【京都ひとり旅】旅の夜は「ホテルでひとり精進弁当」。心が安らぐ、奥ゆかしい京の味

【京都ひとり旅】旅の夜は「ホテルでひとり精進弁当」。心が安らぐ、奥ゆかしい京の味 pixta_125238925_S.jpg

※写真はイメージです

『歩いて旅する、ひとり京都』 (山脇りこ/集英社)第4回【全8回】

NHK「あさイチ」などに出演する料理家でエッセイストの山脇りこさんは、大の関西旅好き。年に4、5回は京都や大阪を訪れるそうです。そんな山脇さんの新刊が、旅エッセイ『歩いて旅する、ひとり京都』(集英社)。 「京都は歩くだけで楽しい街」と語る山脇さんが提案するのは、誰にも気兼ねせず、気の向くままに歩を進める贅沢な旅です。 京都、そして大阪、大津、近江八幡、明石、城崎...、一歩踏み出して"私とふたり"で歩けば、新しい景色やグルメに出合えるかもしれません! 今回は本書の中から、意外にも山脇さんにとって難関だったという「ひとりごはん」の楽しみ方について紹介します。

※本記事は山脇 りこ(著)による書籍『歩いて旅する、ひとり京都』から一部抜粋・編集しました。

精進弁当も、京都なら

茶福箱のような仕出し弁当は、京都ならでは。デパートでもさまざまな老舗弁当を求めることができる。それに地酒やワインか、おいしいお茶をお供に、ホテルで食べるのも好きだ。

そんな中で最近の私のお気に入りは「矢尾治」。精進料理の仕出し屋さんだ。

建仁寺の特別なお茶事でふるまわれた精進弁当が矢尾治さんのものと友人から聞いて、興味津々。受け取りに行けばひとつからでも購入できると知り、精進折詰二段というお弁当を予約して、五条通をてくてく歩いて訪ねた。

いただいてみたらもう、感動でした(ボキャ貧)。胡麻豆腐や、海老芋の西京焼き、れんこんのから揚げなど、上品で、味に濃淡を付ける精進の工夫も楽しく、今の身体にも気分にもぴったり。

精進料理では、"もどき"にいつも考えさせられる。"もどき"とは、うなぎのかば焼きそっくりのお麩とか、ひき肉にしか見えない大豆とか、食べてはならない食材にそっくりなもののこと。"もどき"を前にすると、「うむ、そんなにうなぎが食べたいか?」と、可笑しみがわき上がってくる。

台湾に福建省から伝わったといわれる料理で「佛跳牆(ぶっちょうそう)」というのがある。陶器の壺に、丁寧に数日かけてもどした貝柱やアワビ、ふかひれ、金華ハムや白子など十数種類の高級食材とスープを入れ、時間をかけて蒸し煮して作る贅沢の極みのスープだ。台湾では大晦日のご馳走でもある。本来は素食=精進料理しか食べてはならないはずの修行僧が、あまりのおいしそうな香りに塀を飛び越えて跳んでくる、というのがその名の由来。

これを知ったときも、そこまでうまいのか、という感想より「ヒトはやはり、肉や魚介のうまさを忘れられないのか、煩悩か」と思ってしまった。

矢尾治の精進弁当には、そこまでの"もどきっぷり"が見られないのが好感。どれもそのままの姿でおいしいものばかり。お疲れ気味のときも、安心して食べられるほっとするお弁当だ。やっぱり精進は材料にごまかしがきかないな、としみじみ。そこが私が精進好きな理由でもある。

大きなお茶事がある日などは、買えないこともあるので必ず電話で予約して。

 
※本記事は山脇 りこ(著)による書籍『歩いて旅する、ひとり京都』から一部抜粋・編集しました。
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