男と女には「知らなくてもいいこと」がある/大人の男と女のつきあい方

pixta_22970209_S.jpg40歳を過ぎ、しかも家庭を持つ男の恋愛は難しいのが現実。しかし、年齢を重ねても、たとえ結婚していても異性と付き合うことで人間は磨かれる、と著者は考えます。

本書『大人の「男と女」のつきあい方』で、成熟した大人の男と女が品格を忘れず愉しくつきあうための知恵を学びませんか?

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男と女には「知らなくてもいいこと」がある

夫婦なのだから、愛し合っている恋人同士なのだから、という理由で「秘密を持たない」ことを美徳とする考え方がある。そんな考え方に私は反対である。

人間同士のつきあい、ことに愛し合っている男女の間では、そんな仲だから"こそ"お互い知らないほうがいいこともある。あえて隠すというよりは、あえていわないほうがいいこともあるのだ。

人間は寂しい存在である。そして弱い存在である。だから、過ち、トラプル、悩みなど自分にとってはつらいことを、ついグチまじりにほかの誰かに話してしまう。そうすることで、つらさをシェアしたがるものだ。

一人で問題を抱えているとき、それを誰かとシェアしてしまえば、つらさが半分になるのではないかと考えがちだが、そんなことはない。もちろん、話すことでつらさが軽減されることもなくはないが、自分でしか解決できない問題も多いからだ。その違いがわからないまま、夫が妻に、妻が夫に、あるいは恋人に話してしまうことで、半分どころか新たな悩みの種を抱えなければならなくなる。

「いや、実は会社でね。今度の部長とどうもソリが合わないんだけど......」何げなくもらしたグチに、妻は夫が予想もしていなかった反応をする。

「あなた、部長に嫌われているの?」
「もしかしてリストラの対象になってしまうの?」これが転じて、
「私たち親子は、どうやって生きていったらいいの?」
という話にもなる。妻は悲観的なイメージをいっそう広げ、信じられないほどブルーになり、翌日から求人情報誌を買い求めるかもしれない。

「人には相性があるから、しかたがないんじゃない。そのうち、部長ともうまくいくようになるから、あまり気にしないで......」

こんなフォローをしてくれる妻は夫にとってよき伴侶である。夫と同じように組織で働き、その人間関係という厄介な問題に想像力が働く妻ならいいが、専業主婦の妻であれば過剰に反応してしまうかもしれない。打ち明けてはみたものの、妻の受け止め方が予想とはまったく違っていて、自分以上に悩みはじめることもある。

悩みを半分に和らげようと思っていったひと言が、今度は妻の悩みという新しい問題を生み出してしまう。半分どころの話ではない。悩みの種類が本人とは違うから、より厄介だ。女の感性は男とは違う。そうなると、今度は妻の悩みを勘酌(しんしゃく)しなければならなくなるから、倍以上の悩みである。

こういう齟齬(そご)はどこから生まれるのか。それは夫と妻が「完全にわかり合える」「完全にわかり合わなければならない」と決めてしまうからだ。

 

トルストイ、白洲次郎から学ぶ「男と女は分かり合えない」

ロシアの文豪トルストイは82歳でこの世を去っているが、死の数日前に50年近く連れ添った妻の元を離れている。「ああ、やっぱりわかり合えない」と文豪がいったかどうかはわからないが、世の夫婦は何年一緒に暮らしていても、完全にわかり合えることなど絶対にないのである。

もし、わかり合っていると口にする夫婦、恋人がいたら、それは、わかり合えたとお互いに錯覚しているのだと思っておいたほうがいい。

「完全にわかり合えることなどない」という前提で生きている人間にとっては、秘密を持つこと自体は相手に対する背信行為ではない。何でもかんでもさらけ出してしまうことは、何の役にも立たないうえ余計な心配を相手にさせるだけだ。むしろ、秘密は隠しておいて、あらぬ不安や心配の種をまき散らすことこそを慎むべきなのだ。お互いにある種の秘密を持っていることを、不実の関係だなどと考えることはない。

その人が知らないことは、その人にとっては地球上に存在しないことなのである。「知らぬが仏」は夫婦や恋人同士にとって、もっとも有益な教えだと思う。
逆に、それなりの秘密が二人の間にあるからこそ、ひと組の他人の男女が何十年も一緒に暮らしていけるのだ。

「夫と妻は一緒にいないことだね」

ここ数年来、その人生が脚光を浴びている白洲次郎氏は、夫婦円満の秘訣(ひけつ)を問われてこう語った。妻である文筆家の白洲正子さんとの結婚生活は、次郎氏の死によって分かたれるまで続いたが、彼のこの言葉は、「何でもわかり合える」と思わなかったからこその逹観の言葉でもある。

自分で解決できることは秘密のままでいい。むしろ秘密は上質のスパイスだ。秘密のない男女関係など、無味乾燥で面白みがない。

 

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川北義則(かわきた・よしのり)
1935年大阪生まれ。1958年慶應義塾大学経済学部卒業後、東京スポーツ新聞社に入社。文化部長、出版部長を歴任。1977年に退社し、日本クリエート社を設立する。現在、出版プロデューサーとして活躍するとともに、エッセイスト・評論家として、新聞や雑誌などに執筆。講演なども精力的に行なっている。主な著書に『遊びの品格』(KADOKAWA)、『40歳から伸びる人、40歳で止まる人』『男の品格』『人間関係のしきたり』(以上、PHP研究所)など。

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『大人の「男と女」のつきあい方』
(川北義則 / KADOKAWA)
「年齢を重ねても、たとえ結婚していたとしても、異性と付き合うことによって、人間は磨かれる」というのが著者の考え。しかし、40歳を過ぎてから、 しかも家庭を持つ男の恋愛は難しいのが現実です。 本書は、成熟した大人の男と女が品格を忘れず、愉しくつきあうための知恵を紹介。 いつまでも色気のある男は、仕事も人生もうまくいく!

この記事は書籍『大人の「男と女」のつきあい方』からの抜粋です

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