【舞いあがれ!】次週が不安な「2つの理由」。朗報続きという「不穏な予感」に視聴者ザワザワ

毎日の生活にドキドキやわくわく、そしてホロリなど様々な感情を届けてくれるNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)。毎日が発見ネットではエンタメライターの田幸和歌子さんに、楽しみ方や豆知識を語っていただく連載をお届けしています。今週は「朗報続きという『不穏』」について。あなたはどのように観ましたか?

※本記事にはネタバレが含まれています。

【先週】絶望展開を好転させた"2人の兄ちゃん"。桑原脚本による「巧みな描写」が見事すぎる

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福原遥がヒロインを務めるNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』の第17週「大きな夢に向かって」。

舞台は 2013年へ。

今週は、浩太(高橋克典)の夢を舞(福原)が引き継ぎ、航空機部品への参入に挑戦する様が描かれる。

一見、舞がずいぶん頼もしくなったように見えるが、浩太の元同僚が大きなチャンスをくれ、浩太がつないだ人脈が助けてくれることでボルトが完成していることは大前提にある。

舞はIWAKURAの営業のエースとなり、会社の業績も右肩上がりで受注も増えている。

貴・司(赤楚衛二)は八木(又吉直樹)から古本屋「デラシネ」を引き継ぎ、店長をする傍ら短歌を作り続け、幼い頃に自身が舞や久留美と共にデラシネで集っていたように、子どもたちのたまり場になっている。

ある日、舞はめぐみ(永作博美)に航空機産業セミナーも参加しようと誘う。

中小企業が航空機部品に参入するには、複数の企業が協力すべきだと堂々と発言する舞。

菱崎重工の荒金(鶴見辰吾)は「岩倉」の名に反応し、舞の発言に耳を傾けていたかと思うと、IWAKURAを突然訪問。

航空機に使用する新型エンジンのボルトの製作を依頼する。

航空機部品製作の経験がないからと、めぐみは尻込みするが、舞はボルトの図面を見せて欲しいと言い、部外秘の図面を見せてくれることに。

実は菱崎重工は浩太が実家の工場を継ぐ前に勤めていた会社だったが、それは口にせず、中小企業の新しい力を求めているとあくまでビジネスライクに説明するところが良い。

しかし、扱ったことのない硬い金属のため、試作は難航し、笠巻(古舘寛治)が金属加工を専門とする長井(や乃えいじ)に機械を借りようと提案。

それはかつてめぐみと舞が退職勧奨を勧め、拒んだものの最終的に会社のために受け入れた小森(吉井基師)の転職先だった。

小森は長井に取り次ぐことを承諾するが、笠巻と先代・浩太(高橋克典)のためだと付け加える。

「IWAKURAで働けることが誇り」とまで言っていた小森に、めぐみと舞は戦力外通告をしたわけで、小森がわざわざそう言いたくなるのも当然だろう。

実は長井は会社をたたむことを決めており、小森を笠巻らの相談に応じさせたのは、IWAKURAに戻れるようにとの配慮だったのだろう。

とはいえ、めぐみに復職を勧められても、小森はそう簡単に受け入れることができない。

そこで、めぐみは1日だけの復帰を提案し、「今のIWAKURAを見てほしい」と言う。

浩太の経営で倒産寸前に陥ったところからめぐみと舞が見事に復活させたのは事実だが、浩太が良い機械と良い人材を育て、浩太の人柄に惹かれて従業員たちがついて行き、長井も浩太との付き合いがあったから協力してくれたわけで、「今のIWAKURA」と言われると、ちょっと悲しくなる。

そこから小森がIWAKURAに復帰。

試作に苦戦している舞たちを見かねて、小森が電子炉に長めに入れることを提案したことでうまくいき、さらに転造では笠巻が「秘策」として自分の師匠を頼り、ボルトがついに完成する。

ものづくりの町において、中小企業が互いに機械や知恵を借り合う様は、現実によくあることだそうで、これは舞がセミナーで熱く語った複数の企業の協力の第一歩となるのかもしれない。

一方、舞の仕事がうまくいき、品質試験を待つ段階で、貴司は舞と一緒に選んで応募した短歌が「長山短歌賞」に選ばれたり、久留美(山下美月)が恋人の医師・八神(中川大輔)にプロポーズされたりと、それぞれに朗報が。

しかし、本作の場合、3人それぞれに希望が見えてくると、不穏な展開が待ち受けている繰り返しだっただけに、逆に次週が不安になる。

ちなみに、今週は久しぶりに舞が無理難題を持ち込み、従業員に頭を下げて強引に頼み込む、ドヤ顔をする、貴司と手を取り合ってドキドキ、RPGのような劇伴......と、トーンの違いに微妙な違和感を抱いていたら、脚本はメインライター・桑原亮子だが、演出を航空学校編の演出家が手掛けていた。

さらに次週の第18週は再び脚本家が佃良太に代わるため、その違いにも注目したい。

文/田幸和歌子
 

田幸和歌子(たこう・わかこ)
1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経て、フリーランスのライターに。ドラマコラムをweb媒体などで執筆するほか、週刊誌や月刊誌、夕刊紙などで医療、芸能、教育関係の取材や著名人インタビューなどを行う。Yahoo!のエンタメ公式コメンテーター。著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)など。

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