「できない...」と自責するのは時間の無駄! 自分‟以外"のものを変えて解決する/発達障害の仕事術

「できない...」と自責するのは時間の無駄! 自分‟以外"のものを変えて解決する/発達障害の仕事術 pixta_40818358_S.jpg仕事や人間関係がうまくいかない...「もしかして自分は大人の発達障害なのでは?」と悩む人が増えています。しかし、その解決策を具体的に示した本は少ないのが現状です。

本書『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』は発達障害の当事者が、試行錯誤と度重なる失敗の末に身につけた「本当に役立つ」ライフハック集。うつでもコミュ障でも、必ず社会で生き延びていける術を教えます!

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前の記事「「天才じゃない僕」がそれでも生きていくために伝えたいこと/発達障害の仕事術(6)」はこちら。

 

◆発達障害式「仕事」の原則

「ぶっこみ」「一覧性」「一手アクセス」

自分の能力的問題を解決するよりは、環境や方法を変えるほうが簡単である。これが、僕の仕事におけるスタンスです。自分に欠けた能力をトレーニングや習慣で補完するのは簡単なことではありません。少なくとも、注意欠陥などの特性を短期間で克服するのは限りなく不可能に近いと思います。しかし、環境やツールを変えることによって大きな変化を起こすことは可能です。

例えば、西洋人に「箸で上手に食事をしろ」と要求したら、それなりに苦労はあると思います。しかし、フォークとナイフなら問題なく食事は摂れるでしょう。だったら、フォークとナイフを使えばいいじゃないですか。発達障害傾向のある方の業務適応も、これに似通った部分があります。

「訓練してもできないことはできない」と認める。これが、社会適応の第一歩になるでしょう。周囲と同じことをしても同じ結果が出ないのであれば、周囲とは違うことをするしかありません。それは多少不格好であっても、あるいは非常識であっても仕方がない。そう割り切ることが一番大事です。

「心を入れ替えて頑張ろう」と僕は何度誓ったか思い出せません。深刻な失敗をするたびに、自分の意志の弱さを、あるいは迂闊さを、あるいは注意欠陥を責めました。でも、そんなことは何の役にも立ちませんでした。「書類をちゃんと整理しよう」と心に決めても、3日後にはまた書類の紛失が起こりました。悲壮な決意も固い誓いも、発達障害という問題の前ではいささかの力も持ちません。

だから、抜本的に「やり方を変える」のです。そして、「やり方を変える」には「道具を変える」「環境を変える」といったやり方が最も容易であると言えます。自分はそう簡単には変わらない。だから自分以外のものを変えるのです。

この本を手に取った皆さんは、発達障害があるか、あるいは自分は発達障害者なのではないかと疑っている、そんな感じだと思います。そんな皆さんにありがちなことですが、非常に自責の感情が強いのではないでしょうか。

しかし、断言します。自責は時間の無駄です。ただただ苦しいだけです。「ではどうするか」、それこそが問題なのです。僕にとって、仕事をする上での問題点は実に多岐にわたります。僕は注意欠陥が非常に強く、多動もあります。集中は極めて散りやすく、また逆に一度没頭すると他のことが一切できなくなります。ADHDにありがちな物事の先送り癖も強く、物の整理もあるいはタスクの整理も非常に苦手です。やるべきことが3つあったらもうわけがわからなくなってしまう人です。

「何でそんなミスをするんだ?」と言われ続けて生きてきました。「なぜもう少し頑張れないんだ?」と叱られ続けました。「忘れ物をするな」と怒られ続けました。しかし、「ミスをしないようにしよう」という決心も、「もっと頑張ろう」という決心も、断言しますが1ミリたりとも役には立ちませんでした。

例えば、こういうことです。僕は「なぜハンカチを持っていないんだ」と会社で叱られたことがあります。「そうだな、ハンカチを持って行こう」とそのときは強く決意しました。しかし、僕はそれから3日連続でハンカチを持たずに出社し、上司に大いに呆れられました。

しかし、その後僕は頭に来て、自宅のドアに大量のハンカチを画鋲で串刺しにしました。毎朝、出勤時にイヤでも目に入るという寸法です。かばんにも5枚ほどハンカチを突っ込みました。これ以降、僕がハンカチを忘れることはありませんでした。

また、「シヤチハタ」もそうです。僕がかつて勤めていた職場は認印がなければ仕事にならないところだったのですが、シヤチハタは個人で携帯しているので忘れてしまうこともありました。そこで、僕は同じシヤチハタを5個購入し、かばんから机からポケットから、あらゆる場所にねじ込みました。

「そこまでやるか?」と思われるかもしれません。しかし、僕の仕事におけるハックは基本的に「そこまでやる」で構成されています。「決意」より遥かに実効性が高いのだから、やらない理由はありません。

 

次の記事「「ぶっこむ、一目で見通す、すぐ手が届く」が僕の仕事を快適にする/発達障害の仕事術(8)」はこちら。

借金玉(しゃっきんだま)

1985年生まれ。診断はADHD(注意欠陥多動性障害)の発達障害者。幼少期から社会適応が全くできず、登校拒否落第寸前などを繰り返しつつギリギリ高校までは卒業。
色々ありながらも早稲田大学を卒業した後、何かの間違いでとてもきちんとした金融機関に就職。全く仕事ができず逃走の後、一発逆転を狙って起業。一時は調子に乗るも昇った角度で落ちる大失敗。その後は1年かけて「うつの底」から這い出し、現在は営業マンとして働く。

「できない...」と自責するのは時間の無駄! 自分‟以外"のものを変えて解決する/発達障害の仕事術 otoko.jpg
『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』
(借金玉/KADOKAWA)
社会生活がうまくいかず苦しむ「大人の発達障害者」が増えていると言われる現代日本。発達障害によって30歳を前に人生をほぼ破たんさせかけた著者が、試行錯誤で編み出した「発達障害者のため」の今日から使えるライフハックを多数紹介! 仕事や人間関係がうまくいかない全ての人のための「日本一意識が低い」自己啓発書です。

 
この記事は書籍『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』からの抜粋です
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