世界中から愛され続ける女優、オードリー・ヘップバーン。実は、妖精ともうたわれるその容貌に、コンプレックスを感じていたそうです。銀幕の向こう側で抱えていた葛藤、仕事と家庭の両立、死について、など彼女の言葉がまとめられた『オードリー・ヘップバーンの言葉』(山口路子/大和書房)から、現代の女性たちが共感できるオードリーの名言を連載形式でお届けします。
等身大の自分でいる
「与えられたことができるようなふり」をしたことは一度もありません。
『ローマの休日』で有名になる以前、この映画の制作と同じころ、オードリーはブロードウェイミュージカル『ジジ』の主役に抜擢されました。
「彼女こそ私のジジにふさわしい!」とオードリーを主役に推したのは、原作者のコレット、フランスの有名な作家でした。ところが、オードリーはコレットにはじめて会ったときに、こう言いました。
「私にはできそうもありません。演技ができないのですから」
コレットは動じることなく言いました。
「あなたは私のジジよ。バレリーナを目指していた人なら厳しいレッスンに耐えられるはず、できる」
オードリーはこの期待に応え、きついレッスンに耐え抜いて、舞台を大成功に導きました。
オードリーの「できるふりはしない」というスタイル。これに反対の人もいるでしょう。ときには自分を等身大以上に見せることも必要なのだと。
人それぞれですが、オードリーは自分の実力を正直に伝えるやり方を選んだのです。
バレリーナになれなかった女の子
女優の道に進んだのは偶然からでした。私は無名で、自信も経験もなく、痩せっぽちでした。だから全身全霊で努力しました。その点では自分を褒めることができます。
二十五歳、はじめての主演映画『ローマの休日』でアカデミー賞主演女優賞受賞、その三日後に、権威ある演劇賞であるトニー賞を『オンディーヌ』で受賞するという快挙を成し遂げ、一躍スターとなったときのコメントです。オードリーは、もともとはバレリーナになりたかったのです。
母親の勧めもあり、幼いころからバレエを習い、戦後ロンドンに渡って、著名なバレエの指導者に師事しますが、そこで決定的なことを言われます。
「あなたは優秀だけれど、プリマ・バレリーナにはなれない」
その時代の男性と組むには背が高すぎたのです。
二十歳。尊敬する先生からの言葉はショックで、ひどく落ちこむけれど、生活費を稼がなければならないから、くよくよしている暇はありません。ミュージカルや映画のオーディションを受け、端役で出演したり、写真家のモデルなどをして収入を得るなかで、やがてチャンスをつかみ、スターとなったのです。
女優オードリー・ヘップバーンは、女優を目指した女の子が女優になったのではなく、バレリーナになりたかった女の子が夢を閉ざされ、生活費のために探した仕事から誕生しました。未来への扉は思いもよらないところにあったのです。
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