昨年の大河ドラマ『西郷どん (SEGODON)』を演じている時に比べ、かなりスリムになった鈴木亮平さん。2年ぶりの舞台『渦が森団地の眠れない子たち』で、小学生の役に挑戦します。
小学生の頃のいちばんの思い出は"初恋"
「小学生の役ということですが、まったく不安はないです。西郷どんみたいに、自分より年上の人間を演じる時のほうが、想像力をたくさん使います。僕もその昔は小学生で(笑)、通ってきた道なので、意外とスッとその感覚に戻れるかなと思っています。今回は渦が森団地にいる藤原竜也くん演じるガキ大将に気に入られている、優しい男の子の役を演じます。あることをきっかけに、ガキ大将に代わって、僕がリーダーにと担ぎ出される...子どもたちの下克上を描いていきます。一見、コメディーのようですが、子どもたちの世界を描きながら、子どもたちの残酷なところや考えを通して、大人の世界が映し出されるような人間ドラマになると思います。藤原竜也くんとは、10年ぶりの共演です。彼は大人ではあるけれど、ずっと変わらず童心を持ち続けている人です。役にもぴったりだなと感じています」
鈴木さんにとって小学生の頃のいちばんの思い出は初恋だそう。
「小学校5年生の時に林間学校がありました。その時、幼なじみの女の子がお風呂上がりの濡れ髪で、ピンク色のパジャマを着て階段から下りてきたんです。"あれ? この子、こんなにかわいかったっけ?"と思うくらい神々しくて、階段を下りる姿が映画の1シーンみたいに、スローモーションで見えたんです。お風呂上がりのパジャマ姿という、非日常感がよかったんでしょうね。それ以降、彼女と話す時は、急にドキドキしてしまって"いままで友達に、あの子がちょっと好き"と話していたような時とは全く違う。この感じが恋なんだ。僕の初恋はこれだ! と分かりました。それから5年間、 その子に片思いをしていました。 でも中3で、その子が僕の友達と付き合っていたことが判明して、傷つきましたが(笑)」
恋の話には続きがあって...。
「でも、大人になってから、その女の子からもらった誕生日プレゼントと手紙が引き出しから出てきて、その手紙を読んで"この内容は、ひょっとして僕のこと好きだったのかな?"と感じたんですよ。当時の鈍感な僕はそこに全く気付かなかったのだと思いますが(笑)」
おばあさまの少女時代の日記に感銘を受けて
この舞台は、見る私たちが昔の自分の気持ちを思い出すきっかけにもなるかもしれません。「女性の方の感じ方は僕とは違うかもしれませんけれど...」
そう言うと、鈴木さんは、懐かしそうにおばあさまの思い出を語り始めました。
「そう思ったのは、二年前に亡くなった祖母の昔の日記を読んだからかもしれません。とても衝撃を受けました。戦前生まれの祖母が少女時代から、年老いて体調を崩し字が震えるようになってまでも毎日つけていたんです。戦中から戦後の紙がなかった時代でも、紙を表裏使って、ギッシリ書いていて。例えば結婚した後、"本を読んでいるとそんな道楽に時間を使ってと怒られる。いま、女性の社会進出などと言っているが、そんなのはまやかしだ。女性が本も読めないような時代では、何年かかっても女性は社会進出ができない"と、あの時代の女性の社会での生きにくさもはっきり書いてあって驚きました」
そして女性同士の友情の深さも知ったと言います。「"工場に○○さんが来た。すてきな人だ。一緒に話してくれないかな"と書いてあったその憧れていた人が、それ以来の親友になっているんです。連続テレビ小説『花子とアン』(2014年)の放送の最後に、視聴者が送った親友の写真がオンエアされたのですが、その親友が実は僕の祖母で、2人の写真が出たんです。それくらい仲のいい親友との出会いも書かれていて、若い頃の祖母がどんなことを考えていたのかを、知ることができて興味深かったです」
最近は、舞台に向けて動ける体を作っているそう。
「いままでは筋トレをメインにやっていたのですが、それだけでは健康的にも良くないなと、走ったり歩いたりすることも大事だと気付きました。今日も朝、走ってきたんですよ。小学生の役なので、動き回ると予想しているので、動ける体を作ろうと、いまは体幹も鍛えるようにしています。この舞台は大人にこそ楽しんでもらえる子どもの話です。また、素晴らしい俳優である竜也くんと、舞台上でぶつかる機会はなかなかないことなので、僕らの演技合戦も楽しみにしていただけたらなと思います」
■舞台情報
Sky presents 『渦が森団地の眠れない子たち』
作・演出:蓬莱竜太
10月4日(金)~20日(日)
出演:藤原竜也、鈴木亮平、奥貫 薫、木場勝己 ほか
会場:新国立劇場 中劇場
住所:東京都渋谷区本町1-1-1
問い合わせ:ホリプロチケットセンター
電話:03-3490-4949
交通アクセス:京王新線(都営新宿線乗り入れ。京王線は止まりません)「初台駅」中央口直結
※2019年 10月26日(土)~11月17日(日)にかけて、鳥栖、大阪、名古屋、広島、仙台にて順次上演。
構成/吹春規子 取材・文/落合佑桂里 写真/吉原朱美 ヘアメイク/森泉謙治(THE GLOBES) スタイリスト/八木啓紀 衣装協力/リーミルズ エージェンシー(電︎話03-5784-1238)、COS(電話︎03-3538-3360)