小学校3年生で教室にいられなったぼく/岩野響『15歳のコーヒー屋さん』(3)

小学校3年生で教室にいられなったぼく/岩野響『15歳のコーヒー屋さん』(3) 3.jpg10歳で発達障害のひとつ、アスペルガー症候群と診断された岩野響さん。中学校に通えなくなったのをきっかけに、あえて進学しない道を選んだ15歳の「生きる道探し」とは?
著書『15歳のコーヒー屋さん』を通じて、今話題のコーヒー焙煎士・岩野響さんの言葉に耳を傾けてみましょう。

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前の記事「「自分は障害者じゃない」と言い続けていた中学時代/岩野響『15歳のコーヒー屋さん』(2)」はこちら。

 

小さい頃の記憶は、じつはあいまいです

ここからはぼくの幼少期の話です。ただ、ぼくにはあまり記憶がないので、両親の言葉も借りてお話ししたいと思います。

ぼくは3歳から保育園に通いはじめました。正直、その頃の記憶はほとんどありませんが、とにかく先生に怒られてばかりだったのを覚えています。記憶障害があるせいか、人の顔と名前を覚えるのがとても苦手で、保育園の頃も、小学校に入ってからも、友達の名前を覚えることがほとんどできませんでした。

「仲よくしているのにぜんぜん名前を覚えてくれない」と相手を泣かしてしまうという申し訳ない経験もあります。でも、どうしても、覚えられないのです。

当時のぼくは、洗剤やシャンプーのボトルが大好きで、空き容器をコレクションしていたそうです。
父が最初に買ってくれたプレゼントも、旅行用のシャンプー&リンスセット。いわゆる男の子が好きそうなレンジャー系のおもちゃには見向きもしませんでした。

次に夢中になったのは携帯電話。各社それぞれの機種の形と名前を全部覚えていました。誰かが携帯を使っているのを見ると、そのメーカーと機種名を言い当てたりしました。両親の友人から使わなくなった携帯をもらってはコレクションして、出かけるときもすべて持ち歩くほど夢中でした。

その頃、行きたいところといえば、携帯ショップでした。遊園地や動物園などのレジャー施設にはまったく興味を示さなかったそうです。

15歳になったいまも、自宅の住所や電話番号がわからなくなることがあります。
他にも覚えられないことはたくさんありますが、コーヒーのことは覚えられます。好きなことにはとことんのめり込み、記憶もできるのに、興味のないことは覚えられないのは、小さい頃から変わらない特性なのかもしれません。

 

小学校3年生で教室にいられなくなる

小学校に入学し、低学年の頃は特に問題もなく学校に通っていたらしいぼくが、3年生になって担任が代わり、授業中に静かに席につけなくなってしまいました。
そのクラスはとてもにぎやかでした。元気がいいというよりは、授業中にみんなが好きなことをしているような状態でした。

そんな雰囲気の中で、ぼくも授業中に落ち着いて座っていることができなくなり、席を立って教室内をウロウロしたり、教室の床にゴロゴロと寝そべったりしていました。
なんでそんなことをしたのか理由はうまく言えませんが、とにかくまわりがうるさくて、じっとしていられなくなったんですね。体が勝手に動いてしまう感じで、教室を飛び出してしまうこともありました。

小学生になって骨董(こっとう)品や盆栽に興味をもつようになったのですが、小学生にして美術書を読んでいるようなぼくと、当然ながら話の合う友達はいるはずもなく、とにかく学校はつまらなかったです。それもあって、あまり覚えていないのだと思います。

 
撮影/木村直軌

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岩野 響(いわの・ひびき)

2002年生まれ。群馬県桐生市在住。10歳で発達障害のひとつ、アスペルガー症候群と診断される。中学生で学校に行けなくなったのをきっかけに、あえて高校に進学しない道を選び、料理やコーヒー焙煎、写真など、さまざまな「できること」を追求していく。2017年4月、自宅敷地内に「HORIZON LABO」をオープン。幼い頃から調味料を替えたのがわかるほどの鋭い味覚、嗅覚を生かし、自ら焙煎したコーヒー豆の販売を行ったところ、そのコーヒーの味わいや生き方が全国で話題となる(現在、直販は休止)。公式ホームページはこちら「HORIZON LABO」コーヒー豆の通販はこちらで行っています。

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『15歳のコーヒー屋さん』

(岩野 響/KADOKAWA)

現在、15歳のコーヒー焙煎士として、メディアで注目されている岩野響さん。10歳で発達障害のひとつ、アスペルガー症候群と診断され、中学校に通えなくなったのをきっかけに、あえて進学せずコーヒー焙煎士の道を選びました。ご両親のインタビューとともに、精神科医・星野仁彦先生の解説も掲載。

 
この記事は書籍『15歳のコーヒー屋さん』からの抜粋です

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