【舞いあがれ!】いよいよ本編突入へ。異例の「子役時代3週目」で描かれた「光」と「影」

毎日の生活にドキドキやわくわく、そしてホロリなど様々な感情を届けてくれるNHK連続テレビ小説(通称朝ドラ)。毎日が発見ネットではエンタメライターの田幸和歌子さんに、楽しみ方や豆知識を語っていただく連載をお届けしています。今週は「大人の世界、子どもの世界の『光』と『影』」について。あなたはどのように観ましたか?

※本記事にはネタバレが含まれています。

【前回】これぞ朝ドラ...!「15分の積み重ね」で丁寧に描く「ヒロインの成長」

【舞いあがれ!】いよいよ本編突入へ。異例の「子役時代3週目」で描かれた「光」と「影」 pixta_2694162_S.jpg

福原遥がヒロインを務めるNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』の第3週が放送された。

本作は、ものづくりの町・東大阪で生まれたヒロイン岩倉舞(福原)が、長崎・五島列島に住む祖母や様々な人との絆を育みながら、空を飛ぶ夢に向かっていく挫折と再生のストーリー。

今週は、東大阪に戻った舞(浅田芭路)と周辺の人々の変化、大人の世界と子どもの世界の光と影が描かれる。

五島列島での日々でたくましくなった舞。

岩倉家では、そんな舞に触発された父・浩太(高橋克典)と兄・悠人(海老原幸穏)の手作りカレーが登場する。

さらに、飛行機に乗った興奮を伝える舞は、浩太も飛行機を作ることが夢だったと知ることに。

父は頑張って勉強し、良い大学に入り、大きい会社に入って、飛行機を作る部署に行ける段階にいたが、父が亡くなり、ねじ工場を継ぐために会社を辞めたのだった。

しかし、今でも飛行機の部品を作るという夢は諦めていない。

奇しくも父と同じ夢を抱く舞。

一方、小さな工場を経営する浩太のようになりたくないから東大に行きたいと言う悠人が、エリートだった浩太と似た道を歩んでいるのも興味深い。

一方、舞が一緒に飼育係をしていた久留美(大野さき)は、ウサギのスミちゃんが死んでしまったことを機に、同級生たちに仲間外れにされていた。

久留美は舞が学校を休んだときに手紙をくれた優しい子だ。

そして今度は舞が久留美に、ウサギは自分の病気を隠すと本で読んだこと、スミちゃんが死んだのは久留美のせいではないことを伝えることができた。

一方、大人の厳しい現実も描かれる。

海外との競争も激化する中、浩太の工場は、長年の取引先から取引を終了されてしまう。

より安くより良い品質のものを求めて来たのは、まさに私たち自身で、取引先が悪いわけではない。

しかし、浩太の会社は経営危機に瀕し、悠人の私立中学受験も危うくなる。

そんな中、父に元気を出してもらおうと、舞は模型飛行機を作ることに。

これは、父との週末の遊園地行きが延期になったことで落胆した舞が、江戸時代の絵図を参考にして祖母からもらったばらもん凧に翼をつけようとして、すぐに落ちてしまったのがきっかけだ。

舞は浩太に習おうとするが、多忙な父を見て、自力で勉強を始める。

そこで、舞が貴司(齋藤絢永)と訪れたのが、古本屋「デラシネ」だ。

舞は模型飛行機の作り方の本を購入し、工場の若手職人・結城(葵揚)にも手伝ってもらいつつ、模型飛行機を作る。

その傍らで、貴司は店主・八木巌(又吉直樹)の書いた詩集に心動かされる。

舞の夢が、自然に「五島列島・ばんば・ばらもん凧→東大阪・父・飛行機」という流れで描かれる一方、「普通」になじめない貴司の中でも何かが芽生えつつあるようだ。

そして、舞は貴司と二人だけの「秘密基地」デラシネに久留美を誘う。

「家庭」と「学校」がともすれば世界の全てである子ども時代、家庭や学校に問題が生じたとき、他に「居場所」を得ることの大切さ。

そんな久留美の心の安らぎは、ケガで会社を辞め、仕事が決まらない元ラグビー選手の父・佳晴(松尾諭)を癒していく。

一方、浩太は仕事をもらえるよう、方々に頭を下げる日々だが、それを見ていた若手社員が、「特殊ネジ」の試作を頼んでみてはと上司に提案。

その金型製作を無理なスケジュールで頼まれた曽根(蟷螂襲)も、浩太の父に世話になったことや、新しいことを始めようとする浩太の思いに応え、引き受けてくれた。

しかし、今度は機械が故障してしまう。

そこで修理を頼まれた機械工場の古田(湯浅崇)は、自身の納期もあるため断るが、お好み焼き屋「うめづ」の勝(山口智充)らに責められ、舞の親孝行ぶりにほだされ、結局、請け負うことに。

周囲に支えられた浩太は期限ギリギリに特殊ネジを完成、提出できた。

そして日曜日、小学校の校庭で舞と久留美の作った模型飛行機は高く舞い上がり、父たちを元気づける。

その様を少し離れた場所で見ている悠人の表情が実に良い。

一方、浩太の納品した特殊ネジは非常に良い品質だったため、大量発注を得て、経営危機を脱する。

 

田幸和歌子(たこう・わかこ)
1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経て、フリーランスのライターに。ドラマコラムをweb媒体などで執筆するほか、週刊誌や月刊誌、夕刊紙などで医療、芸能、教育関係の取材や著名人インタビューなどを行う。Yahoo!のエンタメ公式コメンテーター。著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)など。

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