「どんな風に話すかで人生は変わる」と言うのは、全国で多数の講演を行う人材育成のプロ・永松茂久さん。そんな永松さんが会話のノウハウをまとめた著書『人は話し方が9割』(すばる舎)から、「好印象を与える会話のコツ」を抜粋してお届けします。
一番大切なのは、思いやスタンス
話し方において、あなたにお伝えしておきたいことがあります。
「うまく話せるスキル」は、一般の会話においては、必須条件ではありません。
流暢に淀みなく話せるようにならなければ、と思っている人が多いようですが、一番大事なのは、あなたの思いやスタンスです。
「何を伝えたいか」
「どういう意識で相手と接しているか」
――こうした内面は、必ず会話にもにじみ出ます。
それをわかった上で、自分自身がどういう言葉を選択するか。
そこが、人の心に響く本当の話し上手になれるかどうかの分かれ道です。
論語に、「巧言令色鮮すくなし仁(こうげんれいしょくすくなしじん)。剛毅木訥仁(ごうきぼくとつじん)に近し」(口先だけうまく顔つきだけよくする者に真の仁者はいない。真の人格者はむしろ口が重く愛想がない)という言葉がありますが、たとえ流暢にしゃべることができなくても、訥々としていても、気持ちを込めて話したほうが、相手の心に響くということは往々にしてあります。
例えば、滑舌もよく、流暢に話すことができる人がいたとしても、そこに思いがなければ、その人の話し方に心動かされることは少ないでしょう。
一方、ときおり言い淀みながらも、本当に伝えたいことについて熱心に語っている人の話は、胸を打つものです。
みなさんにも、まったく同じことが言えると思うのです。
「力み」を捨てる
流暢に話すことが苦手な人は、「うまく話そう」と思わなくてもいいのです。
逆にあなたの美しい内面が、余計な焦りによって、悪い印象に変わってしまったら、これほどもったいない話はありません。
話すことが苦手なら苦手と、開き直ってもいい。
流暢に言葉が出てこなくても、焦らなくていい。
じっくり言葉を選びながら、ゆっくり話せばいい。
そう思って相手と向き合えば、通じるべきものは必ず通じます。
言葉はコミュニケーションのツールなのですから、言葉を通じて思いが伝わることが最も重要です。
そう考えれば、たとえ流暢でなく、言葉数が少なかろうと、ゆっくりじっくり話し、真意を相手の心に届けることができる人を、本当の話し上手と呼んでいいのではないでしょうか。
【最初から読む】「否定しない空間」を作れば誰でも上手に話せる
人を動かす、会いたいと思わせる、嫌われないなど37の会話のコツを全4章で解説しています