医師・鎌田實さんが考える「質のいい睡眠」をとるためにどうすればいいか

定期誌『毎日が発見』で好評連載中の、医師・作家の鎌田實さん「もっともっとおもしろく生きようよ」。今回のテーマは「質のいい睡眠をとるためにはどうすればいいのか」です。

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いい睡眠のために運動を続けています。冬空の下、スキップ。

日本人は、先進国の中でも睡眠時間が短く、睡眠負債(※)を抱えている人が多い。

睡眠障害のある人が約2000万人とも言われています。

安定剤などの薬を必要としている人も多く、その上コロナストレスで睡眠障害のある人が増加しています。

原因を考えてみました。

※毎日積み重なる睡眠不足のこと。

不安緊張と運動不足

コロナに感染することへの不安や緊張が常にある。

自分が感染したら会社に迷惑をかけるのではないか、家族に感染させてしまったら大変なことになってしまう...。

しかも、仲間と飲み屋に寄ったり、カラオケをしたり、映画に行ったりする機会が減って、ストレス解消ができない。

ステイホームやソーシャルディスタンスなどと言われて、運動不足になってしまった。

コロナ感染を心配して、ジムを辞めたり休んでいる人も多い。

生活リズムの乱れ

出勤時間などが決まっていたことで、生活リズムが作られていました。

しかし、コロナ禍でそのリズムが壊れてしまった、という人も多い。

退職後などにも起こりがちです。

不安緊張、運動不足、生活リズムの乱れ。

おそらくこの3つが、睡眠障害の原因だと考えられます。

若々しい肌

深い睡眠はノンレム睡眠といい、体と脳を休憩させてくれます。

浅い睡眠はレム睡眠といって、心のメンテナンスをしてくれます。

レム睡眠とノンレム睡眠は、1時間半ぐらいでサイクルを作っていることが多く、このサイクルがうまくいっていると、体・脳・心を守ってくれるのです。

眠り始めの3時間ぐらいの間に、成長ホルモンが出ます。

寝る子は育つと言いますが、実際そのとおり。

体格を大きくするには、子ども時代に睡眠時間を多くとることが大事です。

お子さん、お孫さんをスポーツ選手に育てたいと思ったら、早く寝かせることが大事です。

成人になっても、成長ホルモンは出ます。

これは肌を若々しくしてくれます。

女性は特に気になるところでしょう。

いい睡眠は肥満予防になる

いい睡眠をとると、コルチゾールというホルモンが出てきます。

コルチゾールは、糖から生成されるグリコーゲンと脂肪を使ってエネルギー代謝を促進し、血糖値を安定させてくれます。

いい眠りは、寝ている間にメタボ対策ができるということです。

コルチゾールが出るのは、夜中の3時頃。

この時間に熟睡していることが大事です。

トイレが近くなっている人は就寝時間を変えるなどして、2~4時頃トイレに起きないようにしたいですね。

睡眠障害を起こさないために

アルコールを飲むと眠りやすいと思い込んでいる人がいます。

確かに、酔うと脳の働きが緩くなり気にかかることが少なくなって、さっと眠りにつくことができる。

しかしアルコールは、体に入ったあとアセトアルデヒドに変わります。

これが交感神経を刺激し、せっかく眠りについても中途覚醒してしまうことが多いのです。

これを防ぐためにはどうしたらいいでしょう。

就寝の3時間前には飲酒をストップさせましょう。

これが中途覚醒を起こさないコツです。

できれば、食事もアルコールも夜8時までに終わらせるのが理想です。

睡眠時間は人それぞれ

ぼくは18歳の受験の時から65歳まで、4時間半睡眠でした。

ショートスリーパー。

レム睡眠とノンレム睡眠が約1時間半のサイクルで回るので、短時間睡眠法を身につけている人は、4時間半でも昼間の活動に影響を与えないのです。

105歳まで生きた医師・日野原重明先生も同じ4時間半睡眠と、対談した時におっしゃっていました。

睡眠時間のリズムは人それぞれです。

1.5時間の倍数で考えると、4時間半は短すぎると思う人がほとんどでしょう。

6時間か7時間半睡眠で、1日のパフォーマンスが良い方を選べばいいと思います。

朝の眠活

体内時計は25時間で回っています。

地球の自転は24時間。

この1時間の時差を埋めるために大切なことは2つ。

朝ごはんを食べることと、朝太陽に当たること。

子どもが学校で嫌なことがあって学校を1週間休んだとします。

そんなとき注意しなければならないのは、夜更かしして朝起きられないこと。

これが不登校に陥る大きな原因となります。

とにかく朝は叩き起こしてでも太陽に当て、朝ごはんを食べさせましょう。

1週間続けば7時間もの時差が生じてしまい、学校へ行けない体になってしまう。

朝太陽に当たることで、幸せホルモン「セロトニン」が分泌され、同時に、夜中出ていた睡眠誘導ホルモン「メラトニン」が分泌を止めます。

これではっきりと覚醒することができるのです。

セロトニンが分泌された十数時間後にメラトニンが出始めるので、睡眠のリズムも整い、コロナストレスによる不眠も予防することができます。

寝ている間に筋肉のグリコーゲンが使われて、生命の維持をしてくれています。

朝体重が減っているのは、筋肉の減少が起きているためです。

朝はバランスよく、卵、ヨーグルト、チーズなどたんぱく質をしっかり摂りましょう。

朝は、太陽とたんぱく質が大事です。

就寝前のストレッチ

就寝2時間前には、軽い運動、ストレッチをしましょう。

まずはふくらはぎやアキレス腱のストレッチ。

そのあと椅子に座り、膝を伸ばして、手をまっすぐ前へ。

両手をグーにすると同時に、足の踵を浮かせてつま先を床につけるように伸展させます。

今度は両手をパーにしながら、踵を屈曲させて足の指先を膝の方へ近づける。

これの繰り返しです。

パーグーパーグー。

赤ちゃんは眠いと手足が温かくなります。

体温が上がって下がった時に眠りにつくのです。

手足の末端運動によって血流を良くし、体温を少し上げておくことがいい睡眠につながります。

就寝の90分前には、38~40度くらいのお風呂に入り、深部体温を上げておきましょう。

その後布団に入り、最後のメソッドは、腹式呼吸です。

鼻から3秒で息を吸って、口から7秒で吐き出す。

横隔膜が動くことで副交感神経が刺激され、眠りモードに入っていきます。

寝る前のホットミルクもおすすめです。


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大雪の中でも歩く。

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腹筋強化も大切です。

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寝る前のパーグー運動です。足の動きにも注目してください。

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《カマタのこのごろ》

昨年の『ニューズウィーク日本版』(11月23日号)で、鎌田實が「世界に貢献する日本人30」に選ばれました。チェルノブイリやイラクの子どもたちの医療支援に取り組んできたことが評価されたのではないかと思います。

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<教えてくれた人>
鎌田 實(かまた・みのる)さん

1948年生まれ。医師、作家、諏訪中央病院名誉院長。チェルノブイリ、イラクへの医療支援、東日本大震災被災地支援などに取り組んでいる。『だまされない』(KADOKAWA)など著書多数。

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■「認知症予防」をもっと詳しく知りたい人は!

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この記事は『毎日が発見』2022年3月号に掲載の情報です。

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