サッカー日本代表・酒井宏樹が語る、自分の体の見直し術/リセットする力

サッカー日本代表・酒井宏樹が語る、自分の体の見直し術/リセットする力 24051836.jpgフランスの名門マルセイユで不動の地位を確立し、サッカーワールドカップロシア大会での活躍が期待されるサッカー選手、酒井宏樹。しかし彼は「弱気」で「人見知り」という性格の持ち主だった...。
サッカー選手に不向きなその性格をいかにして克服してきたのか? 本書『リセットする力「自然と心が強くなる」考え方46』で、その具体的な方法を探っていきましょう。

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第三者にも自分を客観的に見てもらう

マルセイユに移籍するとき、僕のなかにあるテーマがあったのです。

「マルセイユというビッグクラブで自分が通用したら、この先もチャンスはある。そのためにも自分がやれることは全部やろう。それをやってダメなら日本に帰ろう」
実際、やれることを全部やってここまで成長できたので、僕がやってきたことは間違いではなかったのだと思います。では、具体的には何をしたのか。


まず、自分の体を見直すことから始めました。ハノーファーからマルセイユへの移籍が決まり、シーズンオフで日本へ帰国したときに、柏レイソルのトレーナーである赤井寛之さんに体を見てもらい、筋肉のつき方やバランスをチェックしていただきました。

すると、ドイツで強靭なヨーロッパの選手と対等に渡り合うため無理に筋肉をつけたことが原因で体のバランスが崩れ、常にハムストリング(太もも裏の筋肉)に痛みを抱えている状態でした。赤井さんに細かく見てもらうと、臀部(でんぶ)の筋肉をうまく使えておらず、片脚立ちのバランスも非常に悪いことが判明しました。そのことでハムストリングに負担がかかっていたようです。

 
自分の感覚を大事にしてあげる

ドイツに行く前まで確かにあった「自分の思ったとおりに走れる」という感覚は、ハノーファー時代にはあまり感じることができなくなっていました。そこで、マルセイユで挑戦するためにも、また自分の思いどおりに動かせる体にしたいと思い、赤井さんに改善プログラムをつくってもらうことに。

フィジカルコンタクトは筋肉量よりも、体を相手にぶつけるタイミングのほうが大切。であれば無駄な筋肉をつけるのをやめて、自分に合った筋肉をつけようと考えました。

マルセイユのフィジカルコーチに相談すると、彼も僕の意見に賛同してくれて、筋トレでは必要以上の重量で追い込むより、自分の体重よりプラス5キロの錘(おもり)で筋肉のバランスや協調性を意識した取り組み方に変えていきました。それによって自分の体を思いどおりに動かせる感覚が蘇り、このトレーニング法は自分には合っているという結論に達しました。マルセイユに来てから、ハムストリングの痛みはまったくありません。

他にも血液検査をして、食事のアレルギー反応を調べたり、昼寝を含めた睡眠のとり方、ウォーミングアップの方法、クールダウンの仕方、マッサージは試合の何日前にやるのが自分には合っているのか、などいろいろ試しながら自分に合ったものを探していきました。

警告(イエローカード)の累積で出場停止になったときには1週間時間ができますから、赤井さんへ連絡して、その期間だからこそ取り組めるメニューを考えていただいています。その他に、毎年シーズンを通してのメニューもつくってもらっているため、赤井さんには感謝の気持ちでいっぱいです。

自分ができることはすべて試して、細かいところまで突き詰める。重要なのは、それを習慣化して継続すること。ルーティン化させて日常に取り込むことができれば、当たり前のことのように継続ができます。だから僕はグラウンドに残る時間が多くなりましたし、チームで最後にクラブハウスを後にするのは、いつも僕かディミトリ・パイェのどちらかです。

 

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撮影/千葉 格 

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酒井 宏樹(さかい ひろき)

1990年4月12日、長野県生まれ。千葉県柏市で育つ。柏レイソルU-15、U-18を経て2009年にトップチームへ昇格。2010年にJリーグデビュー。2011年にはチームの主力として活躍し、チームのJ1優勝とともに、ベストイレブン、ベストヤングプレーヤー賞を受賞。同年10月にはA代表に初選出される。日本での活躍が評価され2012年にドイツ・ブンデスリーガのハノーファー96へ完全移籍。主力として活躍した後、2016年6月にフランスの名門オリンピック・マルセイユへ完全移籍。マルセイユ移籍後も確固たる地位を築き、不動の右サイドバックとして活躍。日本代表でも欠かせない存在として、2018年ロシア・ワールドカップでの活躍が期待されている。

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『リセットする力「自然と心が強くなる」考え方46』

(酒井 宏樹/KADOKAWA)

「日本人は活躍できない」という前評判を覆し、フランスの名門マルセイユで不動の地位を確立し、世界の注目を集めるサッカー選手となった酒井宏樹。彼はいかにして「自信のなさ」と「メンタルの弱さ」を克服し、心を強くしていったのか。自然と心が強くなる具体的な方法をこれまでのエピソードをとおして初公開!

 
この記事は書籍『リセットする力「自然と心が強くなる」考え方46」』からの抜粋です。
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