半導体+半導体+太陽光=発電⁉ 太陽電池の仕組み/すごい技術

半導体+半導体+太陽光=発電⁉ 太陽電池の仕組み/すごい技術 pixta_38595097_S.jpg私たちは毎日身のまわりの「便利なモノ」のおかげで快適に暮らしています。でもそれらがどういう仕組みなのか、よく知らないままにお付き合いしていませんか?
身近なモノに秘められた"感動もの"の技術を、書籍『身のまわりのすごい技術大百科』がわかりやすく解説します!

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●太陽電池

自然エネルギー発電のホープ・太陽電池。さまざまな種類が開発されているが、それぞれどう違うのだろうか。

地球に降り注ぐ太陽光のエネルギーは、たった1時間で地球全体の使用エネルギーの約1年分に匹敵(ひってき)するという。このエネルギーを有効利用できれば、従来の発電方法による資源の枯渇(こかつ)や地球温暖化、放射能事故の危険など、さまざまなエネルギー問題が解決される。その有効利用の代表が太陽電池による発電、つまり太陽光発電である。

太陽電池は電卓用の内蔵電池として以前からなじみが深い。ケイ素(シリコン)の結晶に、少しだけリンを加えたn型半導体と、少しだけホウ素を加えたp型半導体の2種の半導体を貼り合わせてできている。この半導体に光を当てると、光のエネルギーによって境界面に電子と正孔(せいこう)が発生する。電子はn型半導体のほうに、正孔はp型半導体のほうに向かって移動する。これが電圧を生むのだ。

簡単にいえば、太陽光のエネルギーで引き離された電子と正孔が再びくっつこうとする力で発電するのである。電気を与えて光る発光ダイオードの逆現象とも解釈できる。

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以上のような太陽電池をシリコン系太陽電池という。ケイ素が主たる素材だからだ。シリコン系はエネルギー変換効率がよく、25パーセント近くになるものも開発されている。しかし、生産コストが高いため、それに代替するさまざまな太陽電池が開発されている。化合物系有機系の太陽電池だ。これらはさらに細かく分類されるが、一つを除いてほとんどはシリコン系太陽電池と同様のしくみである。除いた一つとは色素増感型太陽電池と呼ばれるもので、その動作原理は、植物の「光合成」によく似ている。

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発電用に利用されている太陽電池のほとんどはシリコン系である。他のものは変換効率が1割に満たないものが多く、将来有望とされているものの、普及までには至っていない。現在、太陽電池の設置には補助金が付き、発電電力の買い取り制度もある。家の屋根に取り付けられた太陽電池はスマート社会とも呼ばれるエネルギー自給社会の重要なアイテムだ。

 

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涌井良幸(わくい・よしゆき)

1950年、東京都生まれ。東京教育大学(現・筑波大学)数学科を卒業後、千葉県立高等学校の教職に就く。教職退職後の現在は著作活動に専念している。貞美の実兄。


涌井貞美(わくいさだみ)

1952年、東京都生まれ。東京大学理学系研究科修士課程修了後、富士通に就職。その後、神奈川県立高等学校教員を経て、サイエンスライターとして独立。現在は書籍や雑誌の執筆を中心に活動している。良幸の実弟。


 

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『身のまわりのすごい技術大百科』

(涌井良幸・涌井貞美/KADOKAWA)

身近なモノに秘められた“感動もの”の技術、一挙解説! 身近な文具から、便利すぎるハイテク機器まで…あれもこれも、すべて「科学技術」の結晶なのです。日ごろよく使う「モノ」の“すごい技術”を図解でわかりやすく解説します。

この記事は書籍『身のまわりのすごい技術大百科』からの抜粋です

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