
※写真はイメージです
『歩いて旅する、ひとり京都』 (山脇りこ/集英社)第6回【全8回】
NHK「あさイチ」などに出演する料理家でエッセイストの山脇りこさんは、大の関西旅好き。年に4、5回は京都や大阪を訪れるそうです。そんな山脇さんの新刊が、旅エッセイ『歩いて旅する、ひとり京都』(集英社)。 「京都は歩くだけで楽しい街」と語る山脇さんが提案するのは、誰にも気兼ねせず、気の向くままに歩を進める贅沢な旅です。 京都、そして大阪、大津、近江八幡、明石、城崎...、一歩踏み出して"私とふたり"で歩けば、新しい景色やグルメに出合えるかもしれません! 今回は本書の中から、意外にも山脇さんにとって難関だったという「ひとりごはん」の楽しみ方について紹介します。
※本記事は山脇 りこ(著)による書籍『歩いて旅する、ひとり京都』から一部抜粋・編集しました。
錦市場に近い「空想コンプリート」もいい。表通りから、ここ? かな?と半信半疑で細い路地をすすむと、いちばん奥にある。
午後3時ごろからやっているのがありがたい。ドアをあけて入ったら、右手にずらっと並ぶ、主に世界の自然派と日本のワインたち。日本ワインは、共栄堂や、國津果實酒醸造所など、こだわりを感じるラインナップ。すべてのボトルに価格のプレートがぶら下がっていて、実に明朗。自分で好きなボトルを選んで飲むこともできる、が、私はひとりではそこまで飲めないのでグラスで。シェフが丁寧に説明してくれるから、その日開いているワインから選んで楽しんでいる。
てらいのない、つまりまちがいないおつまみも。たとえば真冬、小ぶりの熱々のグラタンに冷えたオレンジワイン、最高デス。
そこまでおなかが空いていないとき、さくっと2杯ほどをいただくなら、私はいわゆるオレンジワインをお願いすることが多い。
オレンジワインとは、白ブドウで赤ワインを作った、と考えたらいいと思う。赤ワインの黒ブドウを白ブドウにおきかえて、白ブドウの果皮(場合によっては小さな枝も)と果汁とを一緒に発酵させ醸す。黒ブドウの場合アントシアニンという赤や青の色素が出て赤ワインになるが、白ブドウの場合は果皮中にアントシアニンがないため、うっすらした黄色やオレンジに仕上がる。ちなみに黒ブドウを使って、白ワインの作り方で作るのがロゼ(いや、白に赤をまぜたなんちゃってもありますけど)。
ワイン発祥の地といわれるジョージアでは、伝統的にクヴェヴリ(陶器の壺)を土中に埋めてワインを作っていて、白ブドウの果皮も種も果汁と一緒にすべてその壺に入れ発酵させて白ワイン、つまりオレンジワインを作っていたそうだ。ちなみに、ジョージアではアンバーワインと呼ぶ、まさにアンバーだもの、なんだかこっちがステキ。
白ブドウで赤の作り方、なので、白の持つ香りのよさや軽やかさもありつつ、赤の持つ渋みもあり、ときに苦みもあり、白より味に厚みがあり、複雑で予測不可能な味わいだと思う。
また、白ワインは自然の酸化防止剤ともいうべきタンニンがないため、亜硫酸塩(酸化防止剤)を加えずに市場に出すことが難しいとされている(一般的に)。しかし、オレンジワインには赤ワインより少ないとはいえタンニンが含まれるので、亜硫酸塩を控えて、あるいはなしで市場に出すことが比較的容易らしい。ということで、自然派ワインを作りたい生産者がこの作り方に注目し、作り手が増えた背景があるようだ(オレンジだから自然派っていうわけじゃありません)。
ということで、白より味わいが複雑で、赤よりは軽いオレンジワインは、軽く食べながらワインそのものを楽しむのにぴったり、だと思うのだ(個人の見解です)。
昼下がり、錦市場のインバウンド喧騒をよそに、カウンターでワインを眺めながら、軽やかなおつまみとアンバーなワインをいただく、ああ至福。
ちなみに、お隣は日本酒をくいっといきたい「ツキノコグマ」という店。空想コンプリートに行くためには必ず前を通るわけだが、ものすごおおく気になりつつも入ったことがない。カウンターはいつも満席に近くて、いつか、ひとりで入ってみて、この細い路地をコンプリートしたい。








