「キャッシュレス社会」を理解するために知っておきたい4つの分類

現金を持ち歩かなくても支払いができる「キャッシュレス社会」が近づいています。不安に感じますが、どのように付き合って行けばいいのでしょうか? 東洋大学経済学部教授の川野祐司先生にお聞きしました。

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「キャッシュレス」とは一体どういうもの?

買い物するのにも、電車に乗るのにも、そして旅行に行くのにも、現金を持ち歩かなくていい―。最近よく耳にする「キャッシュレス」社会が実現すると、このようなことが可能になります。

10月の消費税増税時に導入が予定されている、キャッシュレスでの支払いに対するポイント還元も、キャッシュレス社会の促進に拍車をかけそうです。便利なようにも思いますが、その半面不安を感じ、「よく分からない」「現金で生活する方が安心」と考えている人も多いのではないでしょうか?

そういう人たちに「必要以上に恐れる必要はありません」と川野先生。なぜなら、実は私たちの身の回りでは、すでにキャッシュレス化が進んでいるからなのです。「最近突然現れたもののように感じますが、実は新しいものではないんです」

 

■キャッシュレスの分類

1.銀行口座を使った支払いや入金
・振り込み、引き落とし
・デビットカード
・クレジットカード

2.電子マネー
・購入した電子マネーをICカードなど にチャージして使用するのが一般的
・日本では、鉄道会社や流通企業などが発行しているものが有名

3.仮想通貨
・ビットコインなどが有名
・国際送金時の手数料が安いなどのメリットもある
・現状では投機の対象になっている 面があり、「お金」として使用するには、価格が安定していないなどのデメリットが大きい

4.電子通貨
・各国の中央銀行が発行する、デジタル形式の法定通貨。日本では現時点で、まだ導入されていない
・現金同様、政府が保証するという点が大きな特徴
・川野先生の見立てでは、これがキャッシュレスの最終形態だが、実現はまだしばらく先の話

 

キャッシュレス化の仕組みは、大きく分けると四つに分けられます。「多くの人は、給与や年金を受け取るため、1の銀行口座への振り込みを利用しているはずです。現金で受け取っている人は少ないでしょう」。知らず知らずのうちに、私たちの社会はキャッシュレス化が進んでいたのです。

それなのに、なぜ私たちはキャッシュレス化に対して不安を抱くのでしょうか。その理由について、「慣れていないから、ということに尽きます」と川野先生は指摘。

例えば、交通系のICカード。2の電子マネーの一種ですが、すでに首都圏など交通網が発達した地域では切符を買って電車に乗る、という人は少数派になっています。「最初はカードを改札にタッチして通過することに違和感があったかもしれませんが、使ってみたらその都度切符を買うよりも便利だと、多くの人が思うようになった結果です」と、川野先生。

そもそも「お金」とは何でしょうか。川野先生は「購買力を表す記号」と定義しています。硬貨や紙幣そのものには価値はないのですが、社会で価値があると認められているため、モノやサービスを買うことができる、ということなのです。

つまり、価値が広く認められていれば、それが形のある硬貨や紙幣ではなく、形のない電子データでも「お金」になるのです。銀行口座の預金や、交通系ICカードの電子マネーがその例です。

一方、仮想通貨は、上の3のように、私たち世代が使用するには時期尚早のようです。また4の電子通貨は、現時点では国内で導入されておらず、実用化にはまだまだ時間が必要です。

 

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取材・文/仁井慎治

 

 

 

<教えてくれた人>

川野祐司(かわの・ゆうじ)先生

東洋大学経済学部 国際経済学科教授。1976年生まれ、大分県出身。ヨーロッパ経済論、国際金融論などが専門。キャッシュレス化社会の研究も進めており、日本キャッシュレス化協会代表理事を務める。著書に『キャッシュレス経済 21世紀の貨幣論』など。

この記事は『毎日が発見』2019年7月号に掲載の情報です。

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