"ますらお"には「強く堂々とした、立派な男子」の意味があります。筆者である元・陸上自衛官のぱやぱやくんは、自衛隊の教育機関にいた頃、「ますらお至上主義者」と出会い、感じました。まさに「陸上自衛隊=ますらお」であると! 恋愛模様や気合いの洗濯など、普段はなかなか知ることのできない陸上自衛官のリアルを赤裸々に描いた『陸上自衛隊ますらお日記』(KADOKAWA)。ますらお達の愛とユーモアに溢れた世界をのぞいてみませんか?
※本記事はぱやぱやくん著の書籍『陸上自衛隊ますらお日記』から一部抜粋・編集しました。
【前回】自衛隊員にとっても結婚は一大イベント! しかし、2次会には十分な警戒を/ますらお日記
結婚したますらおは、ついに愛の巣を手に入れる
駐屯地を卒業したますらおの愛の巣は、「官舎」になることが多いです。
官舎は団地のような建物で、割安(平均2~5万円)で3DKほどの物件に住むことができます。
周りの土地の相場によって家賃が変動するため、周りが田んぼばかりの僻地では月数千円、都心の官舎だと月10万円以上となっています。
きれいな官舎は大人気で取り合いとなるので、幸運に恵まれない限りは古い官舎に住むことになります。
古い官舎には「バランス釜」という昭和の遺産が未だに現役だったり、全室が古い畳の「過剰なわびさび物件」だったり、雑木林からベランダに虫達が空挺降下を繰り返す物件もあるので、家族がガッカリすることも珍しくありません。
ただ、そんな官舎であっても駐屯地にずっと住んでいたますらおにとっては、まさに自分の城であり、楽園でもあります。
駐屯地の外に住むことに憧れていた彼らにとっては、周りは田んぼばかりでコンビニまで徒歩20分、エレベーターもない5階建ての健脚向けの物件でも、東京タワーが見られる港区のマンションに等しいのです。
一方で、人気の新しい官舎は高層でエレベーターが完備されていたり、都心に近かったりなどのメリットが多く、奥さんが「自衛官と結婚してよかった」と微笑むようになります。
特に南西諸島にある新しい自衛隊官舎に住めれば、ベランダから南風を浴び、毎日がリゾートマンション気分で暮らすことができます。
羨ましいですね。
そうして、ますらおは越してきた部屋を、今までイメージをしていた理想の家にしようとします。
「大きなソファーを置いて、大画面のテレビを置こう」や「カーテンは青色にしよう」などウキウキで提案をする姿は微笑ましいものです。
しかし、営内生活で殺風景な部屋に住んでいたますらおは、所さんの世田谷ベースのような「おしゃれな大人のルーム」を目指すこともあります。
ガラスのショーケースを買って、ガンダムのプラモデルを飾ろうと計画をしたり、高級なグラスセットとアロマキャンドルを求め、ベランダにキャンプ用の折り畳み椅子を設置したりしようとします。
そのため、奥さんから「何考えているの! みっともないからやめて!」と怒られることも。
結局、自宅には相変わらず奥さんという営内班長がいて、「ここを掃除して」「何時までに帰ってきて」と言われるのです。
後輩もいないので、自宅では最下級戦士としてお風呂場の排水口のヌルヌルと格闘することになります。
一方で奥さんが寛容な場合は、ガンダムグッズの展示やキャンドルセットも許可されますが、ゴチャゴチャして統一感がないことがほとんどです。
また、筋トレマニアの官舎には、謎の筋トレマシンがゴロゴロ置いてあることもあります(そんな家に遊びに行くと、お酒を飲む前に謎のエクササイズでたっぷり汗をかく羽目になります)。
それを見越して自分の結婚相手に求めるものを「無類の酒好き」などに絞っている隊員も一定数おり、二人で理想の家を作っている人もいます。