よく「憂うつ」になってしまう人は、実は「未来」を見ている!? 憂うつになる原因を、「未来の自分を考えすぎているから」というのは心理カウンセラーの大嶋信頼さん。そんな大嶋さんの著書『憂うつデトックス』(ワニブックス)には、先々のことを想像しすぎることで憂うつになってしまう原因と、そこから解放される思考メソッドがまとめられています。今回はそのエッセンスを厳選して、連載形式でお届けします。
他人を優先させる母親
ある方と話をしていて「自分はこれから先も絶対に変わることができない」とおっしゃっていました。
「それはどうして?」と質問をしてみたら「母親が変わらないから」とおっしゃっていて「それって甘えているだけなんじゃない?」とその当時は思ってしまいました。
でも、よくよく考えて見たら「自分は変われるかも」と希望を持ったら、母親の余計な一言で引き戻されて「やっぱり自分は変われないダメなまま」という気分になってしまうことは私もしょっちゅうありました。
もしかして「自分が変われない」というのは、本当に母親の影響があるのかもしれない、と思ったら、この「母親の未来を変える」ということをやってみたくなるんです。
母親は、いつも自分のことよりも他人を優先していて「人の目をものすごく気にしている」という感じの人で、私はしょっちゅう「みっともない」とか「汚らしい」や「気持ち悪い」と言われて傷ついていました。
そんなに私って人から受け入れられない存在なのかな? と自信を持つことができません。
常に母親の目が私のダメなところを否定しているような感覚があって、離れていても母親の価値観に縛られている、と自由になれない自分がいたんです。
そんな私が「母親の未来を変える」ということをやってみます。
母親は父親の世話をずっと苦労しながらやってきたので「ご苦労様でした、もう手放していいんじゃない」という感じでイメージの中の母親に伝えてみても、全然変わりません。
そこで「お母さんのことをずっと尊敬しています」と伝えてみたけど「母親はこちらの手の内を知っていて変わらないな」という感じでイメージの中の母親は変わりません。
イメージの中で母親が変わらない、というのは「お母さんに本当に感謝をしています」という言葉を頭の中で唱えてみて、そして母親をイメージした時の私の感覚。
「やっぱり何も変わっていない」という感じでワクワク感が全然得られません。
母親は解放される
そこで「母親の気持ちになる」ことをやってみます。
「母親の立場になったらどんな気持ちなんだろう?」と思うだけ。
すると、父親のこと、母親の兄弟のこと、そして色んな知り合いの人たちのことを抱えて、その人たちに責任を感じている母親を感じることができた。
「うわー、なんにでも責任を感じているんだ」と苦しくなる。
その割には私には冷たかったような気がしていたけど、それも「母親の気持ちになる」と思って確かめてみると「責任を感じていたから、あんな態度になっていたんだ」ということに気づくことができて、ちょっと私の目から涙が溢れてきます。
責任感なんか持たなくていいから、もっと優しくしてほしかった、と私の胸は押さえつけられるように苦しくなりました。
そんな時に「母親は解放される」という言葉が浮かんできて、私の場合はイメージするのが苦手だから、「母親は解放される」と母親に伝えようと「母親」と思ってみた時に「あ! 自分の気持ちが軽くなった!」と頭が軽くなる。
その次の瞬間に、私の携帯電話が鳴り、これまで母親から一度も電話がかかってきたことがなかったのに、なんと知らない電話番号から母親の声が響いてきました。
「えっ? 母親の未来がもう変わったの?」とびっくり。
そして、次の瞬間に私の未来も変わっていきます。
いつも余計なことで失敗する
ある女性が「私の母親が変わらないから、私も母親にこのまま足を引っ張られ続けて変わることができない」とおっしゃっていました。
これはどこかで聞いたことがある、と思っていたら、たくさんの人が何気なくこの仕組みを知っていらっしゃった。
母親がずっと幸せじゃなかったから、自分は母親よりも幸せになることができない、と思っている。
実際に幸せになろうとすると、必ず邪魔が入ってぶち壊されて、母親よりも不幸せな人生をいつも生きなければならなくなってしまう。
自分の好きなことをやって楽しい人生を歩んでくれたらいいのに、と思うのだけど、母親はいつも余計なことをやって失敗していつも後悔をしていて、女性はその愚痴を聞かされ続けてきてしまった。
こんな母親の未来を変えられるの? と信じられなかったけど、女性はとりあえずやってみることにしました。
母親を思い浮かべるとやっぱり憂うつな気分になり、不幸そうな顔をしている母親の姿がイメージされてどんどん弱ってしまって「自分が面倒を見なければならない」という不安に苛まれてしまう。
この不幸そうな母親の未来を変えられるのか? と思って女性はイメージの中で母親に「これから幸せになっていいよ!」と伝えてみます。
でも、ちっとも母親のイメージは変わりません。
「もっと好きなことをやって!」と現実でも伝えたことがある言葉を伝えても無意味だ、という感じでさらに憂うつ気分がひどくなります。
「不幸の塊」が変わっていく
そこで「母親の気持ちになってみる」ということをしてみます。
「母親の気持ちになる」と思ってみると「あれ? 母親の中身は不幸じゃないぞ!」と不思議な感覚になっていたんです。
母親は不幸だと思っていたら全然違っていて「不幸が勲章であり誇り」になっていたんです。
不幸自慢をする人はいますが、まさに母親はその塊、という感じ。
苦労人でいることが生きがいで、そしてそれを気遣ってもらうことに喜びを感じているんだ、ということがわかってきます。
そしたら「お母さんはそのままの人生を生きていいんだよ!」という言葉が浮かんできました。
今までは「幸せになってほしい」と思っていたのに、それが余計なお世話だった。
母親は不幸自慢の世界で生きたいのだったら、そういう人生でいいんだ、とイメージの中で母親に伝えたらスッキリした! となりました。
そして、現実に母親と顔を合わせた時に、また不幸な選択を繰り返している母親の話を聞いていて「この人はこれが好きなんだ!」と心から思えて気が楽になります。
そして「お母さんはそのままの人生を生きていいんだよ!」とイメージの中で伝えた言葉をそのまま伝えてあげると、母親はキョトンとしています。
それからしばらくすると、母親がこれまでしなかった友達との旅行に出かけたりするようになりました。
どうせ旅行に行っても、帰ってから愚痴を聞かされるんだろうな、と思っていたけど「愚痴を言わなくなった」という不思議な現象が。
ちゃんと楽しんで帰ってきて、次の約束まで取り付けて生き生きしている。
母親の未来がいつのまにかゆっくりと変わり始めてきて、女性も母親に足を引っ張られることなく、自分がしたいことができるようになってきたんです。
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憂うつの正体と、つらい状況から抜け出せるシーン別メソッドを全5章で解説。自分の状態がわかる「憂うつ度診断」のチェックリストも付いています