仕事や人間関係がうまくいかない...「もしかして自分は大人の発達障害なのでは?」と悩む人が増えています。しかし、その解決策を具体的に示した本は少ないのが現状です。
本書『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』は発達障害の当事者が、試行錯誤と度重なる失敗の末に身につけた「本当に役立つ」ライフハック集。うつでもコミュ障でも、必ず社会で生き延びていける術を教えます!
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◆「メモができない」 僕らのための手帳術
ちょっとした「短期タスク」を忘れてしまう人々へ
「住民税を払う」「ガス代を払い込む」「メールを返信する」。こういう「短期タスク」を処理することが、我々には存外できません。「特に明確な理由はないが住民税を1年払い込まずにいたらものすごい延滞金が発生した」みたいな悲しいエピソードを持っている方も多いでしょう。
僕もです。こういった短期タスクの管理はとても難しい。何せ細かい。いっぱいある。でも、やらないと何らかの形で怒られが発生します。生活をきちんとやれない皆さんに社会が牙をむきます。役所の牙は本当に痛い。
僕も、市役所で「発達障害があって住民税の支払いが遅れたんですが......。いや特に明確な理由はないんですけど、ADHDにありがちな......」というお話をしてみたことがありますが、「それは大変お気の毒ですが」という枕をつけて、結局延滞金も取られました。ご対応ありがとうございました。次は遅れずに払います。
そういうわけで、困ったときの3原則。とりあえず情報の入力先を「集約化(ぶっこみ)」しましょう。「用途ごとに複数のツールを使い分ける」というのはデキる人のやり方です。「必要な物はとりあえず一箇所に集約する」をひたすら繰り返して言っていますが、最も重要な基本戦略です。
そのためのツールとして、おすすめは紙の手帳です。仕事用の手帳とプライベート用の手帳を分けるみたいなことはおすすめしません。「あれ?あの締め切り日いつだったっけ?」みたいな状況が発生した場合、探す場所は一箇所以上に増やすべきではありません。
僕にとって手帳は、「タスク管理の道具」と「メモ帳」を兼ねた情報記録媒体です。一番大事なのはスーツの胸ポケットに無理なく収納できること(これも「一手アクセス」ですね)。「必要なときにかばんから手帳を取り出す」というタスクは、僕には実行不可能です。「後でメモしよう」と思った結果、全ては忘却の淵に流れ落ち、ハチャメチャな怒られが発生します。
そして、メモ欄が大量にあることも必須です。手帳の前半はスケジュール欄、後半はたっぷりのメモ欄というシンプルな構成が理想です。業務に必要な情報は絶対にこの手帳の中にある。そういう状態が大切になります。
一時は打ち合わせの際などに大判のノートを使っていたこともあるのですが、これはもう明確に「書いても二度と見返さないし、どこかに消える」という状態になったのでやめました。情報記録媒体が2個になった時点で僕の脳は完全にフロウするようです。しかも、使用頻度が高くないのでかばんの中に入れっぱなしになり、存在を忘れます。
そういうわけで、結論としてはパイロットのパーソナルダイアリー「パーソナル2」という手帳が僕のベストです。胸ポケットに無理なく入る薄さ、全体の7割以上がメモ欄というコンパクトさに反比例する情報入力量。僕にとっては完璧な1冊です。
手帳はメモ欄が切れたら何回も買い足す
僕はこの手帳を大体3~4カ月に1冊使い切ってしまいます。ですから、年度の初めに3~4冊買い溜めることになります。買い溜めたけれど、それを紛失してまた買う羽目になることもありますが、500円程度という安さなので気になりません。都度買いに行けばいいだろ、と思われたでしょうが、僕は非常に曖昧な理由で必要な物を買いに行けないことがよくあるので、とりあえず紛失リスクを承知で買っておいて損はないのです。いや、損はしていますが。
そして、使い終わった手帳は、明らかにその中の情報が不要になったと判断されるまでかばんの中に入れっぱなしです。年度の終わりには3冊ほどの手帳がかばんに入っていることになりますが、特に困るサイズではありません。
現在使っている1冊を、僕はいついかなるときも手放しません。皆さんも、財布とスマートフォンは常に手放さないと思いますが、ここに僕の場合は「手帳」が加わります。これは、実はそう難しくありません。日常の必須アイテムが2個から3個に増えるだけです。ジーンズのお尻のポケットにねじ込んでいても問題ないタフなやつです。プライベートも仕事も1冊の手帳で全て乗り切ります。
ちなみに、僕は1冊のノートを使い切ったことが大学生になるまで一度もありませんでした。なお、消しゴムを1個使い切ったことは人生でいまだに一度もありません。とにかく次から次へと紛失するのです。しかも、必要なときに必要なノートが手元にあることなんてほとんどあり得ませんでした。結果として、大量のノートに情報がバラバラに分散し、ノートを見返すなんていうことは常に不可能だったわけです。
大学受験までの勉強で、自分のノートを見返した記憶は一度もありません。ノートは消滅するものです。そういうわけで、僕は「ノートを取らない」という方針で高校までを乗り切りました。