夫が亡くなり、黒柳徹子さんから届いた「特別な言葉」。ファッションデザイナー・鳥居ユキさんインタビュー

日本を代表するファッションデザイナーの鳥居ユキさん。1962年に19歳でコレクションデビューを飾って以来、現在も第一線で活躍中です。このたび、日々を彩るこだわりが詰まった『80歳、ハッピーに生きる80の言葉』を上梓しました。

この記事は月刊誌『毎日が発見』2023年11月号に掲載の情報です。

夫が亡くなり、黒柳徹子さんから届いた「特別な言葉」。ファッションデザイナー・鳥居ユキさんインタビュー _AAA0046.JPG

夫が亡くなって届いた黒柳徹子さんからの手紙

――本の中で、コロナ禍でオンラインでの接客に初挑戦する姿もありましたね。

そういうことができると聞いてすぐに「やる!」ととびつきました(笑)。

遠方でなかなかお会いできないようなお客様ともオンラインで繋がれるので楽しいですよ。

最初はみなさん緊張されていたけど、すぐに慣れて手を振って挨拶したり、ハッピーなやりとりがいまも続いています。

コロナ禍でも新しいことに挑戦してみたら、お客様がとっても喜んでくださった。

どんな状況でもマイナスの面だけじゃない、何かしらプラスになることを発見できると思っています。

――コロナ禍の2021年に夫の高雄さんを亡くされました。

「頑張って生きるよ」と言って、本当に頑張って生きてくれました。

お互いすごくやりきった感があります。

やりきったというのは、生きるために必要なこと全てね。

だから私も満足しています。

人間、生きているからには日々、やらなくちゃいけないことがいっぱいあるじゃないですか。

仕事もしながら、いろいろなこともしながら、食事だっておいしいものをいただきたいし。

それが暮らし。

だから、意外とおいおい、めそめそ泣いてるってことはないんです。

亡くなって今年で2年になりますが、全てのことに感謝しています。

伝える言葉は、「ありがとう」しかないですね。

彼が亡くなってすぐ、黒柳徹子さんからお手紙をいただきました。

そこに「お祝い」という言葉があったの。

「素晴らしいパートナーにお会いになられたことをお祝いいたします」って。

素敵よね。

以前、スタイルブックを出版したときは帯に「美しい冒険を見た」という言葉を書いてくださったけど、やっぱりこの方の言葉は特別ですね。

このときのお手紙はハンドバッグに入れて、いつも読み返しています。

整理整頓をしたら愛するものと再会できる

――ファッションでうまく「冒険」するコツは?

みなさん怖がって「冒険」とおっしゃるけど、買わなくてもいい。

店頭で合わせてみるだけでもいいのよ。

そうやってトライしていくうちに、「こういうの好きだわ」って自分の好みが分かってくると思うのね。

好きなものを身につけるとルンルンするし、そうすると人に褒められる。

褒められたら、もっと楽しくなるでしょう?

だから「そういうのは無理よ、私には似合わないわ」なんて決めつけないで、気軽にトライしてみるといいですよ。

好きという気持ちから楽しさが見つかるんですから。

自分の楽しさを拒否しちゃだめよ。

――読者には、片付けの悩みを持つ人も多いのですが。

片付けに関してはプロではないのでなんとも言えないのですが、私個人は"捨てない"主義。

まわりにあるものはみんな好きで買ったものだから、全部取っておきます。

たとえすぐに活かせなくても、いつか活躍の場が出てくるんですよ。

ただ、ぐちゃぐちゃなままだとどこに何があるか分からないし、それは捨てたのと同じだから、整理整頓は大事ね。

とにかく分類します。

バッグ、ベルト、靴と種類ごとに分類して、写真に撮ってファイルしておくの。

流行というのは巡るから、しばらく出番がなくてもそうやって整理しておけば、また引っ張り出して使えるじゃない?

最近は終活だとか断捨離が流行語みたいになっているけど、整理整頓を始めたら「あら、こんなのもあったわね」って愛していたものたちとまた再会できますよ。

そうして自分の好きなものに囲まれていたら毎日ハッピーじゃない!

――ご家族との関係はいかがですか?

娘との関係はだんだん変わってきてるわね。

前は真貴って名前で呼んでいたけど、いまは一人の女性として尊重して、真貴さんって呼んでいます。

そうするとお互い自覚が生まれるから。

女同士の親子って、ともすると戦いになってしまうけど、うちは友人のような関係でいられています。

洋装店を創業した祖母、その店を大きくした母の影響をよく聞かれるんですけど、私は母と祖母をどっぷり尊敬していましたから、とっても尽くしました。

母も祖母も私に尽くしてくれました。

そういう時代だったんです。

でも、いまは時代も違うし、家族ごとにスタイルが違いますから。

そうそう、孫がカナダに行っていて、もうすぐ帰ってくるのですが、孫にも家庭料理を教えたりします。
30年間うちのことはお手伝いさんにお任せしているので、私はお料理はしないんだけど、好みのものに仕上がるまで「玉ねぎはこのくらい柔らかい方がいいかも」とか「切り方をこうしたら?」とか言って作り直してもらうんです。

そのつど、続けて5回も食べることがあるし、お手伝いさんにも食べてもらって、私好みの味を作ってもらっているんです。

おいしいものを食べたいなら、私も努力しないとね。

だから孫にも、その秘訣を教えているの。

全然特別なものじゃなくて、いたって普通の家庭料理ですけど、そういうほうが外国に行ったときでも役に立つでしょう?

うちの料理はお客様にも大好評なんですよ。

――お好きな献立は?

好きなものはいっぱいあるけど、みなさんが喜んでくださるのはアジフライね。

オリーブオイルで二度揚げするからサクサクなの!

それにさっと茹でたキャベツと玉ねぎを添えると、いくらでもお野菜を食べられるんです。

夫が亡くなり、黒柳徹子さんから届いた「特別な言葉」。ファッションデザイナー・鳥居ユキさんインタビュー _AAA0079.JPG

60年以上、デザイナーとして休まず走り続ける鳥居さんのパワーの源泉は"好き"という気持ち。「もともとこの仕事が好きだし、お客様が喜んでくださるのを見るのが好きなんです」

 

ファッションデザイナー

鳥居ユキ(とりい・ゆき)さん

1943年東京都生まれ。62年に19歳でのコレクションデビュー以来、1回も休むことなく新作を発表し続けている。2006年に日本版『Newsweek』にて"世界が認めた日本人女性100人"に選出。「YUKI TORII」のデザイナー活動に加え、インスタグラムでさまざまな情報を発信している。

71tFbqmyFrL._SL1484_.jpg80歳、ハッピーに生きる80の言葉

鳥居ユキ
主婦と生活社 1,760円

19歳でデビューし、今年でデザイナー生活61年目、80歳になった鳥居さんが、日々の暮らしの中で見つけたハッピーの数々を綴った珠玉のエッセイ。日々のルーティンをおろそかにせず、愛するものたちに囲まれ、どんなささいなことからもハッピーを見つけ、新鮮に毎日を送る。そんな鳥居さんの言葉から前向きなパワーをもらえる一冊。お気に入りのコレクションやファッションのこだわり、日常の風景を切り取った美麗な写真の数々も目を楽しませてくれる。

この記事に関連する「趣味」のキーワード

PAGE TOP