「我慢」「辛抱」と感じるうちは再び太る可能性あり! ダイエットにつきものの「リバウンド」の仕組み

ダイエット中の脳と体は「コンフォートゾーン」に戻りたい

人間の脳と体は苦しいことが嫌いです。仕事でも勉強でもスポーツでも、何でもそうだと思いますが、普通はつらくて苦しいことや我慢しなくちゃならないことを嫌がって、ラクなほう、ラクなほうへと流れていくものですよね。

それはダイエットでも同じ。食べたいものを我慢するのはつらくて苦しいことであり、人間の脳と体は、そういう我慢や苦しさに長期間耐えられないようにできているのです。そのため、隙あらば、ラクなほう、ラクなほうへと向かおうとします。

こうした「脳や体にとってラクな環境」は、専門的には「コンフォートゾーン(comfort zone)」と呼ばれています。

コンフォートゾーンは、脳や体がずっとここにいたいと望むような「居心地のいい環境」です。そこは、我慢も辛抱もしなくていいし、好きなものを好きに食べてもいい素晴らしくラクちんな世界。「太った人の側の世界」と言ってもいいでしょう。

太った人の体は、言わばコンフォートゾーンで長年にわたって快適な生活を送ってきたために出来上がったものです。脳と体には、すでにコンフォートゾーンのラクさや快適さがとっぷり染み込んでいると言えます。

そこから非常に厳しいカロリー制限や食事制限に取り組んでみても、その人の脳と体はコンフォートゾーンに戻りたくて戻りたくてしょうがない状態になってしまうわけです。

たとえその人がいったんはやせることができたとしても、元の快適な世界へ戻りたいという気持ちは収まりません。もちろん誘惑に負ければ一発でリバウンドしてしまうことは分かっています。しかし、どんなに「元の世界に戻っちゃいけない」「誘惑に負けてはいけない」と自分に言い聞かせても、我慢や辛抱を続けている限り、「あの快適な世界に戻りたい」という体の声は消えないでしょう。

ですから、我慢や辛抱をしているうちはリバウンドして、また太ってしまう可能性が高いのです。

私は、日々の食事で「我慢しなくちゃ」「もっと辛抱しなきゃ」といった考えが浮かんでいるうちは、再び太ってしまう可能性を捨てきれないと思っています。少しでも我慢をしているうちは、まだまだ安心することはできないのです。

脳を刺激せず"だましだまし"やせるメソッド

では、ダイエット中、快適なコンフォートゾーンへ戻りたがっている脳や体をうまく納得させてこちら側に引き留めるには、どういう方法をとるのがいいと思いますか?

じつは、そのいちばん合理的で効率的な手段が「少しずつ、ゆっくり時間をかけてやせて、脳と体をごまかしていく方法」なのです。

毎日ちょっとずつ摂取カロリーを減らしていると、脳も「減っていること」に気づきません。

一気にたくさん減らしてしまうと、「たいへんだ、アラートを発動しなきゃ」となりますが、いつもとたいして変わらないくらいの量を少しずつ減らしていけば、「そんなに変わってないから大丈夫だな」と、何の問題もなくスルーしてくれます。

だから、警戒されないように時間をかけて少しずつ減らし、うまく脳をだましていくようにするといいわけです。

 

清水忍

トレーニングジムIPFヘッドトレーナー。アメリカスポーツ医学会認定運動生理学士(ACSM/EP)、健康運動指導士。一九六七年、群馬県生まれ。大手フィットネスクラブ勤務後、スポーツトレーナー養成学校講師を経て独立。「なぜ」を追求するロジカルな指導で、メジャーリーガー・菊池雄星投手らプロアスリートのパーソナルトレーナーとして絶大な人気を誇る。ダイエット指導歴三十五年以上。NESTA JAPANエリアマネージャー、菊池投手考案の野球複合型施設「King of the Hill」アドバイザー。「Tarzan」監修など多くのメディアで活躍中。『ロジカル筋トレ』『超宅トレ』など著書・監修書多数。

※本記事は清水忍著の書籍『ロジカルダイエット 3か月で「勝手に痩せる体」になる』(幻冬舎)から一部抜粋・編集しました。
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