んだカフェで紙ナプキンをもらうとそこに音符を書き込んでいく。

その足でスズ子の家に駆けつけメロディを書き込んだ紙ナプキンを手渡し、これは日本の復興ソングでもあるんだと力説し去っていく。紙ナプキンには「東京ブギウギ」と書かれていた。

「東京ブギウギ」の完成に向け作業はすすむ。ブギのメロディは、軽快なリズムにのって笑顔で歌って踊るスズ子にぴったりだと興奮ぎみの羽鳥。レコードを出すにあたり、山下(近藤芳正)にアイデアがあるという。米兵をまねき、その空気感の中で歌ってみるのはどうかという、ある種のライブ感を取り入れるような仰天のアイデアだった。羽鳥もこれに大賛成、前代未聞のレコーディングがはじまる。

羽鳥が指揮棒を振り上げる。そこに流れてきたのは「東京ブギウギ」ではなく、主題歌「ハッピーブギ」を弦楽器中心にしたもの。そこにスズ子が歌う場面が重ねられるが、まさかの歌声なし、米兵たちの「オーマイガー!」「ワーオ、ディスイズ、リアルブギウギ!」といった米兵たちの驚嘆と興奮の声とリアクションが重ねられるという仰天の演出でそのすごさを表現してきた。「ラッパと娘」「大空の弟」「ジャズカルメン」など、これまでスズ子の歌は、フルサイズのパフォーマンスでしっかり見せるという演出で視聴者を引きつけてきた。しかしここで逆にスズ子と羽鳥の「東京ブギウギ」をまだ視聴者に明かさないという演出には驚いた。

高まる期待の中むかえた金曜放送回。

ぐずる愛子に困る稽古場に、ふらっとりつ子(菊地凛子)が登場、周囲を叱咤しつつ公演中の愛子の面倒を引き受けるという。もはやお約束のようになってきた感もあるりつ子の登場だが、今回もまた頼れる存在だ。

いよいよ本番。楽屋には愛子とりつ子、そこに羽鳥が迎えにくる。
「さあ、いこう!、スリーツーワンゼロ!」

初回冒頭に流されたシーンがここで重ね合わされる。そしてついに届けられた、「東京ブギウギ」。これまでにないリズムとメロディでありながらスズ子と羽鳥の集大成のようなこの楽曲と満面の笑顔で歌い踊るスズ子が、日本中に笑顔を取り戻していく。

スズ子が愛助の死を乗り越え、再び歌に向かい合うきっかけとして、愛助の母・トミ(小雪)の来訪があった。「愛助と同じ顔して寝てるわ」と孫娘に愛情深いまなざしを向けるトミ。愛子を引き取らせてほしいというトミの申し出を断るスズ子。そんなスズ子に、「また、歌うてくださいね」とトミが言う。スズ子の歌を愛助も天国で楽しみにしてる。そしてトミ自身も実はスズ子の歌のファンだったと明かす。

「あくまで歌やで」
と、りつ子に続くツンデレぶりをみせるトミ。和解といっていいのだろうか。とはいえ、
「あんさんとワテは、おんなじ男をとことん愛した仲や」
というセリフには少し行き過ぎ感をおぼえたが。

そして、作品中で生死不明のような状態で、ある程度の数の視聴者はもしかしたら忘れていたかもしれないスズ子の父・梅吉(柳葉敏郎)が、なんなら制作陣すら忘れていたのではないかと思うようなタイミングで、思い切り元気な姿で唐突に再登場する。

写真館を営むという梅吉は、スズ子の写真を撮ろうと提案する。片手に愛子、もう片手には愛助の遺影でにっこり笑うスズ子。一度もかなうことのなかった家族スリーショットというじんわりくる演出。しかもその後ろには両手を広げて笑う母・ツヤの遺影も写り込むというところに泣かせられた。

それにしてもこのところは愛助との最後の日々などじっくりと回数をかけて描く展開が多かった印象だが、この中盤のクライマックスで、逆にたくさんの要素を贅沢に盛り込んできた。

「東京ブギウギ」の誕生を経て、スズ子の周囲はどう変化していくのだろうか。

文/田幸和歌子
 

田幸和歌子(たこう・わかこ)
1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経て、フリーランスのライターに。ドラマコラムをweb媒体などで執筆するほか、週刊誌や月刊誌、夕刊紙などで医療、芸能、教育関係の取材や著名人インタビューなどを行う。Yahoo!のエンタメ公式コメンテーター。著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)など。

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