今、気を付けたい「悪徳商法の手口」。時事問題を取り入れた手口も要注意

古典的な手口ながらも、いまもトラブルが続いている悪徳商法。自宅訪問や電話での勧誘で不当に高額な商品・サービスを強引に購入、契約させられそうになったことはありませんか? 今回は、国民生活センター 相談情報部 相談第1課の狐塚知子(こづか・ともこ)さんに、「悪徳商法の手口」についてお聞きしました。

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善意や同情心、そして不安に付け込もうとする

悪徳商法はいまどんな手口が問題になっているの?

自宅訪問や電話での勧誘で不当に高額な商品・サービスを強引に購入、契約させる「悪徳商法(悪質商法)」。

古典的な手口にも思えますが、いまもトラブルが続いています。

消費者からの相談対応などの業務を行う狐塚知子さんは「悪徳商法の相談と一口に言っても、銀行口座などの情報をだまし取ろうとする詐欺的手口から、買った商品やサービスの内容が説明と異なり納得できない、というようなものまでさまざまです。詐欺的手口のものは犯罪の可能性が高いので早急に警察や弁護士へ相談することをおすすめしていますが、後者は犯罪とまでは言えないものの悪質な手口であることがほとんどです」と説明。

いまはどのような手口が多いのでしょうか。

「年齢層別に相談が多いトラブルというのは分かれていて、70代以上に多いのは自宅への訪問販売と電話勧誘販売について。50~60代だとインターネット通販についてのトラブルが目立ちます」と、狐塚さん。

比較的自宅にいる時間が長い70代以上と、スマートフォンやパソコンに触れる機会が多い50~60代とでは、上で述べているように傾向が異なるのです。

「いま自宅訪問販売、電話勧誘販売で目立つのが、自宅の修理に関係するトラブルです。突然訪問してきて、『屋根の瓦が壊れているのが見えたので点検させてもらえませんか』などと言って家に上がり、屋根修理の契約をしたと思ったら『外壁の塗装もしましょう』などと次々に言い出して、高い修理費用を請求されたという相談を数多く受けています」(狐塚さん)

この手口が犯罪とまでは言えないのは、実際に修理は行われているからです。

「個別に状況も違うので、修理費用が妥当かどうかは判断するのが難しいのです。当初の見積もりとはかけ離れた金額を請求された場合などには、業者との間に入って解約・返金に応じるよう調整することもあるのですが...」と、狐塚さん。

もう一つ悪徳商法の特徴として挙げられるのが、そのとき話題になっている言葉や時事問題を巧妙に絡めて勧誘してくる手口が多いことです。

「前述の自宅の修理に関するトラブルも、近年豪雨や台風による被害が各地で相次いでいることと関係しています。不安な気持ちに付け込もうとするのです」(狐塚さん)

口実として使われているのは、災害だけではありません。

「ウクライナ問題」「新型コロナウイルス感染症」「マイナポイント(※)」といった、最近ニュースなどでよく耳にする言葉を取り入れた悪徳商法の手口も、下のようにすでに相談が寄せられています。

「ウクライナ問題を用いた手口では『支援したい』という善意に、コロナ禍の手口では『観光客が減って大変だ』という同情心に、そしてマイナポイントの手口では『複雑で申請手続きがよく分からない』という不安に付け込んでいるのです」と、狐塚さん。

「トラブルに巻き込まれたら、まずは最寄りの消費生活センターなどにご相談ください」(狐塚さん)。

もしどこに相談すべきか分からない場合は、局番なしの188番(消費者ホットライン)に電話すれば、最寄りの相談窓口を案内してくれます。


年代別こんな手口にご用心

70代以上:訪問販売と電話勧誘販売に注意

70代以上の人からの相談で多いのは、訪問販売と電話勧誘販売によって強引に商品を購入、あるいはサービスを契約させられてしまうケースです。

「自宅にいることが増えるため、狙われやすくなるのです」と、狐塚さん。

「とくに訪問販売のように、顔を突き合わせて勧誘されると、頑張ってるんだから断ったら悪い、というように考えてしまう人が多いのです」。

トラブルを防ぐために狐塚さんは「その場で契約せずに、一度家族や友人など頼れる人にご相談いただけるといいですね」と呼びかけています。

50〜60代:インターネット広告の悪質な手口

50~60代は少し傾向が変わります。

「この年代の人は、最近だとパソコンやスマホを使っている人も多いのですが、それに伴って『初回限定500円』というような化粧品などのインターネットの広告に誘われて細かい注意書きを読まずに契約してしまうトラブルが増えています」と、狐塚さん。

なぜトラブルになるのでしょうか。

狐塚さんは「実はこのような商品の中には、2回目以降の購入時は数千円に価格が跳ね上がり、なおかつ初回注文時に複数回の購入を義務付けられる契約になっているものがあるのです。

もちろんそのことを示す注意書きは掲載されているのですが、スマホだと読めないくらいに小さい文字だったり、別のページを見なければ分からないようになっていたりするのです。

消費者の不注意に付け込もうとする手口ですね」と説明。

「インターネット通販を利用する際には、手間を惜しまずに注意書きを必ず読むようにすることが大切です」と続けます。


時事問題を取り入れた悪徳商法の手口

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●不用品買い取りのはずが、大切にしていた貴金属や宝石を買い取られてしまった


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●同情を誘うようなセールストークで、価格に見合わないものを買わされてしまった


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●申請代行を口実に、マイナンバーと銀行口座の番号を教えてしまった

※マイナンバーカードの新規作成や、マイナンバーカードに「健康保険証の利用登録」「公金受取口座の登録」をすることでもらえるポイント。


取材・文/仁井慎治 イラスト/やまだやすこ

 

<教えてくれた人>

国民生活センター 相談情報部 相談第1 課
狐塚知子(こづか・ともこ)さん

消費者からの相談受付や重要消費者紛争について法による解決のための手続きを実施している国民生活センターで、消費者からの相談対応やその内容の調査分析および分析結果の情報提供などを担当する。

この記事は『毎日が発見』2022年12月号に掲載の情報です。

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