「近所の子供たちには『八嶋のおばちゃま』と呼ばれています(笑)」八嶋智人さんインタビュー

時代が求める「女の幸せ」に激しく固執する保守的なマーナと、その価値観に激しく反発するマイラ。1950年代から約30年間にわたる両極端な双子の人生を、アメリカの歩みとともに描き出した舞台『ミネオラ・ツインズ』。出演する八嶋智人さんに、この作品の楽しみ方を伺いました。

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全てを女性に委ねる毎日です!?

――女性の人生について考えさせられる本作にちなんで、八嶋さんの女性観を伺えますか?

僕は事務所の社長もスタッフも女性で、「これをやりなさい」と言われた仕事を「はい」と言ってやる毎日。

僕に拒否権などございません(笑)。

私生活でも妻の言うことには120%「イエス」です。

言ってみれば、僕はあらゆる場面で女性に全てを委ねているんです。

この間、占いの番組で、妻と結婚していなかったら、スキャンダルまみれの人生だったと言われまして。

妻とは舞台の共演で知り合って、当初は妹みたいな存在でしたが、いまとなっては教祖と信者のような関係です。

もちろん僕が信者です。

月日というのは、すごいものです。

――八嶋さんは女性役を演じられてもチャーミングですね。女性への理解が深いのでは?

僕、筋力があまりないのか、かばんもひじにかけて、オバサン持ちすると楽なんですよ。

近所の子どもたちにも「八嶋のおばちゃま」と呼ばれています。

なぜか体臭もミルクっぽいらしく(笑)。

今年の夏も所属している劇団(カムカムミニキーナ)の公演で、元女優役をやりましたが、やはり違和感もなく。

だから、ちっちゃいオバサンが自分の中にいるというか、もう半分ぐらいオバサンかと...。

でも、50歳も過ぎると、男もどこかオバサンみたいになって、それまで気付かなかった楽しみも見いだせるようになってくる。

体力的な衰えはありますが、それより、幸せだなと思える価値観を複数見つけられるようになることが、年を重ねる良さなんだと思います。

まさに毎日が発見です。

時代の影響を避けられない女性たち

――今回の舞台はジェンダー観が変化しつつあるいまの時代に合っているように思います。

男らしさ、女らしさって何なんだというコミュニケーションがようやく日本でもできるようになってきていると感じています。

これは女性であることで時代に翻弄される双子の話ですが、双子であることの悲喜劇でもあるなと。

仲は良くても、成長するにつれ、ちょっとでも髪形を変えて見せたいとかが出てくる。

その差異が極端に出てしまったのがこのふたりで、ひとりは古きよきアメリカの理想を追い求め、一方は極端に反発する。

どちらにしても、時代の影響は避けられないんですよね。

そんな双子の姉妹役を大原櫻子さんがひとりで演じ分けるのも面白いんです。

そこに小泉今日子さんと僕が関わっていく。

小泉さんは僕の役者としてのターニングポイントで、そばにいてくださることが多い先輩です。

2002年上演の小泉さんと小林聡美さんの主演舞台『おかしな2人・女編』もそうでしたし、僕の初主演舞台『エドモンド』のときは、多くの主演オファーがあった中で、この作品が面白そうだから、と初めて脇役として出演してくださった。

本当にかっこいいなと思います。

そして、どこまでもかわいい。

それは大原さんも同じです。

すごくチャーミングで、内面は力強く逞しい。

そんなふたりに挟まれて、僕は普段通り、委ねていられるなと(笑)。

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きっと年齢を重ねた女性の皆様ほど、双子が歩む30年間に響くものがあると思いますし、このふたりが最後に辿り着く感情は、年を重ねた女性だからこそ分かる特権なのではないでしょうか。

若いやつには分かるまい!ぐらいの気概で、劇場に見にいらしていただけたら、うれしいです。

取材・文/多賀谷浩子 撮影/下林彩子 ヘアメイク/国府田雅子(barrel) スタイリスト/中川原有(CaNN)

 

八嶋智人(やしま・のりと)さん

1970年、奈良県生まれ。90年に劇団カムカムミニキーナ結成に参加。以降、幅広いジャンルで活躍。来年はNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」にも出演予定。


「ミネオラ・ツインズ~六場、四つの夢、(最低)六つのウィッグからなるコメディ~」

2022年1月7日(金)~31日(月) スパイラルホール
演出:藤田俊太郎
出演:大原櫻子、八嶋智人、小泉今日子 他
2013年にアメリカ演劇界の殿堂入りを果たしたピュリツァー賞受賞作家、ポーラ・ヴォーゲルの戯曲。ニューヨーク郊外の小さな町・ミネオラで生まれ育った双子の物語。

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この記事は『毎日が発見』2021年12月号に掲載の情報です。

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